短期消滅時効の廃止で貸倒損失の形式基準(1年基準)はどうなる?
4月1日から改正民法(債権法)が施行されました。
債権の消滅時効が1年、2年や3年等から5年に統一されたため、税務上の貸倒損失の形式基準の取引停止期間(1年以上)も伸びるのではないかと考えらましたが、見直しは行われていません。
消滅時効が5年に統一
これまでは、職業別の短期消滅時効は
① 飲食料等の代金・・・1年
② 卸売商人等の売掛代金・・・2年
③ 医師等の診療報酬・・・3年
以上が定められていましたが、今回の改正でこれらの短期消滅時効は廃止されました。
つまり、改正後は「権利を行使できるときから10年」または「権利を行使できることを知ったときから5年」いずれか早い時期を経過すると債権の消滅時効が完成することになりました。
税務上、貸倒損失の計上が容認されるケースの~形式的な貸倒れ~として、商品の販売や役務の提供等で生じた売掛金や未収金等は、債務者と取引を停止してから1年以上経過した場合に貸倒損失を計上できるという基準が設けられています(法基通9-6-3)。
民法上の飲食料代金等の短期消滅時効が廃止されたことで、税務上の形式基準における取引停止期間への影響も考えられましたが、税務上は民法上の時効制度と直接関連があるわけではないと解釈されます。
短期消滅時効が廃止され民法上の消滅時効の完成・援用の時期が遅くなり、時効期間が長くなったからといって必ずしも債権の回収可能性が高くなるわけではないと考えられますので、税務上の形式基準における取引停止期間が変更されないことは妥当と考えられます。
貸倒損失計上後の回収はどう処理するか?
消滅時効が実質5年に統一されたことによって、取引停止から1年以上経過し、税務上はその売掛金に係る貸倒損失を計上した後も、法律上、その債権はまだ4年近く存続していることとなります。
なかには、貸倒損失計上後に、取引先の業績好転により売掛金を回収できることも考えられます。
この場合は、回収した売掛代金等は雑収入として計上することになります。