収益認識に関する会計基準の表示について3月決算開示に向けて再確認
概要
主に表示及び注記事項を改正した収益認識会計基準等が2020年3月31日に公表されておりますが、適用時期は2021年4月1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から(基準第81項)となり、2022年3月決算の表示について再度確認しておきましょう。
損益計算書
① 顧客との契約から生じる収益
損益計算書上、適切な科目をもって表示することとされており、表示科目を決定するための具体的な指針は示されておりません。
例えば、売上高、売上収益、営業収益等(適用指針第104-2項)
② 顧客との契約に重要な金融要素が含まれる場合の取扱い
顧客との契約に重要な金融要素が含まれる場合、顧客との契約から生じる収益と金融要素の影響(受取利息または支払利息)は、損益計算書上、区分して表示します(基準第78-3項)。
貸借対照表
① 定義
「契約資産」
企業が顧客に移転した財またはサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利(但し、顧客との契約から生じた債権を除く)(基準第10項)。
「契約負債」
財またはサービスを顧客に移転する企業の義務に対して、企業が顧客から対価を受け取ったもの、または、対価を受け取る期限が到来しているもの(基準第11項)。
「顧客との契約から生じた債権」
企業が顧客に移転した財またはサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利のうち無条件のもの(すなわち、対価に対する法的な請求権)(基準第12項)
⇒ 契約のいずれかの当事者が義務を履行している場合は、貸借対照表上、上記の資産または負債が認識されます。
② 契約資産と顧客との契約から生じた債権の区別
・どちらも財又はサービスは提供済みですが、取引の対価に対する権利が無条件か否かで区別します(基準第150項)。
・無条件の権利とは、当該対価を受け取る期限が到来する前に必要となるのが時の経過のみであるものであり、例えば、受け取る対価に対する現在の権利を有している場合には、当該金額が将来において返金の対象となる可能性があるとしても、顧客との契約から生じた債権を認識します(基準第150項)。例えば、売掛金が該当します。
・無条件ではない条件付きの権利とは、例えば、工事契約の対象となる物件が引渡前であり、顧客の支払期限が未到来で、一定の期間にわたり充足される履行義務の進捗により計上されるものになります。例えば、工事未収入金が該当します。
・契約資産は、通常、顧客に対して対価を請求した時点で、無条件の権利に転化すると考えられるため、請求時点で顧客との契約から生じた債権に振り替えます。
・貸借対照表上、契約遺産と顧客との契約から生じた債権は他の資産と区分して表示するか、区分しない場合は、それぞれの残高を注記します(基準第79項、第159項)。
③ 契約負債
・財又はサービスを顧客に移転する前に顧客から対価を受け取る場合、顧客から対価を受け取った時又は対価を受け取る期限が到来した時のいずれか早い時点で、顧客から受け取る対価について契約負債を貸借対照表に計上します(基準第78項)。
・貸借対照表上、他の負債と区分して表示するか、区分しない場合は、残高を注記します(基準第79項また書き)。
④ 表示科目
・貸借対照表上は、契約資産、契約負債または顧客との契約から生じた債権を適切な科目をもって表示します(基準第79項)。
区分 | 勘定科目 |
契約資産 | 契約資産、工事未収入金等 |
契約負債 | 契約負債、前受金等 |
顧客との契約から生じた債権 | 売掛金、営業債権等 |
おわりに
勘定科目では、契約資産、契約負債など今まで馴染みのない科目が出てきますが、今まで通り、工事未収入金・売掛金や前受金と表示してもまったく問題ありません。
収益認識に関する会計基準において、注意すべき点は、顧客との契約に重要な金融要素が含まれる場合、顧客との契約から生じる収益と金融要素の影響(受取利息または支払利息)を損益計算書上区分して表示する点でしょう。
以上
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