会計監査における会計不正の特徴
はじめに
不正は人間の弱さの証明であり、それはなくなることはありません。 人間の弱さに組織の弱さが加わったとき、不正が発生します。 不正の機会を与えないためには、内部統制の強化が重要となります。
不正対応に対する社会的要請の高まり、IT化、AIの進歩を背景として、監査環境の変化に対応して、従来の監査のあり方を大きく変えていかなければならなくなっています。
不正の手口の内容
1. 自己決裁
決裁権限者自らが不正を実施、ないし不正に加担することで、職責に期待される牽制機能を無効化する手法。 取引は実在し、決裁履歴も存在するため不正かどうかの判定が困難。
2. 架空資産(在庫過大計上を含む)
実際には存在しない資産、または価値のない資産について、伝票や証憑を改竄し、資産が存在する、ないしは 価値があるかのように処理する方法。
3. 循環取引
複数の取引先が互いに共謀し、商品の転売や業務委託などの相互発注を繰り返すことで、架空の売上高を計上する取引手法。すべての証憑がそろっているため、通常の取引と区別するのは非常に困難。
4. 簿外債務
会社が負担すべき債務について、帳簿に計上しなかったり、本来計上するべきタイミングよりも遅いタイミン グで負債を計上する手法。
5. 原価付替(費用繰延を含む)
実際に発生した原価や費用について、費用認識するタイミングを意図的に操作する手法。原価や費用の配賦過程を再チェックすることで発見が可能であるが、複雑な計算過程の中で行われた場合は、発見が困難となる
6. 在庫横領
帳簿や伝票を改竄することや、通常起こりうるロスの中に紛れ込ませることで、不正の実施者が在庫を横領した事実を隠ぺいする手法。
7. 架空取引(架空売上・架空仕入・架空経費)
取引実態がないにもかかわらず、伝票や証憑を改竄し、取引が実際に存在したかのように処理を行う手法。改竄は、内部証憑だけでなく、外部証憑に対しても行われることがあり、改竄の範囲・程度により発見の難度が変わる。
おわりに
不正は内部統制が有効に機能している領域では発生しません。
不正伝票の自己承認や取引先との結託による証憑偽造といった内部統制の無効化が行われる場合や仕入価格の妥当性評価や不可視在庫の現物確認が難しいケースなど内部統制の盲点を突く場合、子会社や営業所等で兼務が多いためそもそも内部統制が未整備である場合にその領域で発生するものです。
また、そもそも内部統制の枠外にある経営者による不正の場合は特別です。世の中を騒がした東芝の不適切会計問題など経営者による不正の場合、我々公認会計士の監査でも発見が困難となるケースもあります。
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