最新の会計監査人の異動(監査契約辞退:公認会計士等が会社を選ぶ時代へ)

公認会計士02

はじめに

最近は大手監査法人から準大手監査法人や中小監査事務所まで幅広く、監査工数の増加と公認会計士の人員不足による監査報酬の値上げが継続しています。

この値上げに耐えられなくなった被監査会社はより小規模な監査法人へ会計監査人を移動する流れが一般化してきました。

会計監査人の異動を発表(どちらも会計監査人から監査契約辞退の申し出)

1.2021年12月期において、債務超過となっているピート・ホールディングス・リミテッド(東証スタンダード)は、4月7日、史彩監査法人の退任と監査法人アリアの就任を公表しました。

同社は、史彩監査法人から監査工数の大幅な増大および人員不足を理由とした監査業務辞退の申し出を受け、新たな監査人を探す必要性に迫られたようです。

表向きには、「監査品質および監査報酬の観点から見直しを検討した」と発表していますが、史彩監査法人の辞退を受け、より監査報酬の安い監査法人へ変更せざるを得なかったのではないかと推察できます。

2.コンバム(東証スタンダード)は4月6日、監査法人アリアを一時会計監査人として選任することを公表しました。

同社は、前任の東陽監査法人から、「監査工数の増加等を理由とした監査契約を継続しない」旨の申し出を受理。後任の会計監査人の検討を行っていました。今回、建前では「事業規模に適した効率的かつ効果的な監査が受けられる観点等から監査法人アリアを一時会計監査人に選任した。」と公表しています。

こちらも、監査報酬の値上げを拒んだ等の結果、東陽監査法人から監査契約を継続しないと通知され、新規の監査法人探しに奔走した結果ではないでしょうか。

3.ジー・スリー・ホールディングス(東証スタンダード)は、4月12日、監査法人アリアを一時会計監査人に選任することを公表しました。

同社は、「赤坂有限責任監査法人より、第11期事業年度(自2020年9月1日 至2021年8月31日) に係る会社法第396条第1項前段に基づく会計監査業務終了の時をもって会計監査人を辞任により退任する旨の通知を受けておりましたが、本日付けで同会計監査業務が終了したため、赤坂有限責任監査法人は当社の会計監査人を退任いたしました。」と公表しています。

かなり複雑な事情があるようですね。過去5年間の有価証券報告書等の訂正を行っています。

当事者の監査法人の概要

東陽監査法人(準大手監査法人)→上場会社担当会社数81社

史彩監査法人(中小監査事務所)→上場会社担当会社数4社

赤坂有限責任監査法人(中小監査事務所)→上場会社担当会社数10社

監査法人アリア(中小監査事務所)→上場会社担当会社数15社

上記は、2022年4月時点ですが、先にご紹介した3件の会計監査人の異動はすべてアリア監査法人が選任されています。更に、4月1日公表の株式会社和心(東証マザーズ)も監査法人銀河が退任し、監査法人アリアが一時会計監査人に選任されていますので、4月だけで少なくとも監査法人アリアのクライアントは4社増加していることになります。

 そのことが一体何を表しているのか?詳細は、当事者のみ知り得ることですが、「監査工数の増加と公認会計士の人員不足による監査報酬の増加」が原因の一つであることは間違いないと言えるのではないでしょうか。

おわりに

会計監査人の異動について、今回は3社を取り上げましたが、これは一部であり、実は4月だけで上場会社の会計監査人の異動は、先週末時点(4月22日)で22社となっています。

それら異動の理由について最も多いのは、「監査工数の増加と公認会計士の人員不足による監査報酬の増加」が原因です。

今後も、同様の理由により会計監査人の異動が頻発することが予想され、監査報酬の増加により、監査報酬を支払えない企業は監査を受けられないという事態が発生するかもしれません。

法定監査を受けなければならない会社等では、増大する監査報酬を払える金銭面の余裕が必要な時代が来たと言えるのではないでしょうか。また、会計監査人を会社等が選ぶ時代から会計監査人が会社等を選ぶ時代に転換したと言えるのかもしれません。

以上

横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く法定監査・任意監査に特化した監査事務所です。

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