令和3年度税制改正について
はじめに
3回目の緊急事態宣言が今日5月25日現在10都道府県に出されています。23日に出された沖縄を除き、9都道府県では5月31日が宣言の期限となりますが、すでに大阪府では再延長を要請することが決定しました。また福岡県でも延長を要請することを決定しました。再延長や延長の要請は他の都道府県にも広がることでしょう。一方、ワクチンの集団接種が各地で始まりトンネルの向こうに光も見えてきました。
ところで、ブログを記載するのは約1か月ぶりとなります。お久しぶりです。
4月後半から今週まで3月決算の監査業務で繁忙期を迎えていたためブログの記載をお休みしていました。来週以降も第三セクターや労働組合の監査日程が入っているためブログはしばらく書けないかもしれません。
当事務所は非上場の組織の監査に特化しているため、4月後半から6月中旬まで期末監査業務を継続的に行っています。大規模な組織の監査は行っていないため私が監査に行く組織の方々はリモート業務をあまり行っておらず、通常通りの訪問形式の監査を行っています。大阪では医療現場がひっ迫していますが、この1か月監査した体験から、幸い、私の周りでは緊急事態宣言下の印象はあまりありません。もちろん、みなさんマスクや消毒液による手洗い等は徹底しています。
そのような状況で本日は令和3年税制改正の概要について記載します。
1.今回の税制改正の特徴
今年3月、令和3年度税制改正法案が国会で成立、交付されました。これは昨年9月に発足した菅政権の手による初の税制改正であり、内容を見ていくと、昨年10月の所信表明演説で示された「デジタル社会の実現」や「グリーン社会の実現」、あるいは目玉政策の一つとされる「企業の生産性向上」といった政権の目標が具体的に表現されている点が例年にも増して特徴的ではないかと思われます。改正項目の中から公認会計士の業務に関連しそうなものを選び出し、それらを政策目的の観点で分類して概観することとします。
2.デジタル社会やグリーン社会の実現に向けた投資促進税制
まず、デジタル社会やグリーン社会の実現に向けて企業投資を喚起するために新設された投資促進税制を二つ見ていきましょう。
(1)デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制
本税制はデジタル技術を活用した企業変革(DX)を後押しするためのものです。
具体的には、産業競争力強化法に基づく認定を受けた法人が、認定計画に従ってソフトウェアの新設・増設をし、またはソフトウェアの利用に係る費用(繰延資産となるものに限る。)の支出をした場合、取得した固定資産や繰延資産の取得価額の30%の特別償却と取得価額の3%(一定の場合5%)の税額控除を選択適用できるとする制度です。
投資額のうち本税制が適用される限度は300億円であり、また、税額控除については次の(2)の税制と合わせて法人税額の20%が限度とされます。
本税制は改正産業競争力強化法の施行日から令和5年3月31日までに開始する事業年度に適用される時限措置となります。
(2)カーボンニュートラル投資促進税制
本税制は2050年の温室効果ガス排出ゼロ(カーボンニュートラル)の実現に向けた企業の脱炭素化投資を加速させるためのものである。具体的には、産業競争力強化法に基づく認定を受けた法人が、認定計画に従って脱炭素化効果を持つ製品の生産設備や生産工程の脱炭素化を進める設備を導入した場合、その取得価額の50%の特別償却または取得価額の5%(一定の場合10%)を選択適用できるとする制度です。
投資額のうち本税制が適用される限度は500億円であり、また、税額控除については先の(1)の税制と合わせて法人税額の20%が限度とされます。
本税制は改正産業競争力強化法の施行日から令和6年3月31日までに開始する事業年度に適用される時限措置となります。
3.税務行政のデジタル化のための環境整備
経済社会のデジタル化の進展やウィズコロナという環境下にあって税務行政のデジタル化を推進するためにされた税制上の手当を二つ紹介しましょう。
(1)税務書類への押印義務の原則廃止
令和3年4月1日以降に提出する税務書類から押印義務が原則廃止されることとなりました。今後押印が求められるのは、国税については、一定の書類(担保提供関係書類、物納手続関係書類、相続税等の特例における添付書類のうち遺産分割に関する書類)に限られることとなりました。
(2)電子帳簿等保存制度の抜本的見直し
経済社会のデジタル化や生産性の向上といった文脈の中で、電子帳簿等保存制度も抜本的に見直されることとなりました。
具体的には、
①国税関係帳簿書類の電磁的記録の保存制度について事前承認が廃止されました。また、システム要件が大幅に緩和されるとともに、より厳格な要件を満たす者に帳簿に関連して過少申告があった場合の過少申告加算税が5%軽減されることとなりました。
②国税関係書類に係るスキャナ保存制度について事前承認が廃止されました。またタイムスタンプ要件が緩和されるとともに適正事務処理要件(相互牽制等)が廃止されました。
③電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度についてタイプスタンプ要件と検索要件が緩和されました。
④以上の②③のせいどについて、電磁的記録の改ざん等により課される重加算税が10%加重されることになりました。
以上に改正は令和4年4月1日から施行されます。
4.その他の税制改正項目
以上の他、今回の税制改正では、企業の統合による規模拡大を通じた生産性の向上を図るために新設されたM&A促進税制(・株式対価M&A促進税制、・経営資源集約化税制(準備金の積立))、繰越欠損金の控除上限を限られた条件の下撤廃する特例の創設、研究開発税制の見直し、賃上げ等促進税制の見直し、所得拡大促進税制の見直し等が図られています。
おわりに
以上のように令和3年度税制改正を概観するとそれぞれに目的がはっきりした改正であることが理解できるでしょう。政策との関係では、特に現在菅政権が令和5年10月のインボイス制度開始を睨んで意欲的に取り組んでいる電子インボイス導入との関係で電子帳簿保存制度の成り行きが引き続き注目されます。
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