J-SOX年内に内部統制基準・実施基準の改正案公表!会社法監査へも影響か!
はじめに
金融庁・企業会計審議会は10月13日第22回内部統制部会を開催し、内部統制報告制度の見直しに向けた検討を開始しました。
主な論点として、
・経営者による内部統制評価範囲
・監査人による内部統制監査
・内部統制報告書の訂正時の対応
以上となっています。法律改正等を要しないものに限定される可能性が高そうです。
主な制度的論点
J-SOX導入から十数年が経過した内部統制報告制度については、形骸化も指摘されており、9月29日の企業会計審議会総会において、内部統制の実効性を高めるため、基準・実施基準等の改正を含めて、内部統制部会において審議を行うこととされていました。
参照ブログ)内部統制の実効性向上のため内部統制報告制度の見直し!年内にも方向性!
初回の審議となった10月13日の同部会では、事務局が「内部統制報告制度に関する国際的な議論の進展と現状」及び「主な制度的論点」を説明しました。
同部会で、今後「ご議論いただきたい事項」として、
① 内部統制の基本的枠組み
② 経営者による内部統制の評価範囲
③ 監査人による内部統制監査
④ 内部統制報告書の訂正時の対応
⑤ その他※
※上記4点のほか、内部統制基準・実施基準等を見直すにあたり、検討すべき点はないか
以上5点を示しました。
監査人による内部統制監査
経営者によるリスクベースの内部統制評価を促していく観点から、例えば、経営者と監査人の早期の緊密な協議を促すことや、内部統制報告書の中で経営者と監査人間の内部統制評価に関する議論を明らかにする意見が多かったようです。一方で、監査人のダイレクト・レポーティングを導入すべきとの意見もありました。
経営者による内部統制の評価範囲
経営者によるリスクベースの評価がなされておらず、経営者の評価範囲外で「開示すべき重要な不備」が検出される企業が一定程度見られることを踏まえたものです。
例えば、開示すべき重要な不備が認識された直近数年の訂正内部統制報告書のうち、当該不備が経営者による評価範囲外から認識されたものは2~3割程度あるようです。
その原因の一つと考えられるのが、評価範囲における選定基準の提要的な「例示」の存在です。
全社的な内部統制について、具体的には
・売上高で全体の95%に入らないような連結子会社は僅少なものとして評価範囲の対象から除外するというもの
重要な事業拠点の選定において、全社的な内部統制の評価が良好であれば、
・連結ベースの売上高等の2/3程度に入らない事業拠点は評価の対象から除外することが容認されている
企業が上記の「例示」に偏重して評価範囲を決定し、リスクの高い対象を含めることができていないといった指摘があります。
この点については、同部会では、リスクベースで評価範囲の選定を行うべき、といった意見が多く聞かれました。
「例示」については、全廃止に言及する意見もありましたが、一方で、「数値基準があることによって安定的な実務が遂行されている」として、プラスの面も踏まえて制度の改正を検討すべきなどの意見もあったようです。
内部統制報告書の訂正時の対応
訂正時の対応については、判断事由の開示に賛成する意見がほとんどでした。
その他として、非財務情報を内部統制報告制度の範囲に含めるべきといった意見もありました。
おわりに
次回の内部統制部会である程度の方向性を示し、年内に基準・実施基準の見直しに係る公開草案が公表される見通しとなっています。
内部統制報告制度をより実効性のあるものにすることは、内部統制を前提として監査を行う監査制度にも影響するものであり、内部統制が有効でなければ、会計監査の作業は増加し、現状の監査報酬の値上げラッシュがさらに続くことになるでしょう。
参照ブログ)監査報酬の値上げラッシュ!監査報酬が高いと感じたら相談ください!
この点、内部統制に依拠して監査を行うのは「会社法監査」その他法定監査全般に言えることであり、今回の内部統制報告制度の改正の議論は上場会社に限ったものではないと言えるでしょう。
以上
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