会計監査人の異動2025年6月は16社!退任監査人はすべて中小監査事務所

目次
はじめに(当事務所のご紹介と今回のブログの概要)
はじめに(当事務所のご紹介と今回のブログ)
当事務所は、非上場の法定監査・任意監査を専門に行う公認会計士事務所であり、上場会社の監査のご依頼は受けておりません。
当事務所の会計監査対応地域は東京を含む原則全国対応ですが、効率性の観点から、大阪府(主として大阪市を含む北部大阪)、神戸市を含む主として兵庫県南部、京都市を含む京都市周辺地域のご依頼を優先しています。
他方で、当事務所のブログは上場会社の最新の公認会計士等の異動など、監査・税務に関する環境変化については積極的に情報を発信する方針であり、今回は、2025年6月の1か月の退任監査人が16社(前年同月9社)すべてが中小監査法人となり、大手・準大手から中小監査法人へ異動するケースが珍しく1社もなかった事に関連してご紹介します。
会社法監査やその他法定監査・任意監査のご依頼はまだ受け付けておりますので、問い合わせフォームよりお申し込みください。
決算期(特に3月決算)によってはここ数年の公認会計士不足の影響を当事務所も受けており、人的資源に限りがあるためお断りする場合があることをご了承ください。

横田公認会計士事務所ニュース
監査人の規模別異動状況

上記の通り、退任監査人はすべて中小監査事務所であり、就任監査人も未定の2社を除きすべて中小監査事務所という珍しい状況でした。
これまでの傾向は、大手監査法人の監査報酬値上げにより、より安価な監査報酬を提供する中小監査事務所へ異動するトレンドがメインでしたが、今年の6月に限り、大手監査法人からの異動がありませんでした。これは個人的には3月決算のIRのピークが5月で終わり、6月は監査報酬以外の理由による会計監査人の異動があったためでしょう。
横田公認会計士事務所ブログ

監査人の異動理由

ここ数年、毎月半数近くを占めていた「監査報酬の値上げ」を理由にした異動はありませんでした。契約辞退は主には、監査事務所の人員不足を理由に監査契約継続を辞退するケースです。
その他2番目に多いのは、監査法人の合併に伴う異動ですが、これは監査法人ハイビスカスの東京事務所がUHY東京監査法人と合併し、UHY東京監査法人が監査法人ハイビスカスのクライアントを引き継いだことによるものであり、実質的な会計監査人の異動ではないことによるものです。
横田公認会計士事務所ブログ(会社法の監査実施状況調査について)

会計監査人の契約辞退の具体的事例
<事例①>
株式会社くすりの窓口/東証グロース(5592)
IR公表日 :2025/06/02
異動年月日:2025/06/24
退任監査人: 史彩監査法人
就任監査人: 監査法人アヴァンティア
異動理由:[任期満了]
当社の会計監査人である史彩監査法⼈は、2025年6⽉24⽇開催予定の第21期定時株主総会終結の時をもって任期満了となります。同法人については会計監査が適切かつ妥当に行われるための監査品質を十分に備えていると考えておりますが、同監査法人より、 監査業界を取り巻く環境が変化する中、監査品質を確保するための人員確保が困難であるとして、任期満了をもって監査契約の継続を辞退したい旨の申し出がありました。
<事例②>
株式会社enish/東証スタンダード(3667)
IR公表日 :2025/06/11
異動年月日:2025/06/11
退任監査人: ゼロス有限責任監査法人
就任監査人: 監査法人アリア
異動理由:[一時会計監査人]
ゼロス有限責任監査法人より、当年度の監査品質を維持するための人員確保が困難として、契約更新を辞退したいとの申し入れを受けておりました。
<事例③>
株式会社海帆/東証グロース(3133)
IR公表日 :2025/06/16
異動年月日:2025/06/25
退任監査人: フロンティア監査法人
就任監査人: 監査法人アリア
異動理由:[任期満了]
当社の会計監査人であるフロンティア監査法人は、2025年6月25日に開催予定の第22期定時株主総会終結の時をもって任期満了となります。同会計監査人については、会計監査が適切かつ妥当に行われることを確保する体制を十分に備えておりますが、当社グループにおいて新たに海外法人が連結対象に加わることに伴い、監査範囲および対応業務が拡大することになりました。これに対し、同法人より、人的資源の制約等を背景として、次期の監査を辞退したい旨の申し出がありました。
以上のように、いずれも「人員確保が困難」との理由で、監査法人が監査契約継続の辞退を申し出ている状況です。

監査報酬の値上げでも対応できない人員確保の困難
まず、近年の会計監査人の異動は大手監査法人が人員不足となり、所属公認会計士等への給料の値上げ等により、監査報酬の値上げを行い、この値上げに対応できない上場会社はより安価な監査報酬を提供する一部の準大手監査法人及び大半は中小監査法人へ会計監査人の異動を行いました。
そのトレンドは今年の上半期を見る限りまだ続いていますが、この6月の会計監査人の異動を見ると、中小監査事務所の中でも人員確保が困難となっており、また大手監査法人のように公認会計士試験合格者を新規に雇用できないまたは雇用しても一人前に育てる余裕がない中小監査法人の多くは、会計監査人を辞退せざるを得ない状況となっています。
一部の中小監査事務所は非常勤公認会計士(大手監査法人を途中退社して独立したバイト会計士)に頼って、業務を拡大している事務所もあるようです。

おわりに(今後の会計監査人の異動状況)
まず、まだ大手監査法人から中小監査事務所を中心とした会計監査人の異動は続いています。
これは、業界全体が人員不足の状況にあるからです。
上記で述べた一部のバイト会計士に頼って業務を拡大している中小監査法人もいるようですが、長続きはしないでしょう。バイト会計士に頼って会計監査を行うと、日本公認会計士協会のレビューや金融庁の検査に対応できる監査調書の作成が出来なくなるのです。なぜなら、バイト会計士のため、現場での作業はバイト時間内で行えますが、それ以外の監査の品質管理対応については、どうしても常勤の会計士でなければ十分な対応が行えないからです。
監査の品質管理対応に不備があると、金融庁の検査において、結局は「行政処分等」により、品質管理のレベルを上げるか、一定期間監査契約の新規受嘱が出来なくなります。
結果、世間の評判も下がり、上場会社のクライアントが他の会計監査人へ異動してしまうのです。
結局、今後も大手から中小へ、中小から中小への異動のトレンドは継続して増加するでしょう。
中小から中小への異動のトレンドは、中小監査事務所のなかでも2極化しているためです。
①金融庁の行政処分等の結果、品質管理に重点を置き無理に新規の監査受嘱を行わない中小監査事務所
②一方、金融庁の検査の結果、金融庁にもわからない品質管理の不備を指摘されずまたは金融庁の検査をまだ受けておらず、積極的に新規の監査を受嘱する中小監査事務所
①から②への会計監査人の異動が中小から中小への異動の最も多いパターンと言えるでしょう!
最後に、金融庁から近年行政処分等を受けた監査法人を挙げておきます。
(2022年以降の行政処分等)。
・2025年1月・・・アスカ監査法人
・2024年11月・・・爽監査法人
・2023年12月・・・太陽監査法人
・2023年6月・・・赤坂監査法人
・2023年3月・・・ひびき監査法人
・2023年1月・・・監査法人ハイビスカス
・2022年6月・・・UHY東京監査法人
・2022年5月・・・仁智監査法人


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