法人が中間申告をする場合の実務ポイント(コロナ禍、公認会計士からのアドバイス)
はじめに
新型コロナウィルス感染症は経済活動に大きな影響を与えており、資金繰りの関係から中間申告について、前年度実績による予定納税ではなく、仮決算によることを検討している法人も多いと思われます。今回は法人税の中間申告、対象、方法、計算の仕方、コロナ禍の特例など、基礎的なことからコロナ禍の特例について記載します。
法人税の中間申告、納付とは何?
前事業年度の法人税額が20万円を超えると、翌事業年度に法人税の中間申告と納付を行う必要があります。この中間申告は、課税期間で確定申告することにより決める年税額の前払いをしているイメージです。そのため、中間申告をして、納付した税額があるときは、確定申告をした際に中間申告で納付した税額が控除されます。また、控除しきれなかったときには払い過ぎとなった税金が還付されます。
この中間申告には1.予定申告という方法と2. 仮決算にもとづく中間申告の2つの方法があります。
(参照元URL:国税庁HP 中間申告の方法)
法人税の中間申告の対象となる人、時期
中間申告が必要なのは、前事業年度の法人税額が20万円を超える場合です。中間申告が必要となったとき、その提出期限と税金の納期限は、事業年度開始後6月を経過した日から2月以内です。なお、法人税の中間申告の対象となる人は、地方税(都道府県税、市町村民税、事業税等)についての申告も必要です。
中間申告の方法、計算の仕方など
中間申告には1.予定申告という方法と2. 仮決算にもとづく中間申告の2つの方法があります。
- 予定申告による場合は、前事業年度の法人税の2分の1の額が法人税額となります。法人税額の計算方法は、「前事業年度の確定申告書に記載すべき法人税額を当該前事業年度の月数で除し、これに6を乗じた金額」と規定されています。そのため、まず、前事業年度の確定申告書に記載すべき法人税額を前事業年度の月数で除して(円未満の端数切捨て)、その整数値に6を乗じて計算します。なお、100円未満の端数は切捨てします。
- 仮決算に基づく申告方法では、その事業年度開始の日以後6か月の期間を1事業年度とみなして法人税額を計算します。
予定申告をするときは、税務署から送られてきた予定(中間)申告書用紙に必要事項を記入した上で、捺印をして税務署に提出します。この予定(中間)申告書用紙については、前事業年度の法人税の確定申告書をe-Taxにより提出した場合は、税務署から送付されません。予定申告書用紙を送付しない法人に対しては、「法人税予定申告のお知らせ」がe-Taxの利用者本人のメッセージボックスへ送信されます。e-Taxソフトを使用している場合には、このお知らせ内容から「法人名」、「納付すべき税額」等の欄が初期表示された予定申告書の作成画面に移り、作成・送信することができます。
なお、後述しますが、中間申告については、申告書を提出しなかったとしても、自動的に申告があったものとみなされます。仮決算に基づく中間申告を行う場合は、中間申告対象期間で年度決算と同じように法人税の申告書を作成し、提出します。仮決算をした場合は、中間申告書に、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及び勘定科目内訳明細書等を添付して提出する必要があります。年度の確定申告書の添付書類とは異なっていますので注意してください。
中間申告は電子申告できる?
中間申告であっても、事業年度末の確定申告と同様にe-tax・eLTAXを利用して電子申告をすることができます。また年度と同様にダイレクト納付を利用して納税することもできます。
中間申告の勘定科目、仕訳方法
中間申告で納付した法人税等はあくまで年税額が確定していない段階での仮払いのような状態です。そのため、納付した法人税等の額を「仮払金」や「未払法人税等」のマイナスとして処理するのが一般的です。年度決算で法人税等の額が確定したときに、仮払金を取り崩し、年税額との差額が未収入金(未収法人税等)もしくは未払法人税等となります
もしくは、納付した法人税等を「法人税、住民税及び事業税」の勘定科目で計上することもあります。
中間申告をしなかった場合の特例
中間申告書の提出がない場合の特例が設けられており、中間申告書の提出が必要な事業者が提出期限までに中間申告書を提出しなかったときは、その提出期限の日に中間申告書の提出があったものとされ、前事業年度の法人税の年税額を基準にして計算された法人税額が確定することとなります。
なお、納付すべき法人税等の納付が遅れた場合、実際に納付した日までの延滞税を本税と併せて納付しなければなりません。
納税額が少なくなる方を選択することも
年度の法人税の支払についてはしっかりと把握していても、中間申告については時期や金額をうっかり忘れてしまっていることもあります。そんなときは、突然の税金の支払で資金繰りに慌てることになるかもしれません。中間申告について理解した上で、事前に資金計画の中に織り込んでおきましょう。また、予定申告でするか、仮決算に基づく中間申告をするかは、事前の届出も必要ありませんので、都度選択することができます。そのため、どちらか、納税額が少なくなる方を選択するということもできます。
新型コロナウィルス感染症の影響による期限の延長
災害その他やむを得ない理由により、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、納付等につき、期限までにこれらの行為をできないと認められるときは、そのものの申請により、その期限を延長することができ(国通法11)、この規定による期限の延長については利子税、延滞税がかかりません。
新型コロナウィルス感染症の影響については、経理担当部署の社員が感染し部署を相当期間閉鎖しなければならなくなったこと等により通常の業務体制が維持できない状況が生じたことなどの理由により、申告書や決算書類などの申告・納付の手続きに必要な書類等の作成が遅れ、その期限までに申告・納付等を行うことが困難な場合などが該当しますが、このような理由以外であっても、感染症の影響を受けて期限までに申告・納付が困難な場合には、期限の延長ができます。
現状は、申告の際、申告書等の余白に「新型コロナウィルスによる申告・納ス期限延長申請」である旨を付記すれば適用できることとされており、申告期限及び納付期限は原則として申告書の提出日となります。
中間申告においても同様で、中間申告書の提出ができることとなった時点で、その提出の際に、その申告書の余白部分に提出期限の延長申請である旨を記載して提出することにより、事後的に提出期限の延長が認められます。
さらに、中間申告書を提出することが困難な状態が確定申告書の提出期限まで続く場合には、中間申告書の提出は不要となります。この場合、確定申告書のお提出の際に、確定申告書の余白に、中間申告書は新型コロナウィルス感染症の影響により提出できなかった旨を記載します。その際の納付については、中間申告での納付がありませんから、確定申告書で1年分をまとめて納付することとなります。
現状のコロナ禍、中間申告についても柔軟な取り扱いができることとなっていますので、これから中間申告を控えている法人の経理担当の方は十分これらの取扱についてアンテナを張って国税庁等の発する最新の情報を入手するようにしてください。