売掛債権の形式上の貸倒れの場合の会計処理
はじめに
売掛債権の形式上の貸倒れとは、取引先の財務状況が悪化し債権の回収ができなくなった場合で、取引を停止し一定期間経過した場合のいわゆる不良債権について貸倒損失として費用(=損金)処理することです。
元々法人税法で認められる損金処理ですが、公認会計士による会計監査上も当該処理を行った場合正しい費用処理として認められる会計処理となっています。
形式上の貸倒れ
新型コロナウイルス感染症の影響による取引先の倒産や取引停止等で、売掛金等の回収ができるか不安な企業も多いことでしょう。
取引先が一定の状況に陥ったことで売掛金等が回収できなくなった場合に、税務上、貸倒損失を計上できる基準があります。
そのうちの1つが「形式上の貸倒れ」では、損金経理要件が設定されているほか、備忘価額を付すこととされています。付された備忘価額は、その後「事実上の貸倒れ」の状況となった時に消すことができます。
「形式上の貸倒れ」とは、貸付金等を除く売掛債権が対象で、継続的な取引を行っていた取引先の資産状況等の悪化で取引が合停止し、停止時から1年以上経過した状況のことを言います。
一方「事実上の貸倒れ」とは、取引先の破産、死亡などにより金銭債権の全額が回収できないと明らかになった状況のことで、全額を損金経理することで全額が貸倒損失として計上できます(法基通9-6-2)。
例えば、取引先K社に対する売掛金が200万円で微増価額を1円に設定した場合「形式上の貸倒れ」の状況になった時の仕訳は
貸倒損失 1,999,999円 / 売掛金 1,999,999円
で、その後「事実上の貸倒れ」になった時の仕訳は
貸倒損失 1円 / 売掛金 1円
となります。
おわりに
「形式上の貸倒れ」出備忘価額を残しておくのは、取引先の業績好転等で実際に回収できる可能性を考えて、売掛金等がまだ存在していることを示しておくためです。「事実上の貸倒れ」となるまでは、経理事務において取引先の売掛金台帳などで取引ごとの情報等を管理しておく必要がありますのでご注意ください。
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