貸倒損失を計上できるケースと損金経理の要件

はじめに(当事務所のご紹介と今回のブログの概要)

当事務所は、非上場の法定監査・任意監査を専門に行う公認会計士事務所であり、上場会社の監査のご依頼は受けておりません。

当事務所の会計監査対応地域は東京を含む原則全国対応ですが、効率性の観点から、大阪府(主として大阪市を含む北部大阪)、神戸市を含む主として兵庫県南部、京都市を含む京都市周辺地域のご依頼を優先しています。

他方で、当事務所のブログは上場会社の最新の公認会計士等の異動など、監査・税務に関する環境変化については積極的に情報を発信する方針であり、今回は、倒産する会社が増加傾向にあるようであり、改めて「貸倒損失を計上できるケースと損金経理要件」についてご紹介します。

倒産する会社が増加傾向にあるのは、物価高騰が続き、仕入れコストが上昇するなどの要因によるものです。また、取引先が倒産などして回収できない金銭債権を貸倒損失として損金経理する場合、貸倒れの要因によって損金経理の要否が異なります。

以下では、貸倒れの要因ごとに損金経理の要件を記載します。

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横田公認会計士事務所

法律上の貸倒れ(法基通9-6-1)

金銭債権の全部または一部の切捨てをした場合の貸倒れ(法基通9-6-1)

会社更生法や民事再生法の規定により更生(再生)計画の決定があった場合において、切り捨てられることとなった部分の金額

会社法の規定による特別清算に係る協定の認可の決定があった場合の切り捨てられる事となった部分の金額

・債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額

・その他関係者の協議決定で切り捨てられることとなった部分の金額

上記については、その事実が発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する

ただし、法律上の貸倒れについては、損金経理が要件とされていません。よって、申告調整による減算も認められています

なぜなら、法律的に債権が消滅した事実に基づいて損金の額に算入するので、損金経理を行ったかどうかは問われません

事実上の貸倒れ(法基通9-6-2)

事実上の貸倒れとは、法的に債権は消滅していないものの、取引先が倒産したなど、債務者の資産状況や支払い能力等からみて債権の全額が回収不能となった場合に適用できるもの。一部でも回収可能の見込みがある場合には適用できないためハードルは高くなります。これは、債権の評価損計上が禁止されていることから(法法33条1項)、それとの整合性の観点から部分貸倒れという考え方は採り得ないからです。

損金経理をする場合も、金銭債権の全額について損金経理しなければならない。

例えば取引先X社に対する金銭債権の全額である売掛金100万円について、すべてが回収不能となり事実上の貸倒れを適用する場合の仕訳例は、以下のとおり。

貸倒損失 100万円/売掛金 100万円

上記仕訳は売掛金100万円の全額が回収できないことが明らかになった場合に、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をする

上記の事業年度に損金経理をしないで、その翌事業年度以降において損金経理をした場合は、そのことを理由として否認対象になります。

横田公認会計士事務所

形式上の貸倒れ(法基通9-6-3)

形式上の貸倒れとは、取引先に回収不能な状況があるか否かにかかわらず、取引停止時・最後の弁済期・最後の弁済の時のいずれか最も遅い時から1年以上経過という形式を満たせば適用できます

損金経理をする場合は、事実上の貸倒れと異なり、取引先に対する売掛債権(貸付金その他これに準ずる債権を含まない)について、当該売掛債権の額から備忘価額(1円)を控除した残額を貸倒損失として処理しなければならない。

例えば、取引先Z社に対する売掛金100万円、取引停止時から1年以上経過しているとして形式上の貸倒れを適用する場合の仕訳例は、以下のとおり。

貸倒損失 99万9,999円/売掛金 99万9,999円

この「形式上の貸倒れ」は、「事実上の貸倒れ」の特例として位置づけられるため、この取扱いが定める事実が発生した日の属する事業年度において損金経理をしない場合は、その翌事業年度以降において損金経理しても損金算入は認められません

以上

CPA背景

横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く法定監査・任意監査に特化した監査事務所です。

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