2024年の1年間の会計監査人の異動は145件、2020年の水準まで低下

はじめに(当事務所のご紹介と今回のブログの概要)

はじめに(当事務所のご紹介と今回のブログ)

当事務所は、非上場の法定監査・任意監査を専門に行う公認会計士事務所であり、上場会社の監査のご依頼は受けておりません。

当事務所の会計監査対応地域は東京を含む原則全国対応ですが、効率性の観点から、大阪府(主として大阪市を含む北部大阪)、神戸市を含む主として兵庫県南部、京都市を含む京都市周辺地域のご依頼を優先しています。

他方で、当事務所のブログは上場会社の最新の公認会計士等の異動など、監査・税務に関する環境変化については積極的に情報を発信する方針であり、今回は、2024年1年間の上場会社等の公認会計士等の異動についてご紹介します。

公認会計士業界の人員不足(人的リソース不足)による監査報酬の値上げを理由に異動を決める会社はここ数年の傾向ですが、2024年は監査法人の人的リソース不足を理由に辞任(退任)するケースも目立ちました。

会社法監査やその他法定監査・任意監査のご依頼はまだ受け付けておりますので、問い合わせフォームよりお申し込みください。

決算期(特に3月決算)によってはここ数年の公認会計士不足の影響を当事務所も受けており、人的資源に限りがあるためお断りする場合があることをご了承ください。

横田公認会計士事務所ニュース

総括

当事務所が調査したところ、2024年の上場会社の監査人の異動件数は前年より47件少ない145社でした。

2022年の249社をピークに、2年間で104社も減少しています。

特に前任より規模の小さな監査人への異動が減少しており、2年前より105社減少しました。

ここ数年、大手監査法人が監査報酬を値上げして監査先を手放すケースが続いていましたが、中小監査事務所が人手不足で受入余地がなくなってきたことが主な原因ですが、その他上場会社等監査人名簿への登録申請や改訂品質管理基準等の対応で中小監査事務所が新規の監査先の受け入れに消極的だったことも要因として考えられます。

また、受け入れに積極的だった準大手監査法人の太陽監査法人が金融庁から行政処分を受け、2024年1月から3月まで新規契約停止措置を受けたことも一因でしょう。

横田公認会計士事務所ブログ

監査人の規模別で見た異動件数と割合

会計監査人の規模を大手、準大手、中小に分類し、2023年と2024年の監査人の異動を比較しました。最も多かったのは2023年は「大手から中小」、2024年は「中小から中小」のケースです

「大手から中小」は前年から24社減少し、2022年と比較すると65社減少しています。

「大手から準大手」も前年より7社減少し、2022年と比較すると40社減少しています。

「準大手から中小」も含めた、「前任より規模の小さな監査人への異動」は前年比36社減少、2022年と比較すると109社も減少しています。

大手の監査先企業からの監査依頼の打診は相当減った(中小に所属する会計士)という声もあり、「大手・準大手から中小」に異動するケースは、中小の人的リソース不足も原因し、今後も少なくなると考えられます。

一方、「中小から中小」については、企業規模が大きくなり中小の中でもより大きな監査事務所に監査を依頼する企業や、金融庁の行政処分を受けた監査事務所に監査を依頼している企業が他の中小に依頼する場合が今後も想定されるため、中小間の異動は引き続き活発さを維持するのではないでしょうか。

横田公認会計士事務所ブログ(会社法の監査実施状況調査について)

公認会計士等の異動理由として多いのは?

一番多い異動理由は、やはりいわゆる「監査報酬の値上げ」により、大手から監査報酬の値上げの提示を受け、より安い監査報酬を提示した中小や一部の準大手への異動です。ピークの2022年は167社が監査報酬(費用)の増額・増額傾向により自社の規模に適した監査人(要は監査報酬が安く維持できる監査法人)への異動でした。

2024年は全体の6割を割りましたが、原因は中小も人手不足と人件費の高騰により安い監査報酬では引き受けられなくなってきているからでしょう。

2番目に多いのは「新たな視点による監査への期待」ですが、「大手から大手」の場合は「言葉通り」で理解してもほとんど間違いはないでしょう。しかし「大手から中小」の場合は主として建て前としての異動理由であり、本音は「監査報酬の値上げ」がほとんどだと実感しています。

新たに始まった中小の「人員確保困難による監査人の辞任」

前章の監査人の異動理由で2024年の3番目に多い、「人員不足・人員確保困難などによる辞任」は2023年までは中小もなんとか「バイト会計士」により人員を確保していたようですが、ここ数年の主として大手から中小への監査人のかなりの異動により、中小の会計監査人の比率が上昇し、公認会計士業界の人員不足による人員確保が困難となり、監査日数の確保が出来なくなり辞任するケースが目立っています。この傾向は2025年以降も増加することは間違いないでしょう。

では、なぜ中小だけが「人員確保困難で辞任」までするのでしょうか。大手や準大手は人員不足ではないのでしょうか。

大手や準大手も人員不足です。特に大手は、手間のかかる安い報酬しか払わない会社の監査は継続しません。監査報酬の値上げで、会社が他の監査法人を探すように促しているのです。更に、足らない人員は公認会計士では無い無資格の人員で補っています。

ここ数年、大手や準大手で監査補助者のうち無資格者の割合が年々増加しています。

では、中小ではなぜ無資格者で人員不足を補えないのでしょうか?

答えは、大手や準大手のように監査手続等がマニュアル化されておらず、大手や準大手を辞めて独立した監査経験のある「バイト会計士」に現場の作業を頼っているからです。「バイト会計士」は経験豊富な人材が多く、細かなマニュアルがなくても監査が出来ますが、無資格者の場合は詳細にマニュアル化された監査手続等が無ければ監査が出来ないからです。

今後の監査人の異動の動向

2024年と同程度以上の会社が今後も会計監査人の異動を行うと考えられます。

2024年は産業全体の賃上げ率が5%を超えました。2025年もそれ以上の賃上げ率が予想されます。

公認会計士業界は金融庁の検査が厳しくなり、年々監査工数は増加しています。加えて世の中の5%を超える賃上げ傾向により監査単価も上昇するでしょう。

関東圏の「バイト会計士」の日当は、10万円に迫っているようです。これらの要因により、監査報酬は今後も上昇するでしょう。大手監査法人や準大手監査法人からの異動は2024年の水準は維持するでしょう。一方、中小監査法人でも監査報酬が上昇する傾向は今後ますます強まるでしょう。これにより、中小間での監査人の異動は今後さらに増加すると考えられます。

会社は社会的コストとして監査報酬の上昇を受け入れなければ、特に上場会社は市場から退出しなければならなくなります。

会計監査人の監査が必要な会社は、賃上げ同様、監査報酬の値上げは覚悟しておくべき時代となったのでしょう。

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