改正私立学校法における会計監査人関係の改正の概要

はじめに(当事務所のご紹介と今回のブログ)

当事務所は、非上場の法定監査・任意監査を専門に行う公認会計士事務所であり、上場会社の監査のご依頼は受けておりません。

当事務所の会計監査対応地域は東京を含む原則全国対応ですが、主には、大阪府(主として大阪市を含む北部大阪)、神戸市を含む主として兵庫県南部、京都市を含む京都市周辺地域のご依頼を優先しています。

他方で、当事務所のブログは上場会社の最新の公認会計士等の異動など、監査・税務に関する環境変化については積極的に情報を発信する方針であり、今回は、2023年5月私立学校法改正における「会計監査人関係の改正の概要」をご紹介します。

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会計監査人を置かなければならない学校法人

1.改正私立学校法では、大臣所轄学校法人等は、会計監査人を置かなければならないとされています。

この大臣所轄学校法人等とは、次の法人とされています(改正私立学校法第143条、第144条第1項)。

・大臣所轄学校法人

・知事所轄学校法人で、事業の規模又は事業を行う区域が政令で定める基準(※)に該当するもの

(※)次の①かつ②を満たすこととする予定。

① 収入(事業活動及び収益事業による経常的な収入の額。計算方法は施行規則で定める予定)10 億円又は負債20 億円以上

② 3以上の都道府県において学校教育活動を行っていること(例えば、3以上の都道府県に学校を設置している、広域通信制高等学校を設置している等)

2.上記1の大臣所轄学校法人等以外の法人については、寄附行為の定めにより、任意で会計監査人を置くことができるとされています(改正私立学校法第18条第2項)。

3.会計監査人は、公認会計士又は監査法人でなければならないとされています。また、学校法人の役員、評議員及び学校法人と著しい利害関係を有する等の者(※)は、会計監査人となることができないとされています(改正私立学校法第81条第1項第3項)。

(※)以下の者は会計監査人となることができない。

① 公認会計士法の規定(公認会計士法第24 条、第34 条の11)により監査を行うことができない者

② 学校法人の子法人若しくは子会社役員から公認会計士若しくは監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者又はその配偶者

③ 監査法人でその社員の半数以上が②に掲げる者である者

会計監査人の選任・任期・責任・権限等

1.会計監査人の選任及び任期は、次のとおりとされています(改正私立学校法第80条第1項、第82条第1項第2項、第84条第1項第2項)。

・評議員会の決議によって、選任する。

・選任に関する議案の内容は、監事が決定する。当該議案の内容の決定は、監事の過半数の合意によって行う。

・任期は、選任後1年以内に終了する会計年度に関する定時評議員会の終結の時までとする。定時評議員会において特段の決議がされなかったときは、当該定時評議員会において再任されたものとみなす。

2.会計監査人監査の実施範囲は、次の開示書類とされています(改正私立学校法第86条第1項)。

・計算書類(貸借対照表及び収支計算書)及びその附属明細書

・財産目録(ただし、貸借対照表に対応する項目に限る予定。)

3.会計監査人の権限については、次の定めが設けられています。

・計算書類、財産目録の監査、会計監査報告の作成(改正私立学校法第86条第1項、第2項)

・会計帳簿等の閲覧謄写請求権(改正私立学校法第86条第3項)

・理事及び職員、子法人に対する会計に関する報告徴収権(改正私立学校法第86条第3項)

・学校法人及び子法人の業務・財産の状況の調査権(改正私立学校法第86条第4項)

・理事の不正行為等の監事に対する報告(改正私立学校法第87条)(一般社団・財団法人法第108条)

・定時評議員会における意見の陳述(改正私立学校法第87条)(一般社団・財団法人法第109条)

4.会計監査人の責任については、次の定めが設けられています。

対学校法人任務懈怠責任(改正私立学校法第88条第1項)
対第三者・会計監査人としての職務一般に関する責任(改正私立学校法第89条第1項)

・監査報告の虚偽記載等の責任(改正私立学校法第89条第2項第3号)

5.会計監査人と監事との連携に関する定めは、次のとおり整理されています。

会計監査人の監事に対する職務
・理事等の重大な不正行為等の監事への報告(改正私立学校法第87条)

・会計監査報告の通知(改正私立学校法第86条第2項)

・会計監査人の職務の遂行に関する事項の通知(※)
監事の会計監査人に対する権利
・会計監査に関する報告請求(改正私立学校法第87条)

・緊急時における会計監査人の解任(改正私立学校法第83条第2項)
監事の会計監査人に対する職務
・会計監査人解任の評議員会での報告(改正私立学校法第83条第3項)

・会計監査人の選解任、不再任議案の内容の決定(改正私立学校法第84条)

・一時会計監査人の選任(改正私立学校法第85条)

・会計監査人の報酬同意(改正私立学校法第87条)


・会計監査人の監査の方法及び結果の相当性判断(※)

(※)当該項目も含め、監査における会計監査人と監事の具体的な連携方法については省令等で定める予定

四半期決算

計算書類に関する責任関係及び所轄庁に提出する書類

1.会計監査人を設置する場合における計算書類に関する責任関係については、次のとおり整理されています。

理事等の責任学校法人会計基準に準拠して計算書類を作成し、学校法人の経営の状況及び財政状態を適正に表示すること。
監事の責任学校法人の財務報告プロセスの整備及び運用における理事の業務執行の状況を監視すること。 また、会計監査人の監査の方法と結果の相当性を判断すること(※)。
会計監査人の責任独立した立場で会計監査を実施し、計算書類に全体として不正又は誤謬による重要な虚偽表示がないかどうかについて監査意見を表明すること(※)。

(※)監事及び会計監査人の監査意見の内容については省令等で定める予定

2.改正私立学校法に伴い、私立学校振興助成法第4条第1項又は第9条に規定する補助金の交付を受ける法人が私立学校振興助成法に基づき所轄庁に提出する書類は、次のとおりとされています。

 改 正 前改 正 後
1収支計算書収支計算書
2貸借対照表、収支計算書その他の財務計算に関する書類(改正私立学校法第103条第2項に規定する)計算書類及びその附属明細書(※1)
3所轄庁の指定する事項に関する公認会計士等の監査報告書(※2)<会計監査人を置かない場合>
上記計算書類及びその附属明細書について、所轄庁の指定する事項に関する公認会計士等の監査報告(※2)

<会計監査人を置く場合>
改正私立学校法第86条第2項に規定する会計監査人の会計監査報告(※3)
4添付書類(私立学校振興助成法施行規則(新設)で定める予定)(※4)

(※1)作成根拠が私立学校振興助成法から私立学校法に変更される。計算書類とその附属明細書の内容は、新学校法人会計基準で定める。

(※2)補助金の額が寡少であって、所轄庁の許可を受けたときは不要

(※3)会計監査報告が必要な点は変わらないが、会計監査人を置く法人においては、会計監査人の会計監査報告を提出する(監査の根拠法や監査報告の形式が変更になる。)。

(※4)学校法人会計基準により定められる私立学校法の計算書類及びその附属明細書の内容と合わせ、内容を検討予定

以上が、改正私立学校法で規定が導入された会計監査人に関する概要となります。

2025年度(令和7年度)からは、現在行われている助成法監査に加えて私立学校法に基づく会計監査人(公認会計士等)制度による監査も始まる予定です。

参照)私立学校法の一部を改正する法律(新旧対照表)

私立学校法の一部を改正する法律:文部科学省 (mext.go.jp)

以上

監査現場

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