会社法監査の最新の監査報酬平均額の現状(監査報酬見直しのご参考)
はじめに
先週の3連休前、首都圏1都3県に2度目の緊急事態宣言が発令されました。そして、今日にも明日1月14日より近畿2府1県に加えて東海の2件を含む合計7府県に緊急事態宣言が発令されるようです。このような現状、我々の会計監査のオンライン化が推進されています。監査の繁忙期4,5月には事態が収拾し、通常の監査が行われることを祈っていますが、オンライン化も並走して進めていければ効率的な監査が可能ではないかと考えます。
ところで、2020年12月14日に日本公認会計士協会(JICPA)より、「監査実施状況調査2019年度」が公表されました。これは2019年度(2019年4月期から2020年3月期に係る被監査会社等の監査実施状況)について、監査に関与する者の人数、監査時間や監査報酬額を客観的にまとめた資料です。
毎年11月に最新版が公表されていましたが、JICPAによると昨年は、「新型コロナウイルス(COVID-19)による監査概要書(写)及び監査実施報告書の提出期限延長の影響も考慮し、10月末日まで(前回は9月末日まで)に協会に提出されたものを集計対象とした。」ということで先月半ばに公表されました。
※監査実施状況調査にて記載されている監査時間は監査人が協会に提出する監査実施報告書に記載に沿って報告したものであり、総時間数が記載されていますが、わかりやすくするために総時間数を8時間/日で割って日数に換算しています。現場により多少の誤差はあるでしょうが、各現場を知っている方はその点ご理解し、各会社等の現状に合わせてご自分の会社等の日数と比較してください。
会社法監査実施状況(売上規模別)
売上規模別の会社数、監査日数、平均の監査報酬は以下の通りです。なお、1,000億円以上は省略しています。
(売上高) (会社数) (監査日数) (平均監査報酬)
10億円未満 875社 41日 4,141千円
50億円未満※ 1,061社 67日 6,571千円
100億円未満 601社 83日 8,183千円
500億円未満 1,842社 124日 12,263千円
1000億円未満 736社 166日 16.750千円
※50億円未満は10億円以上50億円未満、以下同じく100億円未満は50億円以上100億円未満
会社法監査実施状況(負債総額別)
負債総額別の会社数、監査日数、平均の監査報酬は以下の通りです。なお、500億円以上は省略しています。
(負債総額) (会社数) (監査日数) (平均監査報酬)
250億円未満※ 183社 99日 9,764千円
300億円未満※ 203社 109日 10,467千円
400億円未満 191社 105日 11,107千円
500億円未満 123社 116日 11,614千円
※250億円未満とは200億円以上250億円未満、300億円未満は250億円以上300億円未満、以下同じ。
おわりに
以上が、売上高の規模別、負債総額別の監査報酬の現状です。
会社法監査で、売上高が10億円未満の会社が全国に875社もあるのは少し驚きですね。おそらく、ホールディングカンパニーで、複数の子会社が実際には営業を行い、経営指導料収入のみ売上に計上している会社や、不動産賃貸業でそれほど規模が大きくはないが、不動産購入のために資本金が5億円以上あるため法定監査の対象となっている会社などが多いのではないでしょうか。
上記、平均監査報酬をご覧になって、自社の監査報酬と比較し高いと感じられる方、そんなものかと感じられる方、安いと感じられる方、それぞれだと思いますが、安いと感じられている方はおそらく大手の監査法人が監査を行っているのではないでしょうか。逆に、高いと感じられる方の会社は中堅以下の監査法人や個人の公認会計士が監査されているのではないでしょうか。
監査報酬の高低は、高い順に並べると
大手監査法人、準大手監査法人、中堅監査法人、中小監査事務所及び個人の公認会計士事務所
以上となります。
一部例外的に監査の品質に問題のある個人事務所や監査法人は確かに存在します。それらの監査事務所は、十分な監査証拠も入手せず、必要最低限の手続きだけ行って低価格にて監査報告書を発行するような事務所です。そのような事務所は被監査会社がマスコミでも取り上げるような社会的な問題をおこして初めて発覚するものです。
そのような例外を除き、監査事務所の規模が大きくなるほど監査報酬が高くなるのは簡単な話です。共通費(間接費)が増加するからです。事務職員を増やし、都心の一等地に事務所を構え、また海外子会社への対応のため海外の大手会計事務所と提携し、提携料を支払うからです。
海外展開している会社の場合は、大手監査事務所に監査を依頼するしかないのが実情です。逆に、国内事業のみで規模も中小規模の会社は、ブランドだけで大手監査事務所を選ぶべきではないと私は切に考えます。社長がブランド志向で監査報酬の高低など気にしないような会社は名の知れた大手監査法人でよいでしょう。しかし、報酬に見合った品質の監査を求める会社は中小監査事務所の中から信頼できる監査事務所を選ぶのがベストの選択であると断言できます。
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