最近の学校法人会計・公認会計士の会計監査の動向

サムネイル

はじめに

11月第2週の火曜日、コロナの感染状況については、北海道が200名を超える感染者が毎日のように発表され、GoToトラベルの対象から外れるという議論まで出てきています。一方でアメリカの次期大統領がほぼバイデン氏に決まり、アメリカが国際協調へ転換する方向性や新型コロナのワクチンの開発をファイザー社が進めているという前向きなニュースで日米の株式市場は大幅に上昇しています。日経平均株価は一時2万5千円を超え、バブル後の高値を更新しています。

このような中、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

今回は、昨年の監査基準の改定を踏まえて公認会計士の監査報告書の文例が大幅に変更となっておりますので、どのように変更になっているのかを中心に説明したいと思います。

監査報告書の新様式の文例

2018 年7月監査基準の改訂及び2019 年9月監査基準の改訂に伴い、学校法人等の計算書類に対する監査報告書の文例はどう変更されたのでしょうか。

■2018年7月5日付け及び2019年9月3日付けで企業会計審議会から 「監査基準の改訂に関する意見書」が公表され、関連する監査基準委員会報告書が改正されたことを踏まえ、日本公認会計士協会(学校法人委員会)は、次の表のとおり実務指針等の改正を実施又は予定しています。

(実務指針等の名称)               (改正状況)

・学校法人委員会実務指針第36号          2019/9/17

「私立学校振興助成法 第14条第3項の         2020/4/9

規定に基づく監査の取扱い」

(以下 「実務指針第36号」という。)

・学校法人委員会研究報告第32号          2019/9/17       

「施設型給付費を受ける幼稚園のみを

設置する学校法人等の監査上の留意事項及び

監査報告書の文例」(以下「研究報告第32号」 という。)

学校法人委員会報告第43号           今後改正予定

「有価証券発行学校法人監査における

監査報告書及び理事者確認書について」

■監査報告書について、次のとおり記載順序の変更や区分の新設等が行われています。

【監査報告書の記載順序と新区分】     

独立監査人の監査報告書

                   利用者にとって関心の高い情報から記載

監査意見               ●監査意見を監査報告書の冒頭に記載

監査意見の根拠            ●監査意見の根拠区分の新設

                    ・我が国において一般に公正妥当と

継続法人の前提に関する重要な不確実性   認められる監査の基準に準拠して

(該当する場合)             監査を実施した旨

                    ・我が国における職業倫理に関する

追記情報(強調事項又はその他の事項)   規程に従って、会社から独立して

(該当事項がある場合)          おり、またその他の倫理上の責任を

                     果たしている旨

計算書類に対する理事者及び監事の責任  ・意見表明の基礎となる十分かつ適切

                     な監査証拠を入手した旨

計算書類の監査における監査人の責任  ●継続法人の前提に関する重要な不確実

                    性区分の新設

■「計算書類に対する理事者の責任」の区分が、「計算書類に対する理事者及び監事の責任」の区分に変更され、理事者の責任に、継続法人の前提に関する評価責任が追加されています。監事は、財務報告プロセスの整備及び運用における理事の業務執行の状況を監視する責任を有している旨、記載するとされています。

■計算書類の監査における監査人の責任の区分において、記載内容の拡充が図られています。

・重要性の概念の説明

・監査の過程を通じて職業的専門家としての判断を行い、職業的懐疑心を保持すること

・不正又は誤謬による財務諸表の重要な虚偽表示リスクを識別・評価し、対応 した監査手続を立案・実施すること

・継続法人の前提の評価

・計算書類の表示及び注記事項の検討

・監事に対して、監査計画や監査上の重要な発見事項等の報告を行うこと

■継続法人の前提について、学校法人会計基準では明文の規定はないが、本改正では以下の点が明確化されています。これに関しては別途研究報告を公表しています。

・継続法人の前提に関する事項を記載する必要があると学校法人が判断した場合には、学校法人会計基準第34条第8項の規定に従い、 「その他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項」として注記する。

・学校法人が計算書類に注記を記載している場合には、監査人は、監査報告書の「監査意見の根拠」の次に「継続法人の前提に関する重 要な不確実性」という見出しを付した区分を設け、継続法人に関する事項を記載する。

■監査上の主要な検討事項(KAM)は、法令によって求められていない。 ただし、任意で報告することを契約条件によって合意して記載することは可能とされています。

■なお、2019年9月監査基準の改訂により、除外事項を付した限定付適正意見を表明する場合に、限定付適正意見とした理由についても記載が必要であることが明確化されたことを受けて、除外事項付意見の文例の見直し等がなされたほか、一部の記載の見直しが行われています。

■本改正は、2020年3月31日をもって終了する会計年度に係る監査から適用とされています。

おわりに

当該改正は、前期の監査報告書(今年5月又は6月発行)から行われています。今までのような監査報告書が一枚から2枚へと記載事項が増えています。

学校法人で監査報告書を受領した方々はすでに受領していると思われますが、要は利用者にとって関心の高い情報から記載するようになり、冒頭の監査意見を見れば監査結果が一目瞭然となるようになっています。

学校法人を含め、会計監査人の変更を考えておられる法人等の担当者の方、または新規に会計監査人をお探しの方は、横田公認会計士事務所までご依頼・ご相談ください。

問い合わせフォーム(24時間年中無休)、電話にてのご連絡は平日10時~17時、直接メールにても相談を受け付けております。

メールアドレスはホームページの10月12日のお知らせにて記載しておりますのでご連絡ください。