深刻な会計士の人手不足、任意の期中レビューを断られる企業も
目次
はじめに(当事務所のご紹介と今回のブログの概要)
当事務所は、非上場の法定監査・任意監査を専門に行う公認会計士事務所であり、上場会社の監査のご依頼は受けておりません。
当事務所の会計監査対応地域は東京を含む原則全国対応ですが、効率性の観点から、大阪府(主として大阪市を含む北部大阪)、神戸市を含む主として兵庫県南部、京都市を含む京都市周辺地域のご依頼を優先しています。
他方で、当事務所のブログは上場会社の最新の公認会計士等の異動など、監査・税務に関する環境変化については積極的に情報を発信する方針であり、今回は、2024年4月から、四半期報告書が廃止され、新たに第1・第3四半期決算短信へのレビュー制度が始まり、その動向についてご紹介します。
会社法監査やその他法定監査・任意監査のご依頼はまだ受け付けておりますので、問い合わせフォームよりお申し込みください。
決算期(特に3月決算)によっては人的資源に限りがあるためお断りする場合があることをご了承ください。
横田公認会計士事務所
四半期報告書制度が廃止
四半期報告書制度が廃止された今後も、上場会社は取引所規則に基づき四半期決算短信に添付する四半期財務諸表等を作成することになります。
第1・第3四半期決算短信に添付する四半期財務諸表等については、一定の場合を除き、期中レビューを受けるかどうかは任意とされています。
新制度の下での第1・第3四半期の企業の対応については、大きく以下の3つに分かれるようです。
1.任意の期中レビューを受ける
2.任意の期中レビューを受けず、年度監査の一環として四半期財務諸表等の企業の作成プロセス等を検証してもらう
3.監査人の関与なし
第1・第3四半期決算短信に関して任意の期中レビューを受ける
公認会計士等の期中レビューを受ける場合は、レビュー報告書の添付が必要となります。任意レビューを受けることを選択した企業は、年間を通して高い品質を維持するために監査人によるレビューは必要と判断したということでしょう。
決算短信に添付する四半期財務諸表等は、東証が定める「四半期財務諸表等の作成基準」第4条第1項及び第2項に準拠して作成されます(準拠性の枠組み)。
キャッシュ・フロー(CF)計算書を省略し、CFに関する注記とすることも認められていますが、会社によっては従前からの自社の方針は変えず、CF計算書を開示するディスクロージャーの意識が高い会社もあるようです。
また、開示タイミングについては、2段階ではなく、短信とレビュー報告書は同時に開示する会社もあるようです。
この点、四半期決算短信の公表が例年よりも遅れないよう、全体のスケジュールを従来よりも1週間程度前倒しして進めることになります。
なお、監査人のリソース(特に人手不足)の問題もあり、企業が希望しても任意レビューを受けられないケースが頻発するようです。
横田公認会計士事務所
任意の期中レビューを受けず、年度監査の一環として作成プロセス等の検証を受ける
この選択をする上場企業が一番多いとみられています。
作成プロセス等の検証だけをしてもらう場合は、監査人は期中レビュー手続を行うことができません。
四半期財務諸表等の作成プロセス等を検証する手続きといった年度監査の一環として実施される監査手続(リスク評価手続きとリスク対応手続)を行うことになります。
監査人の関与なし
この選択をする企業は、監査コストを抑えたい場合などに限定されるでしょう。
近年、監査リソース(人手不足)により、大手監査法人のみならず、中小監査法人においても監査報酬の値上げが毎年続いている状況です。
一方、全体としての企業の経理能力は、これまた人手不足により、ベテランの経理マンが退職や辞職をしてしまうと、新たに優秀な人材が採用できず、経理の人材もまた不足するケースが目立っています。
上記のような会社では、監査人が監査する財務諸表等の信頼性自体が低下し、監査工数も増加するため、必然として監査報酬の値上げが実施されることになります。
このような会社は、第1・第3四半期について監査人の関与をなくし、監査日数を抑えて、監査コストを抑える選択をするでしょう。
ただし、第2四半期報告書(新半期報告書)においては監査人による改正前と同様のレビュー報告書の添付が必要であり、第1・第3四半期に監査人の関与がない企業は、かなりの監査日数とコストが発生することでしょう。
結果、監査人の関与なしを選択する企業は、経理能力が高い一部の優良企業を除き、監査コストは全体として抑えることはできないと言えるでしょう。
おわりに、レビューの義務付け要件の確認
東証の有価証券上場規程施行規則第405条第2項の要件に該当する場合は、結果として、第1・第3四半期決算短信の四半期財務諸表等に対してもレビューが義務付けされます。
【レビュー義務付けの要件】
a直近の有報、半期報告書または四半期決算短信(レビューを受ける場合)において、無限定適正意見(無限定の結論)以外の監査意見(レビューの結論)が付される場合
b直近の内部統制監査報告書において、無限定適正意見以外の監査意見が付される場合
c直近の内部統制報告書において、内部統制に開示する重要な不備がある場合
d直近の有価証券報告書または半期報告書が当初の提出期限内に提出されない場合
e当期の半期報告書の訂正を行う場合であって、訂正後の財務諸表に対してレビュー報告書が添付される場合
上記のように、会社の内部統制に不備があり、同時に会社の経理能力が低い会社(提出期限内に半報等を提出できないなど)の場合、結果として、改正前と同様に、第1・第3四半期決算短信においてもレビューを受けなければなりません。
結論として、今回の改正は、企業の内部体制の構築に金銭を費やして外部のレビューを頻繁に受ける必要がないような企業は、監査コストが抑えられ、一方、企業の内部体制の構築(経理部の人材の高度化や内部統制の構築)にも金銭を費やせないような、極端に言ってしまうと、上場すべきではないような会社は、結果、監査コストが増加することになります。
内部に多額の経費等を費やす(企業内部の体制強化)か、外部に多額の報酬を支払う(監査コスト)かの違いであり、上場会社としてのコストは全体としては改正前も改正後も変化はないと言えるのではないでしょうか。
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