会計監査人の異動2022年7月8社、8月14社!大手からの交代が6割!
はじめに
ここ数年、上場会社のIR公表によると監査人の異動が増加していますが、5月の109社から6月は10社、7月は8社、8月は14社と3月決算の影響で多くなる5月を除いても毎月10社前後と高水準の異動が続いています。
それでは、当事務所による集計で昨年2021年5月から8月に監査人の異動を公表した会社数を見てみましょう。
2021年5月・・・102社(2022年同月109社)
2021年6月・・・11社(2022年同月10社)
2021年7月・・・5社(2022年同月8社)
2021年8月・・・9社(2022年同月14社)
上記より、2022年6月を除き、5月+7社、7月+3社、8月+5社と確実に監査人の異動を公表する上場会社は前年に比べても増加しています。
監査人の異動が増加傾向であるトレンドの変化は継続しているようです。
では、7~8月の監査人異動22社の内容を個別に見てみましょう。
大手・準大手から中小へ監査報酬の値上げを理由に異動するケースが継続
多い順に
① 大手監査法人→中小監査事務所・・・10社
② 中小監査事務所→中小監査事務所・・・7社
③ 大手監査法人→準大手監査法人・・・3社
④ 大手監査法人→大手監査法人・・・2社
以上、22社中20社はより小規模な監査事務所へ(中小から中小も含む)異動という6月のブログで述べた最近のトレンド通りとなっています。
異動理由の実態調査
① 監査報酬(監査報酬が増加で今後も増加見込みのためなど)・・・13社(59.1%)
② 行政処分(会計監査人が金融庁の行政処分のため変更)・・・4社(18.2%)
③ 新たな視点(監査継続年数が長期で新たな視点の監査など)・・・3社(13.6%)
上記三つの理由で監査人を異動した会社が全体の91%を占めています。
今回「監査報酬の値上げ及び今後も継続して値上げの見込み」など監査報酬の値上げを理由に異動した割合が減少しているように見えますが、今年は金融庁の行政処分を受けた監査法人がすでに3法人あるため見かけは減少したように見えますが、実質は監査報酬の値上げ→会計監査人の中小への異動というトレンドに変化はありません。
具体的IR情報のご紹介
シンポ株式会社/東証スタンダード(5903)
IR公表日 :2022/08/26
異動年月日:2022/09/27
退任監査人: 有限責任あずさ監査法人
就任監査人: 仰星監査法人
異動理由:[任期満了]
当社の会計監査人である有限責任あずさ監査法人は、2022年9月27日開催予定の第52期定時株主総会終結の時をもって任期満了となります。同会計監査人については、会計監査が適切かつ妥当に行われることを確保する体制を十分に備えていると考えておりますが、監査環境の変化等により近年の監査報酬が増加傾向にあることから、当社事業の規模に見合った監査費用と監査対応の相当性等について他の監査法人と比較検討した結果、仰星監査法人の規模、品質管理体制、独立性及び専門性、監査対応と監査報酬の相当性等を総合的に勘案し、仰星監査法人を新たに会計監査人として選任することといたしました。
大手監査法人から準大手監査法人である仰星監査法人への異動事例です。
同じく準大手監査法人である太陽有限責任監査法人は、当事務所の集計した2022年の1月から8月までのIR公表事例の中で、主として大手監査法人から太陽有限責任監査法人へ異動した会社数は33社に上ります。
おわりに
この会計監査人の異動の増加に注目したブログのシリーズのメインテーマは、
『監査報酬値上げによる大手から中小監査事務所への監査人の異動』です。
しかし、2022年8月末までの会計監査人の異動205社の中で、太陽有限責任監査法人を始め、仰星監査法人など準大手監査法人への異動も「監査報酬の増加」を理由にしている会社がかなりの割合でみられます。
これはどういうことでしょうか?
次のトレンドは、大手から中小へとともに、準大手から中小への流れも加速するのではないかと予想しています。準大手監査法人の人員リソースも限界に近いと考えられるからです。
あらためて、監査人の異動のトレンドは
第一波:大手監査法人から準大手監査法人へ
第二派:大手監査法人・準大手監査法人から中小監査法人へ
第三派:中小監査法人から更に規模の小さな中小監査法人へ
第四派:中小監査法人から個人の公認会計士事務所の共同監査へ
現在の会計監査人の異動のトレンドは上記、第一波から第四派までが同時に発生しています。
しかし、今後は第二派の準大手から中小への流れが強くなるのではないかと考えざるを得ません。同時に、行政処分等の理由による中小の品質管理体制の脆弱性から中小からより品質管理体制を整備した中小への流れが新たに発生することでしょう。
また公認会計士法改正による「上場会社等監査人名簿」の登録要件がどれほど厳格になるかについても今後の会計監査人の異動に影響を及ぼすため今後注視していく必要がありそうです。
参照ブログ)公認会計士法改正による上場会社の監査に関する登録制度の影響
以上
横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く法定監査・任意監査に特化した監査事務所です。
上場会社を監査している監査法人等と比較し、費用面を抑えて実質的な監査を行うことを基本方針にしています。効率性の高い柔軟な会計監査を行うことが可能です。
監査等のご依頼・ご相談は、問い合わせフォーム(24時間年中無休)にてご連絡ください。以下のアドレスに直接メールされる方は、①お名前・②所属組織・③連絡先・④問い合わせ内容を記載して送信ください。電話でのご依頼の場合も同様の項目をまずはお伝えください。所属組織や連絡先の記載がない問合せはお断りします。
各種法定監査や合意された手続業務・税務顧問のご依頼・ご相談は気軽に問い合わせください。
依頼を伴わないご相談のみの場合は、30分5,000円(税抜)の相談料が発生します。
問い合わせ専用E-mail:このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。
会計監査のご依頼・お見積りについてはこちらの問い合わせフォームより
会社法監査等 上場会社以外の法定監査は監査法人に高い報酬を払う必要なし!
