会計監査人の異動2025年3月は15社、半数以上の8社の監査人が監査契約継続辞退(辞任)!

はじめに(当事務所のご紹介と今回のブログの概要)

はじめに(当事務所のご紹介と今回のブログ)

当事務所は、非上場の法定監査・任意監査を専門に行う公認会計士事務所であり、上場会社の監査のご依頼は受けておりません。

当事務所の会計監査対応地域は東京を含む原則全国対応ですが、効率性の観点から、大阪府(主として大阪市を含む北部大阪)、神戸市を含む主として兵庫県南部、京都市を含む京都市周辺地域のご依頼を優先しています。

他方で、当事務所のブログは上場会社の最新の公認会計士等の異動など、監査・税務に関する環境変化については積極的に情報を発信する方針であり、今回は、2025年3月1か月の上場会社の会計監査人の異動が15社あり、その半数以上の8社の退任監査人が監査契約継続を辞退するといった特殊な理由であったことついてその原因や背景についてご紹介します。

会社法監査やその他法定監査・任意監査のご依頼はまだ受け付けておりますので、問い合わせフォームよりお申し込みください。

決算期(特に3月決算)によってはここ数年の公認会計士不足の影響を当事務所も受けており、人的資源に限りがあるためお断りする場合があることをご了承ください。

横田公認会計士事務所ニュース

監査人の規模別異動状況

上記の通り、中小から中小への異動が半数に迫っていますが、2025年1月~2月には大手からの流出(大手から準大手・大手から中小)が目立っていましたが、中小から中小を含め中小監査法人が退任し、IR時に就任監査人が決まっていない会社が2社ありました。この2社はいずれも中小監査法人が監査契約の継続を辞退したためであり、辞退された会社は就任監査人探しに奔走しているものと考えられます。

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監査人の異動理由

3月の異動理由は上記の二つだけでした。一つは「監査費用の相当性」いわゆる監査報酬の値上げ傾向を理由に会社が他の監査人に会計監査人を交代するのは、ここ数年よく見られる異動理由ですが、二つ目の現任会計監査人が監査契約を辞退(辞任)するのはごく稀なケースであり、3月は8社もあったことからこの時期特有の何か特別な事態が発生しているようです。 以下で、監査契約の継続辞退を理由についてもう少し詳しく見てみましょう。

横田公認会計士事務所ブログ(会社法の監査実施状況調査について)

監査契約の継続辞退が激増しているのはなぜか

監査契約の継続辞退(辞任)をした監査法人

●恒栄監査法人・・・2社

●アスカ監査法人・・2社

●霞友監査法人・・・1社

●爽監査法人・・・・1社

●清明監査法人・・・1社

●RSM清和監査法人・1社

公認会計士法や金商法が改正され、2023年4月より「上場会社監査人登録制度」(以下登録制度)が法制化され、上場会社を監査する監査法人等にはより厳しい事務所の品質管理が求められています。日本公認会計士協会(JICPA)はこの厳しい品質管理をクリアしていない監査法人等については登録を認めず、結果上場会社の監査を行うことが出来なくなっています。この登録制度への登録の期限は2024年10月でしたが、まだ登録が認められていない監査法人等は例外的に現在、JICPAの基準を満たすべく品質管理を強化して登録を目指している状況です。

このような状況で、

恒栄監査法人、霞友監査法人、爽監査法人は上場会社監査人登録制度への登録がJICPAから拒否されました。現在契約中の上場会社の監査は事業年度終了まで監査を行うことができますが、それ以降の事業年度の監査契約は継続することができません

このような状況で、主として3月決算会社は会計監査人を交代せざるを得ない状況となっているのです。

アスカ監査法人も今年の1月に金融庁から行政処分を受けており、登録制度への登録がまだ認められていません

4月以降も、上記の登録制度への登録が認められていない(拒否された)監査法人と監査契約している会社の監査契約継続辞退による監査人の異動が少なからず発生することになるでしょう。

登録制度への登録拒否を理由に監査人の異動の公表を行った具体例

●恒栄監査法人の事例

野崎印刷紙業株式会社/東証スタンダード(7919)

IR公表日 :2025/03/11

異動年月日:2025/06/28

退任監査人: 恒栄監査法人

異動理由:[任期満了]

当社会計監査人である恒栄監査法人は、日本公認会計士協会から、人的資源に関する方針や手続きの内容が不十分であることを理由として上場会社等監査人名簿への登録を拒否する(「登録の拒否」)処分がなされました。処分に対しては不服申し立てが可能でありますが、恒栄監査法人において2025年3月10日に不服申し立て等を行わない旨の決議が行われ、当社は任期満了をもって監査契約の継続を辞退したい旨の申し出を受けました。

●霞友監査法人の事例

株式会社植松商会/東証スタンダード・名証メイン(9914)

IR公表日 :2025/03/25

異動年月日:2025/06/19

退任監査人: 霞友有限責任監査法人

異動理由:[会計監査人辞任]

当社の会計監査法人である霞友有限責任監査法人は、日本公認会計士協会から、将来にわたり適正な監査を行うための人員体制が維持・確保できないことを理由として上場会社等監査人名簿への登録を拒否すること(「登録の拒否」)の処分がなされました。処分に対しては不服申し立てが可能でありますが、霞友有限責任監査法人において不服申し立て等を行わない旨の決議を行い、登録の拒否を受け入れた旨の通知を受領いたしました。

公認会計士法附則第3条第2項に従って、監査業務終了時である2025年6月19日開催予定の第71 回定時株主総会の終結の時までは、霞友有限責任監査法人が従来通り会計監査を行い、それ以降は後任の会計監査人が業務に当たることとなります。後任の会計監査人については、選定を開始しております。決定次第、速やかにお知らせいたします。

上記以外のアスカ監査法人はまだJICPAから「登録の拒否」の処分がなされていないようですが、4月1日のIRでも1社アスカ監査法人の退任が発表されており、2025年に入って合計4社の退任が発表されていることから登録制度への登録が認められるのは難しい状況だと言えます。

おわりに(2025年の今後の監査人の異動)

会計監査人の異動は、当事務所集計で2022年の249社をピークに2023年は192社、2024年は145社まで減少しました。

2025年は3月までに46社の異動が発生しており、2022年のピーク時の47社に次ぐ水準まで異動社数は多くなっています。

2025年1月と2月は大手から準大手(特に太陽監査法人)・中小への異動が過半数を上回り、監査報酬の値上げによる大手からより低い監査報酬を提示する中小等への異動問いトレンドでしたが、それに加え、3月から顕著になっているのが、今回取り上げた、登録制度への登録が認められない中小監査法人から主として他の中小監査法人への異動のトレンドです。

4月以降5月まで、3月決算会社の決算発表がピークを迎え、会計監査人の異動も年間の過半数の異動が例年発表されます。

今年は

監査報酬(監査費用)の値上げ(相当性)を理由として大手からの異動

登録制度に登録できない中小監査法人からの異動

上記二つのトレンドにより、例年以上に会計監査人の異動が活発化すると考えられます。

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