2024年4月から適用 財務報告に係る内部統制基準・実施基準の改訂案の背景

稟議書

はじめに

2022年12月15日付けで企業会計審議会内部統制部会から「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(公開草案)」(以下「改訂案」という。) が公表されましたが、経緯については以下の通りです。

1.内部統制報告制度の現状

内部統制報告制度(※)については、適用されて以来、14年余りが経過したが、財務報告の信頼性の向上に一定の効果があったと考えられる一方で、次の状況にあるとされています。

(※)金融商品取引法に基づく、上場会社を対象とした財務報告に係る内部統制の 経営者による評価と公認会計士等による監査をいう。

・経営者による内部統制の評価範囲の外で開示すべき重要な不備が明らかになる事例や内部統制の有効性の評価が訂正される際に十分な理由の開示がない事例が一定程度見受けられ、経営者が内部統制の評価範囲の検討に当たって財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性を適切に考慮していないのではないか等の内部統制報告制度の実効 性に関する懸念が指摘されています。

・国際的な内部統制の基本的枠組みについて、米国のCOSO(トレッド ウェイ委員会支援組織委員会)の内部統制の基本的枠組みに関する報告書(以下「COSO報告書」という。)が、経済社会の構造変化やリスクの複雑化に伴う内部統制上の課題に対処するために主に次の下線部分の改訂がなされているが、我が国の内部統制報告制度ではこれらにつ いて改訂は行われていなかった。

・内部統制の目的の一つである「財務報告」の「報告」(非財務報告と内部報告を含む。)への拡張

・不正に関するリスクへの対応の強調

・内部統制とガバナンスや全組織的なリスク管理との関連性の明確化

2.改定案が出された経緯

本改訂案は、2021年11月の「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)論点整理」において、上記1.の状況を踏まえ、高品質な会計監査を実施するための環境整備の観点から、必要に応じて、 内部統制の実効性向上に向けた議論を進めることが必要であるとの方向性が示されたことを受けて、企業会計審議会内部統制部会において 審議・検討がなされた結果、取りまとめられたものです。

3.改定後の中長期的な課題

内部統制部会の審議において問題提起された次の下線の事項については、法改正を含む更なる検討が必要であることから、中長期的な課題とされています。

・サステナビリティ等の非財務情報の内部統制報告制度における取扱いについては、当該情報の開示等に係る国内外における議論を踏まえて検討すべきではないか。

・ダイレクト・レポーティング(直接報告業務)を採用すべきかについては、内部統制監査の在り方を踏まえ、検討すべきではないか。

・内部統制監査報告書の開示の充実に関し、例えば、内部統制に関する「監査上の主要な検討事項」を採用すべきかについては、内部統制報告書における開示の進展を踏まえ検討すべきではない か。

・訂正内部統制報告書について、現在監査を求めていないが、監査人による関与の在り方について検討すべきではないか。

・経営者の責任の明確化や経営者による内部統制無効化への対応等のため、課徴金を含めた罰則規定の見直しをすべきではないか。

会社法に内部統制の構築義務を規定する等、会社法と調整していくべきであり、将来的に会社法と金融商品取引法の内部統制を統合し、内部統制の四つの目的をカバーして総合判断できるようにすべきではないか。

・代表者による確認書において、内部統制に関する記載の充実を図ることを検討すべきではないか。

・定期的な開示から臨時的な開示に金融商品取引法が動いているのであれば、臨時報告書についても内部統制を意識すべきではないか。

おわりに

以上、財務報告に係る内部統制基準・実施基準の改定案が発せられた経緯について見てきました。改定案の公開草案の詳細は以下を参照ください。

「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(公開草案)」の公表について:金融庁 (fsa.go.jp)

上記改定案は、2024年4月1日以後開始する事業年度における財務報告に係る内部統制の評価及び監査から適用されます。

改定案を実務に適用するに当たって必要となる内部統制監査の実務の指針については、日本公認会計士協会において、関係者とも協議の上、適切な手続の下で、早急に作成されることが要請されています。

以上

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