監査事務所の規模別の監査報酬についての分析

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はじめに

前回のブログを受けて今回は前回結論付けた、会社等の規模別に監査報酬を効率的にするため(節約するため)にどのような監査事務所を選ぶべきかの根拠を紐解いていくいきます。

監査報酬は、監査事務所の規模別に当然高低があり一定水準以上の適正な監査を行うことを前提にそれぞれ監査事務所の規模別に監査報酬の中身を分析します。

以下、①大手監査法人、②準大手監査法人、③中堅監査法人、④中小監査事務所の分類は前回のブログをご参照ください。

 会計監査:自社に適した公認会計士または監査法人を選ぶコツ

私が上記①~④までの監査事務所の監査報酬の分析ができる知識があるかどうかについては、それぞれすべての監査事務所に所属して監査した経験があるからです。そこで所属していてそれぞれの監査責任者を見てきた経験からの私なりの分析です。ですから、多少私なりの解釈もあり、それぞれの監査事務所にとっては「うちの監査事務所はそうではない」と思われることもあるかと思いますが、大きな方向性で見れば相違は小さいと確信していますので、その点はご了承の上お読みください。あくまで私個人の見解です。

【監査報酬の構成要素】

みなさんもちろんおわかりだと思いますが、監査報酬の高い順に

Ⅰ①大手監査法人>②準大手監査法人>③中堅監査法人>④中小監査事務所

となります。監査報酬は

監査報酬=単価(A)×日数または時間数(B)

で構成されています。

Aの単価、Bの日数とも、単価は高く、日数が多いのは上記Iの順番どおりです。

まず、以下『単価』について内容を見ていきましょう。

ここでは話を簡単にするために単価は1日当たりの単価とします。

協会(JICPA)の監査実施状況調査においては、監査時間は日数ではなく時関数で記載されていますが、協会(JICPA)に提出する監査実施報告書が監査時間にて報告する形式のため監査時関数にて公表されています。ただし、監査報酬を見積る場合多くは日程と補助者の日数を集計し、日数の合計から監査報酬を見積るためほとんどの監査事務所は、監査報酬=事務所単価×監査日数 にて報酬を計算しています。

私の知る範囲では、概ね各監査事務所は以下の通りの単価で監査報酬を計算していると考えます。

①12~15万円以上、②10~14万円、③10~12万円④は10万円前後

単価が以上のように監査事務所により異なる理由は簡単に言うと共通費が多いか少ないかによると考えられます。直接費である監査を行う会計士等の日当(給料)は各監査事務所でそれほど多くの違いはありません。

共通費とは、事務所共通の職員の給料、監査事務所の家賃、海外提携先がある場合の提携料、新人の教育費、それに協会(JICPA)のレビュー及び金融庁の検査に対応するための社員や職員の報酬や給料です。レビューや検査が多い事務所ほど対応人員や日数が増加しその分の給料等を監査報酬で補うこととなります。①の大手は上記すべてで一番共通費が多くなりますが、特に海外提携先も大手会計事務所のため提携料が高いのが特徴です。②の準大手も海外事務所と提携していますが①ほど海外の大手会計事務所ではなく提携もゆるい提携のため①よりは提携料が安いと考えられます。③も海外事務所と提携している事務所は提携料を支払いますが②よりさらにゆるい提携で提携料の高い順に①>②>③となります。④については提携料が無い事務所がほとんどでしょう。

次に単価に大きく影響を及ぼす要因は、協会(JICPA)レビューと金融庁の検査です。

レビューと検査は上場会社を監査している事務所は必ず行われるという制度となっています。したがって④の監査事務所にはレビューや検査は行われません。また、上場会社を監査している事務所にレビュー等が行われるわけですが、上場会社の監査について監査調書等のレビューが行われるのはもちろん、その他非上場の会社の監査の監査調書等についてもレビュー対象がランダムに選ばれます。これは、レビュー等対象監査事務所が、上場会社と非上場会社で異なる品質の監査を行うことを阻止するためです。このレビューや検査は監査事務所の監査上場会社の数によりその頻度が大きく違ってきます。先ほども簡単に述べましたが、頻度が多いほどそれに対応する人員や日数が多くなり、その対応分の給料等が共通費として大きくなります。①大手は毎年、②準大手は3年に1回(太陽のみ毎年)、③中堅監査法人ではレビューは3年に1回、検査は数年に1回となっています。このレビューや検査は2週間から1か月以上かかります。私が個人事務所として上場会社を監査していた時にレビューは2名が来所し1週間で済みました。1社のみでそうですから数十社、数百社の上場会社を監査している事務所はその中から数社または数十社をレビュー等の対象とされますので、1か月以上かかりそれに対応する人員を準備しなければなりません。その間、対応する人員は監査できないわけですからそのものに対する給料や報酬は共通費としてその監査事務所の監査報酬の単価に上乗せされることになります。

