CPAAOB公表 監査人の異動に伴う監査報酬の減額は228件中123件に
はじめに
前回のブログ(2022年7月29日)は、当事務所独自の集計による最新の監査人の異動(2022年1月から2022年7月まで)に関する内容でした。
参照)2022年の監査人の交代も高水準!異動理由は監査報酬の見直しが3分の2!
今回は、公認会計士・監査審査会(以下CPAAOB)が7月15日に公表した2022年版の「モニタリングレポート」をご紹介します。
当該モニタリングレポートでの会計監査人の異動件数の集計は、2021年7月から2022年6月までの1年間となっています。
会計監査人の異動状況
会計監査人の異動件数は、2021年7月からの1年間において合併を除くと228件。前年同期より21件増加し、過去5年間で最多となったとのこと。
監査法人の規模別では、大手から移動する傾向が継続とし、
大手は△140件、準大手は+31件、中小は+109件の純増減となったとのことです。
2022年3月末の上場国内会社数における監査事務所の規模別シェア
中小監査事務所が過去5年間で初めて全体の20%を超え、監査の担い手としての役割が増大しています。
大手・準大手・中小の各シェアは、
・大手63.8%(前年67.5%)
・準大手15.7%(前年14.1%)
・中小20.5%(前年18.4%)
この結果に対しCPAAOBは、中所監査事務所に対する検査で、業務実施態勢が十分でないものも見受けられるため「監査品質の維持・向上が喫緊の課題」として、中小への検査をより重視した運用を行う方針を示しています。
会計監査人の異動理由
「監査報酬」と「監査対応と監査報酬」の2つで全体の半数以上を占めています。
監査人の異動に伴い監査報酬が減少した事例は昨年より約6割増加。異動前後の監査報酬が公表されている198件中123件にのぼる。特に大手から中小へ異動した約8割で監査報酬が減少しています。
CPAAOBの監査事務所の総合評価で勧告に該当するのは3件増加
CPAAOBの検査結果を踏まえ、監査事務所の業務運営の状況を5段階で示す「総合評価の状況」は図表の通り
区分(総合評価) | 大手監査法人
準大手監査法人 |
中小監査事務所 |
良好である | - | - |
概ね良好である | 4 | 3 |
良好であるとは認められない | 5 | 6 |
良好でない | - | 6 |
著しく不当 | - | 8 |
※モニタリングレポートを基に作成
「良好である」に該当する監査事務所は0だったほか、金融庁長官に勧告を行う「著しく不当」は、2021年7月からの1年間で前期に比べ3件増加しています。
「総合評価の低い中小規模監査事務所においては、法人トップの品質管理に対する意識が十分でない状況がみられるほか、社員及び職員において、会計・監査をめぐる最近の環境変化の認識や現行の監査基準が求める水準の理解が不足している状況がみられている。」とモニタリングレポートでは記載されています。
おわりに
当事務所の前回のブログでも記載していますが、会計監査人の異動のトレンドが大手から準大手・中小へ(個人の公認会計士事務所の共同監査を含む)の波が年々高くなっている状況です。
この背景には、公認会計士業界の人手不足と監査工数の増加に伴う監査報酬の値上げがあり、監査報酬の値上げを抑えたい上場企業が中小監査事務所へ会計監査人を変更し、一方で中小監査事務所は、品質管理を整える時間のない状況で大手から流れる上場企業の監査を引き受けるためCPAAOBの総合評価は低くなるという循環に陥っていると言えます。
しかし、中小監査事務所においてCPAAOBが求める水準の品質管理を整えると間接経費が増加し、現状の値下げした監査報酬では監査を受けられないという矛盾が生じることになります。
さて、この状況がどこまで続くのか、今後2,3年の推移を見守りたいと思っています。
※CPAAOBのモニタリングレポートの詳細については以下リング参照
「令和4年版モニタリングレポート」の公表について (fsa.go.jp)
以上
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