そもそも公認会計士監査とは!税理士事務所の巡回監査との違い
はじめに
昨日12月17日新型コロナウイルス感染症の1日当たりの感染者が過去最高を更新しました。東京での感染者は822人となり、医療体制がひっ迫してきているようです。しかし、世の中には4月の緊急事態宣言時のような緊張感が無いように感じるのですがみなさんはどう感じられますか?とにかく、私は来週も含め、人との接触はなるべく控え、年末年始は静かに過ごそうと思っています。
ところで本題ですが、みなさんの中には、経理で働かれて、顧問税理士が以前から居て、顧問税理による巡回監査なるものを毎月受けておられる方も中にはおられると思います。規模の大きい税理士法人などは、経営者や役員は税理士資格を持っているけれど、各顧問先の担当は無資格や税理士試験勉強中の従業員が行う形態をとっている会計事務所は普通によくあるのが実情です。
なぜ、そのように無資格者が各顧問先の担当を行うかは明らかです。会計事務所を経営するにあたって、すべて税理士資格者が各顧問先を担当すれば給料が高くなり、顧問料をアップさせなければ経営が成り立たないからです。顧問料をアップさせれば、顧問先を他の会計事務所に奪われる危険性が高まります。主として無資格者が税務の顧問先の月次の決算処理を指導したりチェックしたり月次の締めの作業まで行ったり、決算時には決算作業の打ち合わせなどと言って決算業務に係るのは通常の税理士業務であり、「監査」という言葉を使う意味を私は理解できません。巡回監査という言葉がありますが、監査ではなくあくまで税務業務の一環です。
巡回監査とは
以下、『TKC会計人に行動基準書』より
巡回監査とは、税務顧問先を毎月及び期末決算時に巡回し、会計資料並びに会計記録の適法性、正確性及び適時性を確保するため、会計事実の真実性、実在性、網羅性を確かめ、かつ指導することである。巡回監査においては、経営方針の健全性の吟味に努めるものとする。
巡回監査は、毎月行う月次巡回監査と期末決算時に行う決算巡回監査とに分けられる。
そして巡回監査というものの手順は以下だそうです。
①月次入力の完了後、監査担当者が訪問します 。
②何かいつもと変わったことはないか、全体的な数値がどうなっているか確認します。
③証憑書類(請求書や領収証)と会計記録を突合し、正しく入力が行われているか確認します。
④修正すべきところがあれば、訂正事項一覧を出して経理担当者自らに仕訳の修正を行っていただきます。
⑤修正後の数値で、経営者や経理担当者と業績の確認を行い、前期と比べてどうだったか、予算と比べてどうだったかを確認します。
⑥その他、経営におけるお悩みごとの相談や当事務所からの提案等を行います。
⑦確認後月次の締め(確定処理)を行います。
⑧翌月の訪問日程を決めて巡回監査は終了です。
公認会計士から言わせてもらうと、監査ではなく税務の業務であり、上記⑤,⑥については経営分析や相談の要素がありますが、あくまで税務業務の範疇であるのは間違いありません。
それでは、公認会計士の監査はどうでしょうか。
公認会計士監査とは
資本市場に参加する企業は、投資家に経営内容を伝えるために財務情報を公開します。これを情報公開(ディスクロージャー)と言います。このとき経営者は、正しい情報を説明する責任(アカウンタビリティ)を負っていますが、自ら作った情報の正しさを自らが証明することはできません。そこで企業は、独立した第三者に証明を依頼します。この独立した第三者が公認会計士であり、公認会計士が判断するために行う検証を「監査」と言います。監査の結果は、「監査報告書」として企業に提出されます。
公認会計士監査は、その内容を検証して、「適正」か「不適正」かを判断した結果を報告するという意味で、保証業務であるといわれています。金融商品取引法では、すべての上場会社に公認会計士監査を義務付けています。公認会計士が企業の財務情報を検証し、その正しさを保証することによって、投資家は安心して投資活動を行うことが可能になるのです。
また、法令等で監査が義務付けられているのは上場企業だけではありません。学校法人、独立行政法人、社会福祉法人、医療法人など、その財務諸表の適正性を保証することが求められている事業体や団体等は、それぞれの法令等で監査が義務付けられています。
このように公認会計士監査は、公共の利益を擁護するためにさまざまなところで機能しています。
以上のように公認会計士監査は独立した第三者である公認会計士が財務情報を検証し、その財務情報の正しさを保証することで投資家を保護するために、法令等で監査が義務付けられている組織に対して監査を実施し、その結果を財務情報利用者に報告することにあります。
相違点
税理士事務所等の巡回監査と公認会計士の監査の相違点は、前者が顧問先のためだけに行う財務情報作成及び経営アドバイスであるのに対して、後者の公認会計士の監査は、財務情報利用者のために財務情報が適正かそうでないか、財務情報をそのまま利用しても良いのかについて結果を報告する保証業務であるところです。
簡単に言うと、税理士の業務は経営者のために、経営者サイドに立って行う業務であり、公認会計士の監査は、経営者が作成する財務情報が正しいかどうかについて保証する業務であるということです。
わかっていただけたでしょうか。上場会社の経理担当者の方はその違いはかなり判っていただいていますが、それ以外の医療法人等の経理の担当者の方はあまりその違いを分かっていただいていない方も多く、税理士の巡回監査の方を重視し、公認会計士監査を重視しない(教えてくれず指摘ばかりする)という現実もあるのが実情です。
おわりに
巡回監査という言葉の、「監査」に惑わされないでください。
ウィキペディアでは、監査は以下のように記載されています。
監査(かんさ、audit または auditing)とは、ある事象・対象に関し、遵守すべき法令や社内規程などの規準に照らして、業務や成果物がそれらに則っているかどうかの証拠を収集し、その証拠に基づいて、監査対象の有効性を利害関係者に合理的に保証すること。
税理士事務所の巡回監査には、利害関係者に保証するという意味合いがまったくありませんので、私も税理士としての立場で考えると、税理士業務で監査という言葉を使うべきではないと思っています。
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