法人税:総会延期で役員給与の損金要件を満たせないことも?(定期同額給与)
新型コロナの影響により、定時株主総会延期などを行うことを表明する企業が出てきていますが、税務上、問題となるのが役員給与の取扱です。損金算入が認められる定期同額給与(事業年度の各月に支給される役員の給与の額が同額であること)の変更は、一定の期間内に手続を行うことが必要であり、総会の延期等により要件を満たせないことが懸念されます。
【株主総会延期の場合】
3月決算法人の場合、配当や議決権行使の基準日との関係上、通常、6月までに定時株主総会を開催します。
株主総会を7月以降に延期した場合、税務上、問題となるのは、役員給与に関する各種手続きの期限は、6月末となる場合が多いため総会の延期により、この期限を過ぎてしまうケースがあることです。
【定期同額給与と3月経過日等】
定期同額給与の改定は、原則、その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日(3月決算の会社の場合4月1日)から3月を経過する日(6月30日)までに行う必要があります。 7月1日を過ぎれば役員給与を改定しても増額した部分の給与は損金算入が認められません。
ただし、3月経過日後に改定が行われた場合であっても、そのことについて「特別の事情」があると認められれば、定期同額給与に該当します(損金算入が認められます)。
この点、新型コロナの影響により株主総会の延期がなされたことで申告期限につき、国税通則法第11条の個別延長の適用を受けたことにより、3月経過日後の改定となった場合、定期同額給与の要件を満たすかどうかが問題となります。
結論としては、この場合は「特別の事情」があるものと考えられ、定期同額給与に該当します。
具体的には前期(2019年6月)から専務の給与を50万円として、当期の株主総会で60万円に増額改定しようとしていた場合、6月末までの株主総会で役員報酬の改定を決議しなければ増額部分の損金算入が認められませんが、新型コロナの影響により総会を延期した場合は「特別な事情」のある場合として7月1日を過ぎて開催した株主総会で決議しても60万円全額の損金算入が認められることとなります。
具体的な手続きについては税理士または公認会計士にご確認ください。