はじめに
大手監査法人、続いて準大手監査法人、更に上場会社を監査する中小監査事務所に監査を依頼している会社法監査、医療法人監査、社会福祉法人監査や労働組合の監査等の法人については、上記の監査法人等に高い監査報酬を支払って、形式的な監査を受ける必要はありません。
当事務所のように、融通の利く、個人の公認会計士事務所の監査を受けることが法人にとってベストな選択肢と言えます。
大手監査法人等上場会社を監査している監査法人等の監査を受ける不利益
上場会社を監査している監査事務所の場合、日本公認会計士協会(JICPA)のレビュー(監査の品質チェック)、金融庁監査審査会の検査(監査の品質検査)を受けなければなりません。
こればなかなか厳しく、そのために作成する資料は膨大となり、その資料作りに監査工数の3割以上を要するのが実情です。
それは何を意味するでしょうか?
同じ、監査単価として(例えば10万円/日)として、3割以上監査報酬を多く支払うことを意味します。
それだけではありません。上場会社を監査する監査事務所はJICPAや金融庁にこれだけはやらなければならない監査手続を決められてしまいます。
結果、どうなるでしょうか?
形式的な監査手続きを行い、各法人に適した監査手続をすることが少なくなります。
もちろん、各被監査会社が外部の公認会計士に求めることは様々でしょう。
例えば、「経営者等から営業の暴走をチェックしてほしい」「〇〇支店の在庫はいつも棚卸差異が発生するので、よくチェックしてほしい」「〇〇支店の経理に不信があるため、〇〇支店の監査を強化してほしい」などなど、それぞれ被監査会社ごとに、外部監査に求めるものは少なからず異なり存在します。
そのような声を聴き、それに応える臨機応変な監査を行う余裕が上場会社を監査する事務所にはありません。
各規模別監査事務所の監査単価
標準の監査単価は何十年も前に、標準監査報酬の計算方法が示されていました。当時から 1人日10万円が標準監査単価となっています。
実際、私の経験から、一定規模の法人を公認会計士が一日監査を実施すると、最終的な監査報告書の責任も含めて、最低10万円は必要であり、それ以下であれば赤字となることが多いと感じています。
当事務所を含め、非上場の会社しか監査していない監査法人(私はこの手の監査法人を監査法人ではなく、単なる個人の公認会計士事務所の集まりだと認識しています)の場合の標準単価は1人日10万円です。
以下、私的に各規模別の1人日(いちにんにち)当たりの標準単価を記載します。あくまで、平均値として当事務所が認識している単価であるため、実際はそれぞれ、見積もりの際に問い合わせしてください。
・大手監査法人・・・13万円~16万円
・準大手監査法人・・・12万円~15万円
・中小監査事務所A・・・10万円~12万円
・中小監査事務所B・・・10万円
以上です。中小監査事務所Aとは一定規模(10社以上の監査を行っている)監査事務所であり、中小監査事務所Bとは10社未満の監査を行っている監査事務所です。
おわりに
現状の監査事務所に満足している方はこのブログを最後まで読むことはないでしょう。
貴方の法人が、上場会社ではないならば、会計監査人は中小監査事務所BまたはAを選ぶべきです。
その中でも、烏合の衆である、非上場のみ監査している監査法人を選ぶのであれば、その事務所の当該責任者と十分コミュニケーションを行ったうえで、信頼できると判断できる監査法人を選ぶべきでしょう。
一方、個人の公認会計士事務所を選ぶのであれば、単純な話、その事務所の責任者が信頼できるかどうかについて見極めたうえで、会計監査人として依頼するべきです。
会計監査人の資質や信頼感の程度により、会社の経営者は安心して、経営に専念できるかどうかが決まってくるという面もありますので、会計監査人を単なるブランドで選ぶと不要な経費の発生と、経理業務等に余計に負担がかかるなど会社にとって不利益なことばかりとなることもあることを知っていただきたいとお伝えします。
以上
横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く法定監査・任意監査に特化した監査事務所です。
上場会社を監査している監査法人等と比較し、費用面を抑えて実質的な監査を行うことを基本方針にしています。効率性の高い柔軟な会計監査を行うことが可能です。
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公認会計士法改正による上場会社の監査に関する登録制度の影響
はじめに
公認会計士法が改正され(2022年5月)上場会社の監査に関して登録制度が導入されることになりました。
この改正により、監査法人等(個人の公認会計士事務所を含む)は、日本公認会計士協会が備える、「上場会社等監査人名簿」に登録を受ける必要があります。
しかし、今までも法では規定されていませんでしたが、実質的に「上場会社監査登録事務所」として、公認会計士協会に届け出、登録されないと、上場会社の監査を行うことはできない状況であったため何が違うのでしょうか?
