中小企業における公認会計士等の会計監査の必要性~堀正工業粉飾決算~

はじめに(当事務所のご紹介と今回のブログの概要)

当事務所は、非上場の法定監査・任意監査を専門に行う公認会計士事務所であり、上場会社の監査のご依頼は受けておりません。

当事務所の会計監査対応地域は東京を含む原則全国対応ですが、効率性の観点から、大阪府(主として大阪市を含む北部大阪)、神戸市を含む主として兵庫県南部(西宮市・伊丹市・尼崎市など)、京都市を含む京都市周辺地域のご依頼を優先しています。

他方で、当事務所のブログは上場会社の最新の公認会計士等の異動など、監査・会計・税務に関する環境変化については積極的に情報を発信する方針であり、今回は、中小企業の公認会計士による会計監査の必要性についてご紹介します。「堀正工業の粉飾決算」を例にして一定規模の中小企業では案外身近で粉飾決算が起こっているのが実情なのです。

多くの中小零細企業では、税理士による節税案件が多く、税務調査での否認と節税のバランスに気を配っていることでしょう。

しかし、銀行の借入が多い会社や大手の上場会社が得意先の場合で決算書を外部に開示する会社などにおいては、粉飾決算を行う動機が強くなります。粉飾決算の場合は、税務調査では指摘されません(税金を多く払うため)。このような会社では公認会計士等の会計監査の必要性が重要課題となります。

会社法監査やその他法定監査・任意監査のご依頼はまだ受け付けておりますので、問い合わせフォームよりご予約下さい。

決算期(特に3月決算)によっては人的資源に限りがあるためお断りする場合があることをご了承ください。

横田公認会計士事務所

堀正工業による粉飾決算の事例

堀正工業はベアリング製造・販売会社の大手「NTN」の代理店として、長らく堅調な売上げを維持し続けてきたが、2023年7月24日に東京地裁から破産手続開始決定を受けた倒産劇は、過去に例を見ないほどの粉飾にまみれていた。

会社は実質的に債務超過であるにもかかわらず、当期利益が出るように、売上高の金額を水増しし、粉飾した決算書を税務署に提出するとともに、各取引金融機関に対しては、税務署に提出した決算書を更に取引金融機関ごとに数字に修正を加えたものを提出していた。

例えば、2022年9月期の決算では表向き、売上高68億600万円、当期純利益4億7700万円と公表。しかし、本当のところは45億1600万円の売上高に過ぎず、しかも、3億4200万円の赤字だった。

一方、借入金は本来347億円に及んでいたにもかかわらず、税務署に提出した決算書には247億円という数字が書き込まれた。なおかつ、取引金融機関には借入金の額をわずか45億円台に装い、300億円も誤魔化していた。こうした手口で、50以上もの金融機関を騙していた。

300憶円の資金はどこへ?粉飾決算の実態と融資金の使い途の詳報については「週刊新潮」2024年2月8日号「MONEY」欄の有料版参照。

中小企業での公認会計士等の会計監査の必要性

堀正工業は資本金2,000万円であり、公認会計士等の法定監査の対象ではありません。

株式会社で一般的に会社法監査が義務付けされる対象は、資本金5億円以上または負債総額200億円以上となっています。資本金5億円以上や負債総額200億円以上は、ハードルが高すぎるのではないでしょうか。

上記でなくても、株式会社は、定款で会計監査人を設置することができます(会社法326条2項)。

労働組合の場合は、規模に関係なく公認会計士の会計監査が義務付けられています。

会社法監査の対象ではなくても、多数の銀行から借入を受けている会社などは、積極的に会計監査人を設置しましょう。

会社法の下では、会計監査人不設置会社の場合、監査役または監査役会が監査報告で表明すべき意見は、会計監査人が会計監査報告で表明すべき意見と同じ事となります。

すなわち、監査役等は、その任務を怠ったとき、会社に対して、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(会社法423条1項)。この責任のことを、一般に、監査役の任務懈怠責任と呼びます。

上記の堀場工業のような粉飾決算があった場合は、取締役と同様に損害賠償責任を負うことになります。帳簿に記載していない借入金は約300億円です。この金額が損害賠償の目安となるでしょう。

会社法監査の最新の相場は以下のブログを参照ください。

横田公認会計士事務所

中小企業が会計監査人を設置した場合

会計監査人設置会社については、監査役は、会計監査人の監査の方法及び結果が相当でないと疑われる事情がある場合を除いては、会計監査人の監査結果を前提として自らの職務を遂行することができる。

すなわち、公認会計士のように会計や監査に関する知識がなくても、会計監査人の監査結果に依拠して、業務監査(取締役の職務の遂行違反がないかどうかの監査)のみ行えば、粉飾決算を予防して、職務の遂行を行うことが可能となるのです。

まとめ

<粉飾の経緯および手口>

堀正工業は、2003年、破産当時の代表者が社長へ就任した。破産申立書などによると、同氏は「融資を受けるためには利益が出ていることが必須」と考え、金融機関から融資を受けるために粉飾決算に手を染めたという。

粉飾決算の作成の手順は、まず正しい数字で決算報告書を作る。正しい決算では、損益計算書は赤字で貸借対照表は債務超過だ。このため、利益を計上できるように売上高を嵩上げする。これに連動して仕入額も調整し、借入金などの負債や貸付金なども改竄、辻褄を合わせた申告書を税務署に提出した。

 さらに取引金融機関に提出するため、各行ごとに借入額の異なる決算書を作成するなど、気の遠くなる作業を続けた。

堀正工業が公認会計士等の会計監査を受けていればどうなったでしょうか。金融機関は融資を行う場合は、その返済を受けるために預金口座を会社に開設してもらいます。我々の会計監査では、預金口座を開設している金融機関に「残高確認書」を直接発送し、回収します。結果、決算日に金融機関ごとの借入金の総額を把握します。ここで、粉飾決算で改竄された借入金などを簡単に把握します。その上で、もちろん正しい借入金等にすべて訂正してもらうまで監査報告書を提出しません(または不適正意見の監査報告書を提出)。

結果、堀正工業のような単純な粉飾は直ぐに発覚することになります。

監査役や社外役員である貴方の会社は、いかがでしょうか!銀行融資を受けるために、粉飾決算をして利益を出しているかもしれません。

現在、コロナ支援策がなくなりました。今後自力での事業継続が困難となり「粉飾決算が表面化」するかもしれません。

「粉飾決算による破産等とその後の損害賠償責任」について不安を抱えることなく、安心して会社役員等として働けるように「公認会計士等の会計監査」の依頼を考えてみてはいかがでしょうか。粉飾の結果による損害賠償額と比較すると監査報酬などは安い保険のようなものです。

公認会計士と監査契約を締結するには、以下の方法があります。

・会計監査人設置会社となることを取締役会等で提案する。

・任意監査として、公認会計等と会社法に準じた監査契約を締結することを提案する。

以上

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公認会計士 3

横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く法定監査・任意監査に特化した監査事務所です。

上場会社を監査している監査法人等と比較し、費用面を抑えて実質的な監査を行うことを基本方針にしています。効率性の高い柔軟な会計監査を行うことが可能です。

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