公認会計士等の異動(2022年12月)ほぼ100%監査報酬の値上げが理由
●はじめに
2022年最終月である12月の公認会計士等の異動の状況をお伝えします。
世間では円安やロシアのウクライナ侵攻を契機として、物価高騰が主として昨年より続いていますが、公認会計士業界はもっと早く、ここ数年人員不足による監査日数の確保が困難等の理由により、監査法人による監査報酬の値上げラッシュが続いています。
特に大手監査法人においては、会計不正の増加を機に監査工数が増加していることもあり人員確保が困難な状況が一層強くなっています。
その流れで、大手から準大手・中小監査事務所への会計監査人の交代が毎年増加している状況です。
●12月の公認会計士等の異動状況
1.大手監査法人から準大手監査法人へ2社
2.大手監査法人から中小監査事務所へ5社
3.準大手監査法人から中小監査事務所へ1社
4.中小監査事務所から中小監査事務所へ1社
以上9社の上場会社が12月に公認会計士等の異動のIRを公表しました。
●準大手監査法人が受け皿となっているのは太陽有限責任監査法人
上記異動状況の1の交代先の準大手監査法人は2社とも太陽有限責任監査法人となっています。
今年の準大手監査法人による受け皿となっているのはほぼ太陽有限責任監査法人のようです。
●異動理由は監査報酬の値上げ
上記移動状況の4を除き、8社が監査報酬の増額を理由に挙げています。
監査報酬の増額提示を受けてとはっきりIRの異動理由に記載する会社も最近増えてきましたが、お決まりの異動理由は以下の文言です。
(具体的IR異動理由の記載例)
株式会社waqoo/東証グロース(4937)
IR公表日 :2022/12/08
異動年月日:2022/12/23
退任監査人: EY新日本有限責任監査法人
就任監査人: 監査法人クレア
異動理由:
~当社の事業規模に適した監査対応と監査報酬の相当性等総合的に検討した結果、監査法人クレアが当社の事業規模に適した効率的かつ効果的な監査業務の運営及び監査報酬等の相当性を総合的に判断し、~
株式会社モルフォ/東証グロース(3653)
IR公表日 :2022/12/09
異動年月日:2023/01/31
退任監査人: 有限責任監査法人トーマツ
就任監査人: 史彩監査法人
異動理由:
~当社の事業規模や内容に見合った監査対応や監査報酬の相当性等について複数の監査法人を比較検討した結果、~
株式会社トップカルチャー/東証スタンダード(7640)
IR公表日 :2022/12/16
異動年月日:2023/01/19
退任監査人: 有限責任監査法人トーマツ
就任監査人: 太陽有限責任監査法人
異動理由:
~当社の事業規模に見合った監査対応及び監査報酬の相当性等について、複数の会計監査人を対象として検討いたしました。~
イヴレス株式会社/TOKYO PRO Market(7125)
IR公表日 :2022/12/22
異動年月日:2023/01/27
退任監査人: 東陽監査法人
就任監査人: けやき監査法人
異動理由:
~近年の監査報酬が増加傾向にあります。これを契機に、新たな視点を取り入れ当社の事業規模に適した監査対応と費用の相当性等を考慮し、~
●大手や準大手は事業規模に適した(見合った)監査対応をしていないのか?!
上記具体的なIRの異動理由を挙げましたが、その他の4社もほとんど同じ内容となっています。
ここで疑問に思われることが2点あります。
・大手監査法人と準大手監査法人は事業規模に適した監査対応をしていないのか!
・準大手監査法人の中で太陽有限責任監査法人だけは事業規模に見合った監査対応を行っているのか!
大手監査法人や準大手監査法人は金融庁の検査等により監査手法をがんじがらめにされており規模の小さい会社に対しても一定の形式的な監査対応を行うことは考えられます。
また人員不足により、監査報酬の安い(利益率の低い)会社の場合はクライアント(会社)が公認会計士等を異動するように故意に監査報酬を高額に提示し、逆に会社が交代先を探すように促しているという側面もあるでしょう。
しかし、太陽有限責任監査法人だけが人員不足の中、利益率の低い大量のクライアント(会社)の受け皿となれるのかについては明確な答えは内部の当事者でない限りわかりません。
個人的に思い当たる理由が一つありますが、確実性がないためここで述べるのは差し控えます。
●おわりに
2022年の公認会計士等の異動は当事務所がIR公表を基に集計した結果、1年間で250社程度となりました。
以下のサイトでの調査では、公認会計士等の異動の1年間の上場会社数は、
2020年→149社
2021年→219社
2021年は監査法人の異動が急増 トレンドは「大手から中小」|TDBのプレスリリース (prtimes.jp)
との情報ですから、2022年の約250社は過去最高を更新しています。
2021年から急増して、2022年も更に30社程度増加したことになります。
2023年も含め当分このトレンドは続くと予想されます。
日本取引所グループによる2022年末の上場会社数は3,869社ですから、今後は10社に1社程度は毎年公認会計士等の異動を行うということが現実味を帯びてきました。
最後に、当個人事務所では、私個人の監査法人への参加も含め上場会社の会計監査は行わない方針としています。
上場会社以外の会社等の法定監査も同じような監査報酬値上げのトレンドとなっていることが予想されますが、その受け皿となり、事業規模に見合った効率的な会計監査を提供し、監査難民が出ないよう満足度の高い会計監査を行っていきます。
参照ブログ)監査報酬は安くても満足度の高い会計監査をご提供
以上
横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く法定監査・任意監査に特化した監査事務所です。
上場会社を監査している監査法人等と比較し、費用面を抑えて実質的な監査を行うことを基本方針にしています。効率性の高い柔軟な会計監査を行うことが可能です。
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