この点、今回のブログでは簡単にご紹介したいと考えています。
法改正の影響
監査法人のガバナンス・コードといものが、2017年に策定され、監査品質確保に向けた5つの原則が設けられています。このガバナンス・コードは多くの上場企業の監査を担う大手監査法人を念頭に策定されたもので、準大手監査法人や中小監査事務所(個人の公認会計士事務所を含む)に適用は強制されていません。
現在は9の中小監査事務所が自主的に適用しています(2021年12月現在)。
法改正により、監査法人のガバナンス・コードが適用させるのでしょうか。
適用されるのであれば、適切な業務管理体制の整備が義務付けされます(公認会計士法第34条の34の14)。
結論から言うと、現状では未定です。適用されないなら、現状の制度と何ら変わらないということになるでしょう。
大手から中小監査事務所への交代が激増
中小監査事務所の存在感がここ数年非常に高まっています。2021年に大手・準大手監査法人から中小監査事務所に交代する事例は全交代件数の役7割を占めています。
法改正による登録制度が導入されることを踏まえると、監査事務所側に一定の規模や人的資源等が必要との指摘があります。そこで、中小監査事務所に対しても監査品質の観点からガバナンス・コードを適用すべきとの意見が出ています。
ただ、同コードを「中小監査事務所に直ちに適用するのは合わない箇所がある」「ガバナンス・コードの内容の工夫・検討が必要」との様々な意見が出ているようです。
監査法人のガバナンス・コードをどのようなものにしていくか、今後有識者の検討が始まるというのが現状となっています。
おわりに
監査法人のガバナンス・コードをすべての監査事務所に適用するのか、中小監査事務所(個人の公認会計士事務所を含む)に対しては緩やかなものにするのか今後の検討次第ですが、厳格に適用すると「監査難民」(会計監査人が決まらず上場廃止となる会社)が激増することは間違いないでしょう。
一方、緩やかなコードの適用にすれば、現状の法の規制のない「上場会社監査登録事務所」制度と何ら変化のないものになる可能性があります。
※「監査法人のガバナンス・コード」についての詳細は以下のJICPA発出資料を参照ください
以上
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共働き世帯で支払うベビーシッター代を経費とするには?
はじめに
我が国の重要課題として、少子化対策や女性の社会進出の両立に向けたシッターの活用が促されていますが、シッター代の支出を経費にできないという現状があります。
確かに、会社員や個人事業主はシッター代を経費として損金算入できません。
しかし、従業員の福利厚生を充実させる目的であれば法人では経費として処理できます。また、国の支援事業を活用すればお得にシッターを利用することも可能です。
今回のブログでは、シッター代に関する経費の判断や支援制度について取り上げます。
個人事業主の場合の経費算入の可否
個人事業主が仕事をするためにベビーシッターを利用しても、その支払金額は経費にはなりません。
経費の判断基準は
① その支出がなければ仕事ができない
② 仕事をしなければその支出は必要ない
以上2点です。
ベビーシッター代について考えてみましょう。
子供を預けないと仕事に従事できない人は①は満たします。しかし、②に関しては、子供がいなければベビーシッターを利用する必要がないため「仕事をするから必要」なのではなく、「子供がいるから必要」なのだと判断できてしまうため条件を満たさないと言えます。
結論として、ベビーシッター代は個人事業主の経費に算入できないとなります。
大企業など会社の場合の経費算入の可否
事業主が従業員のために支出するベビーシッター代だと個人事業主と少々異なります。ベビーシッター代が福利厚生費のためだと認められれば経費として損金算入できます。
大企業などでは、事業所内に託児施設を設ける、民間の託児施設と提携するなど、勤務時間中の役員・従業員の子を預かる仕組みのある会社も存在します。このような社内制度により支出した代金は法人にとって経費となるのです。
抽象記号の場合は内閣府の支援制度の活用
託児施設を用意するのは手間や資金が必要で、中小企業の場合はそのような手厚い福利厚生制度を用意するのは現実的に難しいのが実情です。
そこで活用できるのが、内閣府の支援制度「企業主導型ベビーシッター利用者支援制度」をご紹介します。
この制度は、ベビーシッター事業者の割引券を企業が格安で購入し、従業員に配布するというものです。
ベビーシッター代から2,200円割引される券を1枚70円で購入できます。中小企業が割引券購入のために支出した代金は、福利厚生費として経費にできます。
詳細は下記内閣府のホームページを参照ください。
企業主導型ベビーシッター利用者支援事業における「ベビーシッター派遣事業」の令和4年度の取扱いについて: 子ども・子育て本部 - 内閣府 (cao.go.jp)
おわりに
少子化対策は女性の社会進出は我が国に喫緊の課題であり、今後はベビーシッター代についても経費に算入できたり、税額控除を受けられるようにするなど様々な議論がなされています。
人口減少の我が国においては、外国人の労働者の採用と並行して、女性の社会進出を支援するため、ベビーシッター代については実質無償化する必要があると考えます。
以上
横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く法定監査・任意監査に特化した監査事務所です。
