監査した計算書類を含む開示書類のその他の記載内容への会計監査人の責任
はじめに
新型コロナウイルス感染症の陽性者は、緊急事態宣言の解除後も順調に減少しています。
第6派が来ずに、このまま収束に向かうのでしょうか。それとも欧米やロシアの感染者は拡大していることから、年末に向けて第6派が来るのでしょうか。判断が難しい現状です。
【監基報720等の改正】
2021年1月14日付けで公表された監基報720「監査した財務諸表が含まれる開示書類におけるその他の記載内容に関連する監査人の責任」(以下「監基報 720」という。)等の改正が行われました。
改正後の名称:監基報720「その他の記載内容に関連する監査人の責任」
「その他の記載内容」とは、会社法監査において、事業報告及びその附属明細書となります。
事業報告及びその附属明細書は、会計監査人の監査対象ではない点は従来と同様ですが、改正監基報720では監査人は監査意見を表明しない場合を除き、「その他の記載内容」に対する作業の結果を監査報告書に記載しなければならないこととなります。
【改正の概要】
本改正は、2020年11月改訂監査基準の内容を反映させることを目的として行われたものです。
(従来の取扱から変更となる点)
①「その他の記載内容」の特定及び入手に関し、次の対応が求められている(監基報720第12項)。
・経営者との協議を通じて、年次報告書(事業報告書等)を構成する文書並びにその発行方法及び発行時期の予定を特定する。
・年次報告書を構成する文書の最終版を、適時に、また可能であれば監査報告書日より前に入手するために、経営者と適切な調整を行う。
・特定された文書の一部又は全てを監査報告書日までに入手できない場合、要求される手続を完了できるようにするため、経営者に対し、企業が当該文書を発行する前に最終版の提供が可能となった時点で監査人に提供する旨を経営者確認書に含めるよう要請する。
②「その他の記載内容」と財務諸表との間に重要な相違があるかどうかを検討するに当たって、実施する手続の例が示されている(監基報720第13項(1))。
計算書類(以下財務諸表)との整合性を評価する「その他の記載内容」を職業的専門家の判断に基づき選択し、
・財務諸表と比較する。
・財務諸表との調整を検討する。
・財務諸表に開示された文言と比較し、相違の重要性及び当該相違により意味が異なるかどうかを検討する。
③財務諸表又は監査人が監査の過程で得た知識に関連しない「その他の記載内容」について、重要な誤りがあると思われる兆候に注意を払った結果、重要な相違又は重要な誤りがあると思われる場合に、経営者に「その他の記載内容」の修正を要請する等の対応が求められている(監基報720第14項~第19項、第A50項)。
④「その他の記載内容」と監査人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうかを検討するに際して、次の項目の例が示されています(監基報720第13項(2))。
(監査人が監査の過程で得た知識と関連する数値又は数値以外の項目)
・生産量、受注量又は販売量
・主要な事業拠点の要約
・事業環境及び展望に関する全般的な記述
(実施する手続き)
・経験豊富な監査人の認識と照らして検討
・(必要に応じて)関連する監査調書の参照
・(必要に応じて)監査チームのメンバー、構成単位の監査人への質問
⑤「その他の記載内容」に関する監査報告書の記載文例が示されている。
⑥本改正は、2022年3月31日以後終了する事業年度に係る監査から適用することとされている(ただし、2021年3月31日以後終了する事業 年度に係る監査から早期適用することも可)。
おわりに
2022年3月31日以後終了する事業年度の監査報告書には「その他の記載内容」の区分を設けて、その他の記載内容に関する記載が求められます。
監査報告書がますます長文化していくのが現状の流れでありますが、長文化により監査報告書を参考とする利害関係者は戸惑いが増えるのではないでしょうか。
監査報告書の冒頭には、「監査意見」が述べられています。この監査意見に監査の結論が述べられているわけですが、今後は更に「監査意見」だけをみて判断する読者が
増えるのではないかと少し危惧しています。
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