公認会計士の監査に関する品質管理基準の改訂(監査報酬は今後も値上げか!)

監査現場9 3

日本における監査の品質管理における動向

●2001年12月 エンロン事件

→ 2002年7月 米・企業改革法(サーベンス=オクスリー法)に基づき公開会社会計監督委員会(PCAOB)を設立

●2004年4月 公認会計士・監査審査会発足

→日本公認会計士協会による品質管理レビューの法制度化(1998年~2003年は自主規制機関として実施)

●2005年10月 「監査に関する品質管理基準」策定(企業会計審議会)

●2006年5月 中央青山監査法人に対する業務停止命令

(カネボウ(株)の財務書類に対する虚偽証明)

●2012年7月 有限責任 あずさ監査法人、新日本有限責任監査法人に対する業務改善命令(オリンパス(株)に対する監査証明業務について、業務の運営が著しく不当)

●2013年3月 「監査における不正リスク対応基準」策定(企業会計審議会)

●2015年12月 新日本有限責任監査法人に対する一部業務停止命令、2016年1月 課徴金納付命令((株)東芝の財務書類に対する虚偽証明)

●2016年3月 「『会計監査の在り方に関する懇談会』提言 -会計監査の信頼性確保のために-」公表(金融庁)「公認会計士・監査審査会検査の実効性の向上~大規模監査法人を中心に~」公表 (公認会計士・監査審査会)

●2017年3月 「監査法人のガバナンス・コード」策定(金融庁)

7月 「監査法人のローテーション制度に関する調査報告(第一次報告)」(金融庁)

●2018年 7月 「監査上の主要な検討事項(KAM)」の導入(2021年3月期決算より全面適用)(企業会計審議会)

●2019年1月 「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」報告書公表(金融庁)

9月 監査報告書における限定付適正意見の根拠の記載の充実(企業会計審議会)

10月 「監査法人のローテーション制度に関する調査報告(第二次報告)」(金融庁)

●2021年 11月 「監査に関する品質管理基準」の改訂(企業会計審議会)

監査における品質管理のポイント

1.監査契約の締結

独立性等の確認

監査事務所の規模及び組織、監査実施者の能力・経験等を踏まえた監査契約の可否の判断

2.監査計画の策定

能力・経験・独立性・監査時間の確保等を勘案した監査実施者の選任

3.監査業務の実施

監査に必要な情報・技法の蓄積及び伝達 ○監査実施者への適切な指示及び指導 ○十分な監査証拠の入手、監査調書の適切な作成 ○専門的な見解の問い合わせ

4.監査業務に係る審査

企業の状況に応じた適切な審査の実施 ○知識、経験、能力、独立性等を勘案した審査の担当者の選任 ○審査内容の記録・保存

5.監査報告書の発行

監査上の判断の相違の解決など必要な監査業務の終了の確認

6.監査事務所間の引継

前任監査事務所から後任監査事務所への適切な引継 ○重要な虚偽の表示に係る情報等の伝達

■品質管理体制の監視

品質管理体制に関する日常的監視、監査業務の定期的検証 ○監査事務所内外からもたらされる情報への適切な対処

改訂品質管理基準の概要

改訂品質管理基準では、品質管理システムの項目(品質管理基準五~十、十四)ごとに、①品質目標の設定、②品質リスクの識別・評価、③当該リスクに対する対応の整備が求められ(リスク評価プロセス(品質管理基準四))、リスクに基づくアプローチ

(risk-based approach)が組み込まれている。

リスク・アプローチに基づく品質管理システムは、当該監査事務所が実施する業務の内容や監査事務所の状況によって変化しうるものである 。

上場会社等の監査を行う監査事務所については、 監査業務の公益性に鑑み、充実した品質管理システムの整備及び運用が求められる。

監査事務所の品質管理体制や、年1回行う自事務所の品質管理の評価結果等について、十分な透明性を確保すること【十 情報と伝達】

監査事務所及び所属するネットワークが提供している非監査業務が独立性に与える影響を考慮し、独立性の評価項目とすること【六 職業倫理及び独立性】

監査事務所間の引継に関する手続の強化(後任に対する虚偽表示等に関する情報の伝達や、前任に対する交代理由等の問合せに関する方針又は手続の遵守)【十四 監査事務所間の引継】