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監査報酬の値上げラッシュ!監査報酬が高いと感じたら相談ください
はじめに
大手監査法人、準大手監査法人を中心に監査報酬の値上げが続いています。
その原因は、公認会計士の人手不足と金融庁や日本公認会計士協会(JICPA)が実施する検査やレビューが毎年厳しくなり、監査法人等上場会社を監査する事務所の品質管理や監査手続について。求める監査調書や品質管理体制についての書類の整備についての指摘が増加しているためです。
上場会社を監査する監査事務所は、金融庁やJICPAの検査等のための書類つくりに時間を取られ、被監査会社に対する直接の監査時間は増加していないのに監査工数の増加を理由に監査報酬の値上げラッシュが続いている状況です。
適正な報酬で納得のいく監査を受けるためには
上場会社の場合は、上場会社監査登録事務所の監査が必要です。上場会社の監査をするためには、公認会計士法での登録が義務付けされるような改正も行われています。
上場会社の場合は、中小監査法人の中から会計監査人を選ぶという選択肢となります。中小監査法人と言っても、品質管理等についてはピンからキリまでありますので、問題のない監査事務所をお探しなら相談ください。当事務所が責任をもって中小監査事務所をご紹介します。
一方、会社法監査等の非上場会社の法定監査等であれば、個人の公認会計士事務所で監査が可能となります。当事務所は、3月決算会社の場合は日程的に厳しい状況ですが、3月決算を除く会社等の監査であればまだ監査可能ですので、ぜひご相談ください。適正な監査報酬で実のある監査を実施します。
当事務所は、2017年まで現在の東証プライム市場上場会社の監査を行っており、監査に品質面においては、上場会社監査事務所と遜色はありません。
その後は非上場の法定監査等を専門に監査する監査事務所として、被監査会社から高い評価を受けております。金融庁やJICPAからの制約のない監査を実施することにより効率的で被監査会社にとって納得のいく監査を行うことが可能となるのです。
おわりに
上場会社を監査する事務所は、金融庁等の指摘により、益々、形式的で融通の利かない監査を行っています。それと比例して、被監査会社と向き合わない形式的な監査調書等の書類を作る作業が増加し、監査工数の増加とともに監査報酬が増加するという状況となっています。
非上場会社の法人であれば、上場会社を監査する監査法人等と契約するメリットは何もないと言っても過言ではありません。
ブログにて『会計監査人変更チェックリスト』を作成していますので、ぜひ一度チェックし自社がいくつ該当するか試してみてください。
以上
横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く法定監査・任意監査に特化した監査事務所です。
上場会社を監査している監査法人等と比較し、費用面を抑えて実質的な監査を行うことを基本方針にしています。効率性の高い柔軟な会計監査を行うことが可能です。
監査等のご依頼・ご相談は、問い合わせフォーム(24時間年中無休)にてご連絡ください。以下のアドレスに直接メールされる方は、①お名前・②所属組織・③連絡先・④問い合わせ内容を記載して送信ください。電話でのご依頼の場合も同様の項目をまずはお伝えください。所属組織や連絡先の記載がない問合せはお断りします。
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テレワークの交通費が「報酬」として社会保険料の標準報酬月額に含まれる?!
はじめに
働き方の多様化を推進する観点から、某大企業が全従業員の半数を原則テレワークとする報道が先日話題となりました。
原則テレワークの従業員が一時的に出社する際の電車代等の額が、社会保険料の算定基礎となる「報酬」に該当するかどうかは、『労働契約上の労務の提供地』によって異なることになります。
社会保険料の算定
社会保険料は、1か月に支給された報酬を一定の等級で区分し決定される標準報酬月額によって確定します。
ここでの「報酬」とは、名称を問わず従業員が労働の対償として受け取るものです(厚生年金保険法3①三等)。
原則出社の場合の通勤手当は、経常的実質的収入の意義を有しており、労働の対償として従業員が受け取るものであり、報酬に含まれます。
一方、職務遂行上支出する出張旅費は、労働の対償ではなく、実費弁償的なものであり、報酬に含まれません。
テレワークの従業員の一時的な電車代等はどうなるか
原則テレワークをする従業員が一時的な出社で支出した電車代等は、『労働契約上の労務の提供地』が
① 事業所の場合、原則テレワークだとしても『労働の契約上の労務の提供地』が事業所であれば、出社する際の電車代等は通勤手当(労働の対償)として報酬に含まれます。
② 自宅の場合、業務命令により一時的に出社し、その電車代等の実費を会社が負担するのであれば、出張旅費と同様の実費弁償(労働の対償ではない)として報酬に含まれません。
おわりに
テレワークを導入する企業が、社会保険料の算定において従業員の電車代等を報酬に含めずに取り扱うには、従業員の『労働契約上の労務の提供地』を見直すことが求められます。
以上
横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く法定監査・任意監査に特化した監査事務所です。
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会計監査人の変更を検討中の法人は必見!チェックリストにより今すぐ確認を!
