会計監査:リモートワーク環境下の決算・監査上の対応

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はじめに

昨日は東京で新たに新規感染者が340人となりました。首都圏の新規感染者は下げ止まりの状況です。3月7日の緊急事態宣言の解除後、新たに新規感染者が増加しないか、そもそも期限通りに解除できるのか疑問となってきます。

4月以降高齢者のワクチン接種が始まりますが、3月決算・監査を迎える4月、5月には落ち着いていることを願うばかりです。

このような状況下、リモートワークによる決算・監査が多くの会社等で行われる可能性が高くなっています。

日本公認会計士協会(JICPA)は、昨年10月から新施策「リモートワークの環境下における企業の業務及び決算・監査上の対応の検討」を進めています。企業側と監査人側の論点など計8つの項目を掲げ、昨年12月にはリモートワーク(RW)対応の留意事項を以下2本公表済みです。

第1号「電子的媒体または経路による確認に関する監査上の留意事項」

第2号「リモート棚卸立会の留意事項」

そして、今月2月12日に新たに留意事項等(3~5号)の文書3本を公表しました。

リモートワークに対応した提言・留意事項 | 日本公認会計士協会 (jicpa.or.jp)

新たなリモートワーク対応留意事項

2月12日に公表されたものは以下の3本です。

第3号「PDFに返還された証憑の真正性に関する留意事項」

第4号「構成単位等への往査が制限される場合の留意事項」

第5号「リモート会議及びリモート会議ツールの活用について」

新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、企業活動と共に監査業務においてもリモートワークの導入が進んできています。こうした状況は一過性のものではなく今後の継続が見込まれることから、JICPAはリモートワーク対応プロジェクトにおいて企業側と監査人側の論点などについて検討しています。

上記3号・4号はリモートワーク環境下における実務上の留意事項をまとめたもので「新たな要求事項儲けるものではない」としております。

リモートワーク対応第3号

第3号では、PDF化された監査証拠の評価における留意点をまとめたものとなっています。

PDF化された監査証拠とは「紙の文書等の原始文書を、電子情報等して表示、転送、保存のためにPDF変換した監査証拠」のことです。

まず監査人の要請によりPDF変換が行われる場合、返還作業が業務プロセスとしてルール化されていないとの想定のもと、入手したPDFと源泉となる情報との一致の確認やPDF変換に伴う改ざん、修正・落丁の有無を確認することになります。

一方、監査人の要請ではなく、被監査会社(企業)や被監査会社の取引先等外部が起点としてPDF変換を行う場合は、変換プロセス・手続の確認など運用面の評価手続き等を確認・検討することとなります。

リモートワーク対応第4号

第4号では、「我が国を含む世界各国の構成単位への往査が困難な場合が生じている」状況を踏まえ、「リモートワーク方式」による場合の留意事項を示しています。

ここに言う「構成単位」とは、監基報600第8項(9)において、 「グループ財務諸表に含まれる財務情報の作成単位となる、企業又はその他の事業単位をいう。」と定義しています。連結財務諸表を前提に、各子会社や重要な支店等のことです。

以下の項目について要点をまとめています。

①構成単位の財務情報に対する監査手続の実施~監査証拠に関する基本的な考え方

②構成単位の財務情報に対する監査手続及び構成単位の関人が実施する作業への関与

③構成単位の監査人とのコミュニケーションの内容や方法の見直し

②や③では、リモートワーク対応第3号・5号に触れながら留意点を上げているのであわせて確認してください。

リモートワーク対応第5号

第5号では、リモートワーク会議のリスクと対応策を例示しています。

公認会計士事務所がリモートワークを実施する際の情報漏洩リスクに着目して取りまとめたもので「Ⅰ.基本的な考えか」として3点示されています。

「主なリスク」として挙げているのは、以下の4分野です。

・利用方針

・リモート会議関連のリスクの洗い出し

・リモート会議ツール関連リスク

・リモート会議実施に係るリスク

おわりに

この3月決算は、特に上場会社では、リモートワークによる決算・監査が少なからず必要となるでしょう。JICPAが検討し公表している又は今後公表する留意事項を参考にしながら無事に効率的かつ十分な決算・監査が行われることを願っています。

横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く会計監査に特化した監査事務所です。

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