監査報酬のもう一つの構成要素『日数』について以下にて中身を見ていきましょう。

日数も大手>準大手>中堅>中小(個人含む)となるのは

まず1点目、単価でも述べましたが、大手や準大手、中堅監査法人の場合いずれも上場会社監査登録事務所に登録しており、協会(JICPA)レビューや金融庁の検査の対象となります。それに応じてレビューや検査に対してレビュー等するものが見てわかる監査証拠としての調書を作成する必要があります。この見てわかる調書を作成する時間が監査時間のかなりの程度を占めることが原因にあります。監査現場をよく知っている方は、一昔前と比べて監査中の会計士が黙々とPCと向き合っている時間が増えたと思われるのではないでしょうか。逆に言うと、非上場のみの監査法人や個人の公認会計士事務所の場合は、監査責任者が監査証拠としての心証を得られれば、レビュー等がないので、監査責任者が見てわかる調書を作ればよいのです。メモ書き程度で自分が後になってわかるのなら自由に調書を作成すれば良いということです。この違いは監査チーム全体を含めればかなりの監査時間の節約になります。また、レビュー等の結果、指摘事項が監査事務所に文書で提出されます。その指摘事項に対して今後どのように改善するかの報告書を提出します。この改善事項が多いほど、次回のレビューまでに監査調書の改善点を反映させます。これが毎回繰り返され、現場等で作成する監査調書はどんどん分量が増えていきます。

2点目は、特に大手と準大手に多いのですが、監査に不慣れな新人が多いということです。監査法人では毎年かなりの職員が退職します。元々、独立志向をもって公認会計士試験に合格した人が多いことやより良い条件やキャリアを求めて、他のコンサルティング会社などへ転職、またある一定年齢に達すると(40代)社員(会社で言う役員)になる人が限られてきます。社員にならずに、定年まで同じ監査法人で務める人はそれほど多くありません。そこで、転職や独立をして退職する人が多いのです。そのような退職者の穴を埋めるのが毎年の合格者である新人の試験合格者なのです。監査チームに新人が多いということは効率性が低下するのは当然です。また新人の作成した調書は、先輩のレビューを受けます。レビューの結果、足らずの調書の場合手続きの追加が頻繁に行われます。みなさんの会社等で新人が入れ代わりやってきて新人のOJTの場として使われていると感じることはないでしょうか。もし感じるならその会社はリスクが小さく新人のOJTの絶好の場として監査事務所が考えているということです。以上の理由から新人採用の多い順番に監査時間が多くなります。逆に言うと、個人の公認会計士事務所の場合が典型ですが、大手出身の独立したベテランの会計士でチームを組みます。ベテランなので、監査の効率も良く、ガチガチの見せる調書を作成する必要もないので、監査責任者の疑問に応えられ、監査証拠を入手したと実感できれば監査を短時間で行うことが可能となります。

以上の理由から、監査報酬の高い順番は上記のⅠの通りとなり、単価(A)も安く、時間(B)も少ない、中小監査事務所、すなわち非上場会社のみ監査している監査法人および個人の公認会計士事務所がもっとも監査報酬が安くなるということになります。

おわりに

緊急事態宣言が栃木県を除き1か月延長されることが決まりました。ここ1,2週間は感染者も減少傾向にありますが、まだ医療の現場はひっ迫していることが原因のようです。

みなさんの組織の中にはあと一ヶ月以上緊急事態宣言が続けば、もう持たないと思われるところもあるのではないかと心配しています。普段から経費節減を行っている会社等も更なる経費節減の必要性を感じているのではないでしょうか。

監査報酬は会計処理上「支払手数料」「支払報酬」「雑費」など様々な科目で処理されていますが、会計的には経費の一種です。法定監査対象の会社等の経営者は正しい財務情報を開示し、説明する責任を負っています。また、公認会計士監査は、その内容を検証して、「適正」か「不適正」か判断した結果を報告することとなります。その監査報酬についても、同じ結果が得られるのであれば、経費節減を考えるのも経営者の重要な役割です。

コロナ禍、経費節減を考える際、監査報酬についてももう一度、自らの組織に最も適した効率的な監査事務所を選ぶことは重要な判断だと考えます。

横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く会計監査に特化した監査事務所です。

上場会社を監査している監査法人と比較し、費用面を抑えて実質的な監査を行うことを基本方針にしています。効率性の高い会計監査を目指しています。

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