監査事務所のリスク評価プロセス

監査事務所の主体的な品質管理を可能とするため、監査事務所に対し、品質管理システムの項目(品質管理基準五~十、十四)ごとに、品質目標を設定し、当該品質目標の達成を阻害しうる品質リスクを識別して評価を行い、評価した品質リスクに対処するための方針又は手続を定め、実施することを求めることとした。

監査事務所は、改訂品質管理基準に規定されている品質目標に加え、監査事務所が実施する業務の内容や監査事務所の状況を考慮して必要と考える場合には、追加の品質目標を設定することを求めることとした。

職業倫理及び独立性

監査実施の責任者及び監査業務に従事する補助者を監査チームと定義し、補助者には、監査事務所及び監査事務所が所属するネットワークの内外の者で、個々の監査業務において、監査手続を実施する者が含まれることを明記。(基準一 目的 注)

これを踏まえ、監査事務所に対し、監査事務所の内部の者や同一ネットワーク・ファームに所属する者だけでなく、監査事務所等の外部の者による職業倫理の遵守及び独立性の保持を、品質目標として設定することを求めている。

監査事務所は、独立性の保持に関する品質目標については、監査事務所及び当該監査事務所が所属するネットワークに属する他の事務所が提供する非監査業務が独立性に与える影響を考慮しなければならない。

監査契約の新規の締結及び更新

監査事務所に対し、契約の新規の締結・更新時において、企業の誠実性や監査事務所の能力等に基づいて判断することに加え、財務上・業務上の目的を優先して不適切な判断をしないようにすることを、品質目標として設定することを求めている。

監査事務所間の引継

監査事務所に対し、監査人の交代が監査業務の質に重大な影響を及ぼさないようにするために、後任の監査事務所への引継及び前任の監査事務所からの引継に関する品質目標を設定することを求めている。

監査実施の責任者に対し、実施した引継の状況を適切な部署又は者に報告することを求めている。

品質管理システムの評価

改訂後の品質管理基準では、品質管理システムについて、監査事務所の品質管理システムに関する最高責任者に対し、少なくとも年に一度、基準日を定めて品質管理システムを評価し、当該システムの目的が達成されているという合理的な保証を監査事務所に提供しているかを結論付けること求めている。

最後に

(「監査に関する品質管理基準の改訂に係る意見書」の前文から抜粋)

改訂品質管理基準の実施に当たっては、品質管理基準の改訂内容について円滑な導入が図られるよう、特に中小規模監査事務所に対し、基準改訂の趣旨と内容に関する周知が徹底され、中長期的な観点から必要な支援が行われることが重要である。その際、日本公認会計士協会においては、自主規制機関として、監査事務所に対し、実践的

で有用な支援を行うとともに、品質管理レビュー等を通じて、指導的な役割を果たすべきである。また、行政当局においては、監査事務所や日本公認会計士協会の取組を支援しつつ、審査会の検査等を通じて、監査事務所による主体的な品質管理の定着に努めるべきである。

監査事務所の性質及び状況を考慮した、リスク・アプローチによる品質管理システムの整備及び運用が適切に行われるためには、監査事務所における主体的なモニタリング及び改善プロセスに加え、日本公認会計士協会の品質管理レビューや審査会による検査等の第三者によるチェックを通じた改善が実施されるべきである。

今般の品質管理基準の改訂を受け、引き続き、関係者によって、より質の高い監査の実施を可能とする環境の整備や監査業務の魅力向上について、検討が行われることが期待される。

上場会社の監査において、品質管理は益々その重要性が増しており、今後も毎年、監査報酬の値上げが行われることでしょう。

非上場会社のおいては、益々個人の公認会計士事務所への変更・会計監査人の交代を検討すべきであると断言します。

横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く法定監査・任意監査に特化した監査事務所です。

上場会社を監査している監査法人等と比較し、費用面を抑えて実質的な監査を行うことを基本方針にしています。効率性の高い柔軟な会計監査を行うことが可能です。

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