上場会社等の会計不正公表会社は4年連続で増加(日本公認会計士協会)

はじめに(当事務所のご紹介と今回のブログの概要)

はじめに(当事務所のご紹介と今回のブログ)

当事務所は、非上場の法定監査・任意監査を専門に行う公認会計士事務所であり、上場会社の監査のご依頼は受けておりません。

当事務所の会計監査対応地域は東京を含む原則全国対応ですが、効率性の観点から、大阪府(主として大阪市を含む北部大阪)、神戸市を含む主として兵庫県南部、京都市を含む京都市周辺地域のご依頼を優先しています。

他方で、当事務所のブログは上場会社の最新の公認会計士等の異動など、監査・税務に関する環境変化については積極的に情報を発信する方針であり、今回は、日本公認会計士協会(JICPA)が7月24日「上場会社等における会計不正の動向(2025年版)」を公表し、2025年3月期は56社が会計不正を公表しており、4年連続増加となった事についてご紹介します。

会社法監査やその他法定監査・任意監査のご依頼はまだ受け付けておりますので、問い合わせフォームよりお申し込みください。

決算期(特に3月決算)によってはここ数年の公認会計士不足の影響を当事務所も受けており、人的資源に限りがあるためお断りする場合があることをご了承ください。

横田公認会計士事務所ニュース

会計不正の公表社数

2021年3月期から2025年3月期において、会計不正の発覚の事実を公表した上場会社等は、下図(図表 会計不正の公表会社数の推移)より計196社ででした。「2025年3月期」は、56社が会計不正の事実を公表し、そのうち2025年4月16日現在で42社が調査報告書を公表しています。

会計不正の公表会社数は「2021年3月期」に26社だったところ、「2022年3月期」は33社、「2023年3月期」は36社、「2024年3月期」は45社、「2025年3月期に56社」と、年々増加しています。

【図表】会計不正の公表会社数の推移(単位:社数)

横田公認会計士事務所ブログ

会計不正の発覚経路

会計不正の公表社数は年々増加しており、2025年3月期(2024年4月~2025年3月)の56社は、2021年3月期の26社の倍以上となっています。

増加の要因の一つと考えられるのが税務調査件数の増加である。新型コロナウイルス感染症の収束に伴い、法人税等の実地調査件数は増加しており、2021年3月期から2025年3月期における会計不正の発覚経路は

1.当局の調査等・・・47件

2.内部統制等・・・31件

3.内部通報・・・28件

4.取引先からの照会等・・・26件

5.未公表・・・26件

6.公認会計士監査・・・16件

7.内部監査・・・10件

個人的には、公認会計士監査が不正を発見している件数が16件と少ないことが気になるところです。

横田公認会計士事務所ブログ(会社法の監査実施状況調査について)

会計不正の手口

2021年3月期から2025年3月期において、JICPAの調査報告書が公表されている177社で生じた会計不正(184件)のうち、不正の手口が判明するものを分類すると、「粉飾決算」が合計263件、 「資産の流用」が合計76件。なお、「粉飾決算」については、手口 が複数存在する場合、それぞれを1 件として計上しているため、不正手口の件数合計は339件 となり、会計不正の件数(184件)とは一致しません。

一般的に、資産の流用による財務諸表への影響額よりも、粉飾決算による影響額の方が多額になります。そのため、上場会社等が適時開示基準に準拠して公表する数は、粉飾決算の方が多くなると考えられます。2025年3月期においては、公表された会計不正のうち 76.6%が粉飾決算である。

2025年3月期の特徴

JICPAの公表資料によると、上述の通り76.6%が粉飾決算となっています。粉飾決算が多いのは例年通りであり、具体的な手口は、

・収益関連(売上の過大計上ほか、循環取引、工事進行基準)32.2%

・原価関連(架空仕入・原価操作)27.1%

収益関連の会計不正の割合は2022年3月期には48.9%を占めていましたが、それ以降は30%台へと低下傾向が続いています。

会計不正の関与者

・役員・・・19件(17件)