はじめに
大手監査法人や準大手監査法人において、公認会計士の人で不足・新会計基準対応・金融庁等による監督機関による監査の品質管理体制の強化の要請を受け、監査における監査工数(監査日数)が増加しているのが実情です。
このような実情を踏まえ、大手・準大手監査法人は毎年監査報酬の値上げをクライアントに要請しています。
監査報酬の値上げ要請により、コロナ渦による業績の改善が遅れている被監査会社においては、会計監査人を大手等から中小監査法人へ変更する状況が過去にないほど増えてきています。
上場会社においては、直近の2022年6月末現在、中小監査法人のシェアが20%を初めて超えました。
ただし、中小監査法人においては品質管理の面において脆弱な小規模監査法人が多く、金融庁から行政処分を受けた監査法人が2022年において3法人と過去最高の処分が多い状況です。
今回は、上場会社ではなく、非上場会社である「会社法監査」「医療法人監査」「学校法人監査」「社会福祉法人監査」などの法定監査において、会計監査人に不満があり、変更を検討中の法人のために、過去に記載したブログのチェックリストを表形式により作成し、より使いやすくしましたので、会計監査人変更の検討資料としてご活用ください。
会計監査人変更チェックリスト
No | チェック項目 | 該当 | 非該当 |
1 | 監査報酬の値上げの提案があった | ||
2 | 新人監査スタッフのOJTにされている | ||
3 | 監査メンバーの交代が頻繁で都度事情を説明するのが煩雑 | ||
4 | 主査(インチャージ)の経験が浅く頼りにならない | ||
5 | 監査責任者は年に数回しか来ず、来てもすぐに帰る | ||
6 | 質問しても回答が遅い | ||
7 | 二言目には審査が、審査担当者に確認してからと言い判断が遅い | ||
8 | 総じて判断が遅い | ||
9 | 質問に対する説明がわかりにくく、不十分 | ||
10 | 監査役等とのコミュニケーションが形式的 | ||
11 | 監査が形式的で、その手続きが当法人に必要か疑問 | ||
合計 |
以上のチェックリストで、貴方の法人ではいくつ該当にチェックが入りましたか?
半数以上の6個該当があれば、監査法人を変更したほうが間違いなく効率的かつ法人のためになる監査を受けられるでしょう!
特に、チェック項目No1とNo2にチェックが入った法人の場合は、監査法人を変更することにより監査報酬を提言することができる可能性が高いと言えます。
おわりに
監査法人変更チェックリストは、ぜひ印刷してチェックしてみてください。非該当の項目が多いなら貴方の法人は会計監査人に満足しているはずです。
このブログを見ておられる法人の方はおそらく、該当が半数以上という結果となったのではないでしょうか。
その場合、変更する会計監査人の探し方ですが、大手監査法人・準大手監査法人の監査を受けておられる法人の場合は中小監査事務所の中から、ホームページ等において気になる監査事務所を探してください。個人の公認会計士事務所を選択するのもベターな手段です。
理由は、小規模監査法人の場合は、個人の公認会計士事務所が5名以上集まった組織であり、それぞれ個人事務所を経営しながら個々人の責任者が連携することなくバラバラに監査をしているのが実情であり、個人の公認会計士事務所に監査を依頼するのと何ら違いはなく、逆に、監査法人の名のもとに、あたかも品質管理が行われているような印象を与えるだけであり、監査スタッフを個人の事務所の税務スタッフが兼務するなどのケースが多くみられます。
個人の公認会計士事務所で、監査を専門に行っている事務所より、監査の品質は低いともいえるでしょう。
それでは、信頼できる会計監査人を選び、会社の財務戦略や会計処理・内部統制について信頼性のあるアドバイスを受けられかつ適正な計算書類等が作成でき、監査を受けてよかったと思える会計監査人を選ぶことができるよう会計監査人の選任は重要なことだと認識ください。
以上
横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く法定監査・任意監査に特化した監査事務所です。
上場会社を監査している監査法人等と比較し、費用面を抑えて実質的な監査を行うことを基本方針にしています。効率性の高い柔軟な会計監査を行うことが可能です。
監査等のご依頼・ご相談は、問い合わせフォーム(24時間年中無休)にてご連絡ください。以下のアドレスに直接メールされる方は、①お名前・②所属組織・③連絡先・④問い合わせ内容を記載して送信ください。電話でのご依頼の場合も同様の項目をまずはお伝えください。所属組織や連絡先の記載がない問合せはお断りします。
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請求書の交付がない賃貸借契約・顧問契約等のインボイス対応
はじめに
令和5年10月1日から消費税のインボイス制度の適用が開始されます。
今回は請求書等の交付がない場合のインボイス対応について取り上げます。
不動産賃貸借契約・顧問契約等の現状
事務所の家賃等については不動産賃貸借契約書を取り交わし、それに基づいて口座振替により支払うのが通常です。特段、請求書等の交付を受け取ってない会社等も多いでしょう。
また、弁護士等に支払う顧問料についても、同様に口座振替により支払い、特に請求書等の交付を受けていないことも多いかと思われます。
インボイス導入後は、新たな対応が必要になります。
