公認会計士等の異動理由の事実は?ニプロとロックペイントのIR 交代理由に違和感満載!

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はじめに(当事務所のご紹介)

当事務所は、非上場の法定監査・任意監査を専門に行う公認会計士事務所であり、上場会社の監査のご依頼は受けておりません。

当事務所の会計監査対応地域は東京を含む原則全国対応しますが、クライアントの旅費等の負担や当事務所のメンバーの移動時間の問題等により、大阪府(主として大阪市を含む北部大阪)、神戸市を含む主として兵庫県南部、京都市を含む京都市周辺地域のご依頼を優先いたします。

一方、当事務所のブログは上場会社の最新の公認会計士等の異動など、監査に関する環境変化については積極的に情報を発信する方針であり、今回は、公認会計士等の異動のIR発表をしながら、就任した監査法人の業務執行社員が全員、退任した監査法人に直前まで所属していた事例について掲載します。

以下のブログ内容はすべて上場会社から公表されたIRや有価証券報告書等の公表事実に基づき当事務所が調査した結果であり、公表されていない資料等や筆者の個人的な人脈からの情報等は一切記載していません。そのため個人名の記載については必ず根拠となる公表資料のリンクまたはIR公表社名と公表日を記載して容易に読者が事実を確認できるようにしています!ご自分で確認ください!

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   公認会計士等の異動(医療器具大手)

まず1社目は大手の医療器具の会社です。

公認会計士等の異動/ニプロIR

●1:ニプロ株式会社/東証プライム(8086)

IR公表日 :2023/05/10

異動年月日:2023/06/28

退任監査人: ひびき監査法人

退任監査人の業務執行社員の氏名岡田 博憲 中須賀 高典 卜部 陽士

就任監査人: 海南監査法人

異動理由:[任期満了]

当社の会計監査人であるひびき監査法人は、2023年6月28日開催予定の第70期定時株主総会の終結の時をもって任期満了となります。同監査法人は、2023年3月31日付けで金融庁から業務改善命令の行政処分を受けたことに鑑み、監査役会は、新たな会計監査人の選定を視野に入れ、複数の監査法人の比較検討を行ってまいりました。その結果、監査役会は会計監査人の独立性・監査体制・監査の実施状況や品質等に関する情報を収集し検討した結果、新たに海南監査法人を会計監査人として選任すべきことを決定いたしました。

上記のIRでは業務執行社員は未定でした。

続いて、会社は業務執行社員が決まりIRを7月に公表しました。

(開示事項の経過)ニプロIR

ニプロ株式会社/東証プライム(8086)

IR公表日 :2023/07/03

2023 年5月 10 日付で開示いたしました「公認会計士等の異動に関するお知らせ」において、未定となっておりました業務執行社員が確定いたしましたので下記のとおりお知らせいたします。

就任する公認会計士等の概要

名称:海南監査法人

業務執行社員の氏名:石原 美保 小林 裕 船城 公教

続いて、同社の有価証券報告書2021年3月期の122ページの監査報告書を見てみましょう。

有価証券報告書/ニプロ

ひびき監査法人の業務執行社員が3名記載されています。

以下監査報告書の記名順に

 坂東 和宏 石原 美保 中須賀 高典

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   公認会計士等の異動(総合塗料メーカー)

次は、関西本社の総合塗料メーカーの会社です。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/4621/tdnet/2283349/00.pdf

●2:ロックペイント株式会社/東証スタンダード(4621)

IR公表日 :2023/05/17

異動年月日:2023/06/29

退任監査人: ひびき監査法人

退任監査人の業務執行社員の氏名:石原 美保 北川 廣基

就任監査人: 海南監査法人

異動理由:[任期満了]

当社の会計監査人であるひびき監査法人は、2023年6月29日開催予定の第71回定時株主総会終結の時をもって任期満了となります。監査役会は同会計監査人の監査継続年数が長期にわたっていることから比較検討を実施した結果、会計監査人の交代により、新たな視点での監査及び機動的な監査が期待できることに加え、会計監査人に必要とされる専門性、独立性、品質管理体制及び監査報酬の水準等を総合的に勘案し、新たに海南監査法人を会計監査人候補者に選定するものであります。

会社は異動理由で新たな視点での監査等が期待できると明記しています。

この会社も①と同様に就任監査法人の業務執行社員が未定でした。

よって①と同じく、会社は業務執行社員が決まり①と全く同じ日付でIRを公表しました。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/4621/tdnet/2307919/00.pdf