・非管理職・・・14件(10件)

・管理職・・・11件(20件)

( )は2024年3月期

2024年3月期と比較して「役員」「非管理職」の関与件数が増加している。

会計不正の発生場所

本社・・・19件(24件)

国内子会社・・・16件(20件)

海外子会社・・・8件(3件)

( )は2024年3月期

海外子会社が3件から8件へ増加している。

なお、2021年3月期から2025年3月期に会計不正が発生した海外子会社の所在地は26拠点あり、このうち12拠点(46%)は中国であり突出している。

(参考)会計不正の定義

① 粉飾決算

粉飾決算とは、財務諸表の利用者を欺くために財務諸表に意図的な虚偽表示を行うことであり、計上すべき金額を計上しないこと、又は必要な注記を行わないことを含んでいる。粉飾決算は、会社の業績や収益力について財務諸表の利用者を欺くために、経営者等が利益調整を図ることを目的として行われる可能性がある。

このような利益調整は、経営者等の些細な行為又は仮定や判断の不適切な変更から始まることが多い。これらの行為は、動機やプレッシャーによって、粉飾決算にまで至ることがある。例えば、会社業績を増加させたいという欲求や、市場の期待に応えるというプレッシャーのために、粉飾決算を行うことがある。また、税金を最小限にするための利益の圧縮又は銀行からの資金調達を確保するための利益の水増しといった動機を持つこともある。

粉飾決算は、以下の方法により行われることが多い。

✧ 財務諸表の基礎となる会計記録や証憑書類を改竄、偽造又は変造する。

✧ 取引、会計事象又は重要な情報の財務諸表における虚偽の記載や意図的な除外をす

る。

✧ 金額、分類、表示又は注記事項に関する会計基準を意図的で不適切に適用する。

粉飾決算は、経営者等による内部統制の無効化を伴うことが多い。経営者は、以下のような方法を用いて内部統制を無効化し、不正を行うことがある。

✧ 経営成績の改竄等の目的のために架空の仕訳入力(特に期末日直前)を行う。

✧ 会計上の見積りに使用される仮定や判断を不適切に変更する。

✧ 会計期間に発生した取引や会計事象を認識しない、又は認識を不適切に早めたり遅らせたりする。

✧ 適用される財務報告の枠組みで要求される注記事項又は適正表示を達成するために必要な注記事項を省略したり、不明瞭に記載したり、又は誤った表示をする。

✧ 財務諸表に記録される金額に影響を与える可能性のある事実を隠蔽する。

✧ 企業の財政状態又は経営成績を偽るために、仕組まれた複雑な取引を行う。

✧ 重要かつ通例でない取引についての記録や契約条項を変造する。

② 資産の流用

資産の流用は、従業員により行われ、比較的少額であることが多い。しかし、資産の流用を偽装し隠蔽することを比較的容易に実施できる立場にある経営者が関与することもある。資産の流用は、以下のような方法により行われることが多い。

✧ 受取金を着服する(例えば、掛金集金を流用すること、又は償却済債権の回収金を個 人の銀行口座へ入金させること。)。

✧ 物的資産を窃盗する、又は知的財産を窃用する(例えば、棚卸資産を私用又は販売用 に盗むこと、スクラップを再販売用に盗むこと、企業の競争相手と共謀して報酬と引 換えに技術的情報を漏らすこと。)。

✧ 企業等が提供を受けていない財貨・サービスに対して支払を行う(例えば、架空の売 主に対する支払、水増しされた価格と引換えに売主から企業の購買担当者に対して支 払われるキックバック、架空の従業員に対する給与支払)。

✧ 企業の資産を私的に利用する(例えば、企業の資産を個人又はその関係者の借入金の 担保に供すること。)。 なお、資産の流用においては、資産の紛失や正当な承認のない担保提供といった事実を 隠蔽するために記録又は証憑書類の偽造を伴うことが多い。

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