仕入れ税額控除を受けるための対応
契約書に基づき代金決済が行われ、取引の都度、請求書や領収書が交付されない取引であっても、インボイス制度下では仕入れ税額控除を受けるためには、適格請求書の保存が必要となります。
対応①:一定期間の取引について、まとめて領収書の送付を相手先に依頼する。
対応②:契約書に適格請求書として必要な記載事項の一部が記載されており、実際に取引を行った事実を客観的に示す書類とともに保存する。
例えば、口座振替により家賃を支払う場合は、適格請求書の記載事項の一部が記載された契約書とともに、銀行から交付を受けた振込金受取書を保存することにより、請求書等の保存があったものとして、要件を満たすことになります。
また、口座振替の場合は、同じく適格請求書の記載事項の一部が記載された契約書とともに引き落としのあった通帳を合わせて保存することにより要件を満たすことになります。
おわりに
令和5年9月30日以前からの契約である場合には、登録番号、適用税率および消費税額等の適格請求書として必要な記載事項の通知を受けたうえで、
① 契約書
② 不足事項における通知書
③ ①および②だけでは不足する事項に係る書類(例えば振込金受取書)を保存する
各会社等組織にとって、事務負担のより少ないと思われる方法を今後検討いただければと考えます。
以上
横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く法定監査・任意監査に特化した監査事務所です。
上場会社を監査している監査法人等と比較し、費用面を抑えて実質的な監査を行うことを基本方針にしています。効率性の高い柔軟な会計監査を行うことが可能です。
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中小監査法人の組織内部の実態とは?!会計監査人を選ぶ際の参考に!
はじめに
過去1年間(~2022年6月末まで)で上場企業の会計監査人の異動は過去最高となっており、228件となっています。
参照)CPAAOB公表 監査人の異動に伴う監査報酬の減額は228件中123件に
このうち、中小監査事務所(主に中小監査法人)は109件の純増となっています。
上場企業全体の中小監査事務所のシェアは初めて20%を超えました。
中小監査事務所(以下中小監査法人)がこれほどまでに会計監査人に選ばれる理由は、主に大手監査法人の監査報酬の値上げに対して、コロナにより業績が良くない企業が監査報酬を維持または値下げするためだと言っても過言ではないでしょう。
そこで、中小監査法人を選ぶ会社等のために、その実態(内部管理体制等)について今回のブログではご紹介したいと思います。
筆者は、中小監査法人での常勤・非常勤での実務経験が5法人以上あり、それぞれの事務所に共通の経営内部の事情についてかなりの程度把握していると自負しています。
中小監査法人とは
上記ブログで規模別の監査事務所を分類していますが、大手監査法人(四法人)及び準大手監査法人(五法人)を除く監査法人です。
このブログでその実態を述べる監査法人は中小監査法人の中でも主に上場会社の監査数が一桁以下の監査法人を主として中小監査法人と呼ぶことにします。
2022年に入り、金融庁の中小監査法人への行政処分がすでに3法人へ
中小監査法人の監査シェアが増加する一方、金融庁の公認会計士監査審査会(以下CPAAOB)の検査の結果、過去にないペースで監査法人の処分が増加しています。
処分理由を抜粋して列挙すると以下の通りです。あまりに処分に対する理由が多数ですべてをご紹介できる状況ではないため、ご興味のある方は直接金融庁の処分理由をご覧ください。
参考)監査法人の処分について:金融庁 (fsa.go.jp)
A監査法人)
・法人代表者及び品質管理担当責任者を含む各社員においては、各人の個人事務所等における非監査業務への従事割合が高く、監査法人における監査の品質の維持・向上に向けた意識が希薄なものとなっている
・法人代表者及び品質管理担当責任者は、監査品質の改善に向けてリーダーシップを発揮していないなど、品質管理のシステムを有効に機能させる態勢を構築する意識が欠如している。
・監査法人の各社員は、自らが関与していない個別監査業務における品質の改善状況を監視する必要性を認識していないなど、法人の業務運営に対する社員としての自覚に欠けている。
・監査法人においては、社員同士が互いに牽制し、監査品質の維持・向上を図る組織風土が醸成されておらず、組織的監査を実施できる態勢となっていない。
・法人代表者及び品質管理担当責任者は、現行の監査の基準に対する理解や、基準が求めている品質管理及び監査手続の水準に対する理解が、自らを含む監査実施者に不足していることを十分に認識していない。
・監査法人は、各社員の合意に基づいて品質管理活動を含む業務運営を行う方針としているにもかかわらず、各社員は、監査法人における現状の品質管理態勢を批判的に検討していないなど、監査品質の維持・向上に貢献していない。
・経営者の主張を批判的に検討していないなど、職業的懐疑心が不足している。
・継続企業の前提に関する検討が不十分、固定資産の減損に係る会計上の見積りの検討が不十分、工事進行基準に対するリスク対応手続が不十分、重要な勘定残高に対するリスク対応手続が不十分、監査チームメンバーの独立性の確認が不十分、重要性の基準値に関する検討が不十分、棚卸立会に係る手続が不十分、内部統制や財務報告に関連する情報システムの理解が不十分、監査役等とのコミュニケーションが不十分など、広範かつ多数の不備が認められる。
