「上場株式の配当及び譲渡所得に所得税と住民税で異なる課税の申告」手続き簡素化
はじめに
9月末にて沖縄を除き、緊急事態宣言が解除される方針のようです。コロナ禍の株式市場では、新規に証券会社に口座を開設し新たに株式投資を始めた方が多いようです。今回は、上場株式等の配当所得等の課税方式について、所得税・個人住民税で異なる課税方式を選択できる事と令和3年分の申告から個人住民税の申告手続きが簡素化されることについて簡単に記載します。
全ケースに影響と誤解する自治体・納税者
上場株式等の配当所得と譲渡所得(源泉徴収有の特定口座)について、所得税・個人住民税で異なる課税方式を選択した場合、いずれの税目でも申告することが原則ですが、令和3年分から、個人住民税で「申告不要」を選択したケースに限り、所得税の確定申告のみで申告手続きが完了します。
所得税・個人住民税で異なる課税方式を選択したすべてのケースに影響するものと誤解する地方自治体や納税者もあるようですが、個人住民税で「申告不要」を選択したケース以外では、これまで通り、個人住民税の申告が必要となります。
課税方式の選択で有利・不利を判断できる
上場株式等の配当所得と譲渡所得(源泉徴収有の特定口座)の課税方式については、平成29年度税制改正により、税務上の有利・不利を踏まえて、所得税・個人住民税でコロナる課税方式を選択できることが明確化されています。
配当所得・・・総合課税、申告分離課税、申告不要
譲渡所得・・・申告分離課税、申告不要
異なる課税方式を選択した場合には、所得税の確定申告を行った上で、個人住民税の納税通知書の送達日までに、個人住民税の申告も行うことが原則となります。
この点、令和3年度税制改正大綱では、個人住民税について、上場株式等の配当所得等の全部を源泉分離課税(申告不要)とする場合に、所得税の確定申告書の提出のみで手続きが完結するよう整備する旨が示され、確定申告書の附記事項にに係る地方税法施行規則に見直しが行われました(地規2の3)。
令和3年から見直された簡素化の内容
令和3年の改正は、所得税・個人住民税で異なる課税方式を選択したすべてのケースに対応したものではなく、上場株式等の配当所得・譲渡所得に係る個人住民税の課税方式の全部を「申告不要」としたケースに限られるということです。
国税庁が今年の7月に公表した「令和3年分確定申告書(案)」でも、住民税・事業税に関する事項として、“特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要”の欄の新設にとどまっています。
そのため、例えば、上場株式等の配当所得について、所得税で「総合課税」、個人住民税で「申告分離課税」を選択したケースでは、これまで通り、個人住民税の申告も必要となります。個人住民税で「申告不要」以外を選択する場合は、これまでと同様となりますのでご注意を!また、上場株式等の配当所得等の全部を「申告不要」としたケースに限られるため、一部の配当所得等に「申告不要」を選択したケースでも、当然、個人住民税の申告が必要となります。
おわりに
所得税・個人住民税で異なる課税方式を選択した場合については、納税通知書の送達日までの個人住民税の申告を忘れているケースの他、自治体側での誤りが散見されているようです。このため、申告手続きの簡素化を求める声もあったようです。
前述の通り、同改正では、個人住民税で「申告不要」を選択したケースのみ申告手続きの簡素化が図られたものの、すべてのケースの簡素化には至っていません。
個人住民税の申告については、各自治体によって様式等が異なり、運用上、「申告不要等申出書」等の提出を求める自治体もあるようです。お住いの自治体に確認ください。とにかく、今回の改正に伴い、「申告不要等申出書」等の様式の変更も検討されているようです。
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