サラリーマンが知っておきたい節税対策

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新型コロナウイルス感染拡大防止対策の一環として、多くの企業が国や自治体の要請に基づく営業自粛を余儀なくされています。その企業に勤めている社員の中には、収入源が休業手当(平均賃金の60%)のみとなり、月収が大幅に減少した人が少なくないでしょう。

また新型コロナウイルス感染終息の先行きがまだ不透明な現在、今年の夏と冬のボーナス支給も危ぶまれており、サラリーマンの大半が今年の年収低下は避けられないと見られています。

そのような年だからこそ、サラリーマンがこの際知っておきたいのが、「サラリーマンができる節税対策」といえるでしょう。

節税対策は年末調整から確定申告への変更が必要

給与所得者であるサラリーマンの場合、毎月の給与から社会保険料と税金(所得税+個人住民税)が天引きされ、その過不足を調整する会社の年末調整で、その年の納税手続きが完了します。したがって、確定申告をするサラリーマンは少ないのが実情です。

ところが、会社任せの年末調整による納税手続きではなく、自ら納税手続きをする確定申告に変更することで、年末調整より節税の可能性が高まる可能性があります。

確定申告とは、その年1年間の所得を自分で計算して納税額を確定し、それを自分で税務署に申告する納税手続きです。

具体的には、毎年1月1日から12月31日を計算期間とし、翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告書を税務署に提出し、納税します。

確定申告書の提出方法は①税務署に郵送、②確定申告書を税務署へ持参、③e-Tax(国税電子申告・納税システム)によるオンライン提出、の3通りがあり、任意の提出方法を選べます。

確定申告をしなければならない給与所得者は、次のいずれかの要件に該当する人です。

・給与の年間収入額が2000万円を超える人

・1カ所から給与支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得(副業・資産運用等)合計額が20万円を超える人

・2カ所以上から給与支払を受けている人で、主たる給与以外の給与収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得(副業・資産運用等)合計額が20万円を超える人

・同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人

・災害減免法により源泉徴収の猶予を受けている人

・源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人

給与の年間収入額が2000万円を超えるサラリーマンは少数ですが、副業や資産運用で年間20万円以上の収入を得ているサラリーマンは珍しくありません。

このようなサラリーマンは、確定申告書作成の煩雑さを厭わず納税手続きを確定申告へ変更するのが賢明といえます。

サラリーマンが取り組みやすい節税対策

節税対策には様々な方法がありますが、忙しいサラリーマンが自力で比較的容易に取り組める節税対策として、次の方法が挙げられます。

  1. とNISA

「iDeCo(イデコ)」とは「個人型確定拠出年金」のことです。

国の年金だけでは不足する定年退職後の生活資金を賄うために積み立てる私的年金制度です。iDeCoに加入して積み立てる毎月の掛金は、その全額が所得控除の対象となります。その分所得税額と個人住民税額を減らせます。

また、「NISA」とは「少額投資非課税制度」のことです。

NISA口座(1人1口座のみ開設可能)から年間120万円以内で購入した金融商品(株式や投資信託)の配当金・売却益が最長5年間非課税になります。

  1. 医療費控除

医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までの間に、サラリーマン自身及びその家族のために支払った医療費が所定額を超えた場合、所得控除が受けられる制度です。

医療費控除額は、次の式で算出した金額(最高200万円)になります。

「実際に支払った医療費の合計額-健康保険や生命保険で補填される金額-10万円」

  1. 配偶者控除と扶養控除

配偶者控除は、納税者に所得税法上の配偶者がいる場合、所得控除を受けられる制度です。

サラリーマンの場合、次の3要件を満たす必要があります。

・民法の規定による配偶者であること(内縁関係は不可)

・納税者と生計を一にしていること

・控除対象配偶者の年間所得額が48万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)

なお、サラリーマン自身の合計所得金額が1000万円を超える場合は、配偶者控除の適用除外となります。

また扶養控除は、納税者に所得税法上の扶養者がいる場合、所得控除を受けられる制度です。

サラリーマンの場合、次の3要件を満たす必要があります。

・配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)または都道府県知事から養育を委託された児童及び市区町村長から養護を委託された70歳以上の高齢者であること

・納税者と生計を一にしていること

・控除対象扶養者の年間所得額が48万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)……ただし一般扶養親族の場合

  1. 生命保険料控除と地震保険料控除

生命保険や介護・医療保険に加入している場合、支払保険料の一定額が所得控除の適用対象になります、

また地震保険に加入している場合も、支払保険料の一定額が所得控除の適用対象になります。

なお、平成2006年の税制改正で2007年分から損害保険料控除が廃止されました。その経過措置として、一定の長期損害保険契約等に係る損害保険料については、地震保険料控除の適用対象となっています。

  1. 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)

サラリーマンが住宅ローンを利用して居住用住宅を新築、購入、増改築などをしたときは、所得控除の適用対象になります。

そのためには、下記の要件をすべて満たす必要があります。

・新築または取得日から6カ月以内に居住し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること

・所得控除を受ける年分の合計所得額が3000万円以下であること

・所得控除適用対象の住宅の床面積が50㎡以上であり、床面積の2分の1以上が納税者の専有部分であること

・住宅ローン返済期間が10年以上であること

・居住した年とその前後2年ずつの5年間に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税特例を受けていないこと

  1. 自然災害・盗難被害に遭ったとき

自然災害、火災、盗難などの被害を受けた場合は「雑損控除」の適用対象になります。

その範囲は居住用住宅と家財、衣服など通常の生活に不可欠な財産と、被災住宅の取り壊し費用です。したがって、別荘や骨董品・貴金属は適用対象になりません。

また、自然災害・火災で居住用住宅・家財が時価の2分の1以上の損失を被った場合は「災害減免法による税金の軽減・免除」の適用対象になります。

ただし、雑損控除と災害減免法の両適用は受けられないので、どちらの適用申請をするかは自身で判断する必要があります。

  1. 寄附金控除

ふるさと納税を始めとする地方公共団体への寄付、独立行政法人、公益社団法人・公益財団法人、認定NPO法人、日本赤十字社、日本私立学校振興・共済事業団などへの寄付に対しては、所得税法上「寄附金控除」と呼ばれる所得控除を受けられます。

  1. その他ː資産運用の損失

株式取引、不動産投資など資産運用で損失を被ったときも「損益通算」(その年の給与所得額と損失額の相殺)により、所得税額を減らせる場合があります。

おわりに

サラリーマンは、所得控除の対象を的確に把握することで節税対策が可能になります。しかしiDeCoやNISAなどのように節税のメリットがある反面デメリットがあるものもあります。したがって、節税目的でいたずらに所得控除対象を増やすと、支出ばかりが増えて逆に手取り収入を細らせる結果になりかねません。節税対策も注意が必要です。