B監査法人)
・法人代表者は、法人運営について、法人代表者と審査担当責任者の代表社員2名及び品質管理責任者で重要な審議事項等を検討すれば、他の社員との間で明示的に当該審議事項等の情報を共有する必要はないと考えており、各社員が協働して監査品質の維持・向上を図るという組織風土の醸成に努めておらず、組織的監査が実施できる態勢を構築していない。
・法人代表者は、業容が急速に拡大する中、業務執行社員における十分な監査業務時間の確保が困難になっている状況や、監査補助者全体のスキルの底上げが必要となっている状況において、監査事務所に求められる品質管理の水準を十分に理解していないほか、品質管理態勢を迅速に改善する必要性を認識していない。
・業務執行社員及び監査補助者は、被監査会社及び被監査会社を取り巻く環境に関する変化が生じているにもかかわらず、リスク評価やリスク対応手続を毎期見直すという意識が不足している。
・業務執行社員は、法人全体の監査業務を少人数で分担しており、各々が担当する個別監査業務に割ける時間が限定的であることから、監査補助者が実施した監査手続が適切かどうかを十分に検討できていないなど、監査補助者の実施する監査手続に対する十分かつ適切な指示・監督及び監査調書の深度ある査閲を行う意識が不足している。
・重要性の基準値の検討、収益認識における不正リスクへの対応の検討、仕訳テストの検討、債権の評価に係る会計上の見積りに関する検討、企業作成情報の信頼性の検討、注記の検討、内部統制の評価範囲の検討、グループ監査における監査証拠の十分性及び適切性の検討、関連当事者取引の検討、初年度監査における期首残高の検討及び監査上の主要な検討事項の監査報告書への記載の検討が不十分、さらに、売上高等に係る実証手続、内部統制の運用評価手続、内部統制の不備の評価、情報システムに係る全般統制の評価及び未修正の虚偽表示の評価が不十分など、広範かつ多数の不備が認められる。
C監査法人)
・統括代表社員は、適切な業務管理や監査品質の維持・向上に資する品質 管理に係る最高経営責任者としての責任を負っているにもかかわらず、職業的専門家としての誠実性・信用保持の重要性に対する認識が不足しており、職業倫理の遵守を重視する 組織風土の醸成に向けて、リーダーシップを発揮していない。
・統括代表社員及び品質管理担当責任者においては、業務運営に係る重要な事項に ついて、特定の社員のみで議論すれば足りるものと考えており、内部規程等を適切に整備 し、当該規程等に従って、品質管理のシステムを運用する意識が欠けている。
・監査法人の各社員は、当監査法人所属の社員・職員は豊富な実務経験に基づく十分な能力を有しており、これらの者が実施する監査業務の品質には特段の問題がない ものと思い込んでいる。
・監査法人の各社員は、業務執行社員を含む監査実施者において、現行の品質管理の基準や監査の基準が求める水準の理解が不足する者が存在することを認識できていないほか、他の社員・職員が実施する監査業務について、審査や定期的な検証等を通じて、監査品質の維持・向上を図る意識が不足している。
・全ての個別監査業務において、業務執行社員及び監査補助者に監査の基準に対する理解が不足している状況及び職業的懐疑心が不足している状況が確認され、それらに起因する重要な不備を含めて広範かつ多数の不備が認められている。
・業務執行社員及び監査補助者は、監査の基準や、現行の監査の基準が求める手続の水準 の理解が不足している。特に、収益認識に関する不正リスクの評価及び対応に係る手続に ついての理解が不足している。
・業務執行社員及び監査補助者は、経営者の主張を批判的に検討していないなど、 職業的懐疑心が不足している。
・業務執行社員は、監査補助者を過度に信頼していたことから、監査補助者が適切に業務を実施していると思い込み、監査補助者に対する適切な指示・監督及び監査調 書の深度ある査閲を実施しなかった。
・不正リスクの評価が不適切並びに仕訳テストの検討、繰延税金資産の回収 可能性の検討、事業構造改善引当金の検討、将来計画の見積りの検討、取得原価の再配分 の検討、資産除去債務の検討、セグメント情報に関する注記の検討、内部監査人の利用に 係る検討、内部統制監査の評価範囲の検討及び監査上の主要な検討事項の記載に係る検討 が不十分、さらに、売上高の分析的実証手続、売上原価の実証手続、売掛金の実証手続、 棚卸資産の実証手続、特定項目抽出による試査による実証手続、監査サンプリング及びグ ループ監査に係る監査手続が不十分、くわえて、子会社株式の評価、のれんの評価、構成 単位の固定資産の減損、決算・財務報告プロセスの検証、取締役会等の議事録の閲覧、監 査役等とのコミュニケーション、個人情報の取扱い及び独立性の確認が不十分であるなど、 広範かつ多数の不備が認められる。
上記処分3法人以外の中小監査法人の実態
A監査法人への最初の金融庁の処分理由にある、各社員(会社でいう役員)が各人の個人事務所への従事割合が高く、監査法人の品質管理への関心が希薄であるという状況は多かれ少なかれ、中小監査法人共通の事情であることは間違いありません。
確かに、筆者が関与した中小監査法人でも各社員が個人事務所を持たず、監査品質を重視している中小監査法人もありました。しかし、その監査法人では公認会計士である職員の離職率が高く、いまだに常に求人をしている状況です。
なぜでしょうか?