ロックペイント株式会社/東証スタンダード(4621)

IR公表日 :2023/07/03

2023 年5月 17 日付で開示いたしました「公認会計士等の異動に関するお知らせ」において、未定となっておりました業務執行社員が確定いたしましたので下記のとおりお知らせいたします。

就任する公認会計士等の概要

名称:海南監査法人

業務執行社員の氏名:坂東 和宏 中須賀 高典

続いてロックペイント社の直近の2023年3月期の有価証券報告書の監査報告書65ページを見てみてください。

 第71期 有価証券報告書/ロックペイント

ひびき監査法人の業務執行社員2名が記載されています。記名順に以下の通りです。

 石原 美保 北川 廣基

当然ですが、5月17日のIRでの退任監査人の業務執行社員と同じです。

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ニプロ社とロックペイント社の公認会計士等の異動から

ニプロ社の2024年3月期の就任監査人3名

海南監査法人の業務執行社員石原 美保 小林 裕 船城 公教

上記の筆頭業務執行社員は、ロックペイント社の直前期(2023年3月期)のひびき監査法人の業務執行社員でした。

同様に上記の筆頭業務執行社員は、ニプロ社の2021年3月期のひびき監査法人の業務執行社員でした。ひびき監査法人の業務執行社員を交代してから2年間のインターバル後に個人としては別の監査法人で業務執行社員に復帰することになります。

その他2名の公認会計士も、以下の公認会計士協会の「公認会計士等検索システム」で検索すると7月末まで?(6月末までの記載事実?)の所属先等はひびき監査法人として記載されています。7月ならお試しを!

公認会計士等検索システム | 日本公認会計士協会 (jicpa.or.jp)

ロックペイント社の2024年3月期の就任監査人2名

海南監査法人の業務執行社員:坂東 和宏 中須賀 高典

上記の業務執行社員は、①の医療器具大手ニプロ社の2021年3月期のひびき監査法人の業務執行社員でした。

また、その他直前期(2023年3月期)の有価証券報告書を見ると

・日本精線株式会社/東証プライム(5659)

 有価証券報告書/日本精線

・株式会社シャルレ/東証スタンダード(9885)

有価証券報告書/シャルレ 

上記の有価証券報告書の監査報告書で、上記の海南監査法人の業務執行社員2名は、ひびき監査法人の業務執行社員と記載されています。

これらの事実から言えることは、上記事例2社の2024年3月期に就任した海南監査法人の業務執行社員全員は、直前の2023年6月までは、ひびき監査法人の代表社員または職員であったということです。

ここまで読まれて、なにか違和感を感じないでしょうか?

・ニプロ社の公認会計士等の異動理由は?⇒ひびき監査法人は、2023年3月31日付けで金融庁から業務改善命令の行政処分を受けたことに鑑み、監査役会は、新たな会計監査人の選定を視野に入れ、複数の監査法人の比較検討を行ってまいりました。~以下上記IR参照

との理由ですが、海南監査法人から就任した業務執行社員全員がひびき監査法人の行政処分の時にはひびき監査法人の代表社員または職員であった。この事実から金融庁のひびき監査法人への行政処分が公認会計士等の異動の理由になるでしょうか?

・ロックペイント社の公認会計士等の異動理由は?⇒監査役会はひびき監査法人の監査継続年数が長期にわたっていることから比較検討を実施した結果、会計監査人の交代により、新たな視点での監査及び機動的な監査が期待できることに加え、~以下上記IR参照

でした。海南監査法人から就任した業務執行社員2名は、6月末まで退任監査法人(ひびき監査法人)の代表社員であった。にもかかわらず新たな視点での監査が期待できるでしょうか?

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おわりに

これまで記載の事実から、今回取り上げた公認会計士等の異動を発表した上場会社2社について、少なくとも会計監査人候補者の選定において

・監査役会は機能しているのでしょうか?

・会社全体としてコーポレートガバナンスは機能しているのでしょうか?

上記の疑問はここまでの事実の流れから湧いた個人的な疑問です。

事実はわかりません!株主の皆さんが判断してください。

以上

横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く法定監査・任意監査に特化した監査事務所です。

上場会社を監査している監査法人等と比較し、費用面を抑えて実質的な監査を行うことを基本方針にしています。効率性の高い柔軟な会計監査を行うことが可能です。

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