2021年3月期末の企業決算・監査等への対応(金融庁などの動向)

サムネイル

はじめに

新型コロナウイルスのワクチンの開発ニュースがありました。米のモデルナ社がワクチンを開発し94.5%の有効性を確認したとのこと。

このニュースを受けてアメリカの株式市場ダウ平均は史上最高値を更新、日本の日経平均も一時26,000円を超えました。株式市場だけを見ればコロナ前の水準を上回っています。一方、現状の経済指標は上向きではありますが、コロナ前には届いていない状況です。株式市場は先を見越して動きますので今後の動向はどうなることでしょう。

ワクチンの開発が進んでも2021年3月期の決算や監査にはまだコロナの影響があると考えられます。金融庁・企業会計審議会が11月6日、「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会」の活動や「企業会計基準委員会(ASBJ)の活動」等についての報告を行っています。

日本公認会計士協会はリモート留意事項等公表へ

事務局は「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査への対応に係る連絡協議会」の活動の成果と、3月期決算会社の動向について報告を行いました。7月に公表した「骨子」に記載の通り、「感染拡大のピーク時を含め、クラスターの発生等の大きな混乱はなく、企業決算・監査業務等を進めることができたことを評価」し、「今後、基準日変更を検討する企業があれば、後押しすることや、企業決算・監査等に係るデジタル化の推進など、実務上の中長期的な課題への対応は、引き続き関係者と議論」することなどを報告しています。

日本公認会計士協会(JICPA)は、新型コロナの拡大を契機として監査現場がリモートでの環境を前提とした実務に変化していることから、今後の予定としてリモートワークでの環境下における決算・監査上の対応を検討しており、リモート棚卸立会における留意事項や、電子媒体または電子経路による残高確認に関する監査上の留意事項を随時公表していく予定を報告しています。

残高確認は電子での対応が可能かと思われますが、棚卸立会をリモートで行えるのかについては少々疑問です。

事務局は、連絡協議会については状況の変化があれば差異会を考えるとし、JICPAより報告のあった決算・監査に関するリモート環境のアップデートについて関係者と連絡を取り合いながら共有していきたいとしています。

2021年3月期決算を考える上では海外の12月決算(海外は12月決算が主流)の対応が参考になるとして、動向を注視したいとしています。

急場の対応を迫られた今年とは異なり、翌年についてはある程度先を見通した準備が可能である旨の見解もあります。

株主総会の分散化といった引き続きの課題についても質問が出たようですが、「会社法上の障害はない」ため、総会開催をずらす等の対応を検討する会社があれば、関係省庁や関係団体と状況を共有しながら、引き続き後押しをしていきたい考えが示されています。

追加情報開示が見積開示基準の布石になる

企業会計基準委員会(ASBJ)の活動については、委員長より報告がありました。ASBJは今年4月以降、連絡協議会における要請を踏まえて新型コロナの収束時期や見積りに用いた家庭の記載を追加情報として求める「議事概要」を公表しました。その結果、3月期の有価証券報告書においては7割程度の企業が開示していた旨が報告されました。

委員会の委員からは当該追加情報開示を求めたASBJの取り組みについて、2021年3月期から早期適用が可能となる「会計上の見積りの開示に関する会計基準」の布石として有効に機能したと評価する意見があったようです。

会計基準の開発については収益認識の検針日基準や、リース会計の検討状況などが報告されています。

おわりに

以上最近の企業会計・監査の状況について、主として上場会社を対象とした動向を見てきましたが、当事務所の対象とする非上場の会社法監査やその他の監査の決算・監査においても、上記の議論の動向によって影響を受けますので、最新の会計・監査の状況については注意が必要です。

早期のワクチン接種によるコロナ後の状況が訪れることを期待しながら、コロナ禍の決算・監査への対応は怠らないように気を付けたいと考えています。

横田公認会計士事務所は、主として非上場の会社法監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査、医療法人の会計監査等の依頼も受け付けておりますので、問い合わせフォーム(24時間年中無休)、電話にてのご連絡は平日10時~17時まで受け付けておりますので、気軽にご依頼・ご連絡ください。