その答えは大手監査法人のように会社員として公認会計士が仕事に従事するなら、わざわざ中小監査法人を選ぶ必要はなく、大手・準大手監査法人に就職する方が福利厚生面等総合的にメリットがあるからです。
その他の金融庁の処分理由も中小監査法人全体に共通の事項です。
ただし、それが行き過ぎているため上記の三つの監査法人は処分されたわけです。
一方、中小監査法人への監査人の異動が多くなっている現状、今後の金融庁の検査で同様の処分が増えるのは間違いありません。
上記3法人と同様の中小監査法人はまだまだたくさんあります。
おわりに
中小監査法人は民間の会社と違い、公認会計士の資格を持った者が5名以上集まって設立される法人です。
元々、それぞれ個人事務所を持っている公認会計士がほとんどであり、各人の事務所の経営を前提に行っている公認会計士が集まって法人化していることをご理解ください。
金融庁に処分される中小監査法人は上場会社の監査をしている中小監査法人です。筆者の個人事務所のように、会社法や学校法人、医療法人など非上場の会社等のみ監査を行う中小監査法人もたくさんあります。
そのような中小監査法人は、上記の処分3法人に比べて更に各人の個人事務所の経営に従事する割合が高く、監査法人としての品質管理に対する意識は希薄となることは自然なことと考えてください。金融庁の検査がないわけですから、各社員は名ばかりで、それぞれ各社員が監査法人の名を借りて、個人事務所が監査を行うのと何ら違いはありません。
結論として、非上場会社のみ監査している中小監査法人はほぼ90%組織としての品質管理はないと思ってください。
非上場会社の監査で規模がそれほど大きくない会社等の場合は、信頼できる個人の公認会計士事務所または信頼できる中小監査法人の会社を担当する社員の公認会計士を基準に会計監査人を選ぶべきといえます。
※中小監査法人に対するブログ中の見解は筆者の個人的な経験に基づくものであり、すべての中小監査法人に当てはまるものではありません!
以上
横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く法定監査・任意監査に特化した監査事務所です。
上場会社を監査している監査法人等と比較し、費用面を抑えて実質的な監査を行うことを基本方針にしています。効率性の高い柔軟な会計監査を行うことが可能です。
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副業収入300万円以下は事業所得としての申告不可へ!?雑所得に該当!
はじめに
副業収入は「事業所得」か「雑所得」か?
国税庁は、「所得税基本通達の制定について」の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見募集を開始しました。
副業収入を事業所得として課税逃れをするケース
副業にかかわる所得は、雑所得に該当することが基本となるものの、実態としては、事業規模に至らないにもかかわらず、事業所得で申告して青色申告特別控除を適用する、または損失が生じた場合には給与所得と損益通算するなどして課税逃れをしているケースがあるようです。
300万円以下の副業収入は「雑所得」に該当
国税庁の今回の改正案では、「事業所得」と「雑所得」の判定基準も示されています。
「事業所得」と「雑所得(業務にかかわる雑所得)」のいずれに該当するかは、『その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうか』で判定することが原則とされています。
ただし、例外的に、『その所得がその者の主たる所得ではなく、かつ、その所得にかかわる収入金額が300万円を超えない場合』には、特に反証のない限り「雑所得(業務に係る雑所得)」に該当するとされました。
結論として、改正後は、収入金額が300万円以下の副業に係る所得は「雑所得(業務に係る雑所得)」に該当することとなり、事業所得での申告による「青色申告特別控除の適用」や「損失が生じた場合の給与所得等との損益通算」などは行えないことになります。
おわりに
改正案では、収入金額が300万円以下の場合については、特に反証がない限り「雑所得」に該当するとされています。
この点、収入金額が300万円超であれば、自動的に「事業所得」に該当するわけではありません。
収入金額が300万円超の場合には、原則通り、『その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうか』で判定することになります。
最近よく行われている、会社員が副業をして収入金額が300万円以下の場合には、ほとんどのケースで「雑所得」となりそうです。
以上
横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く法定監査・任意監査に特化した監査事務所です。
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