公認会計士は監査と会計の専門家:では専門家とは?
はじめに
新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う対応で、我々は1年前には想像もできなかった事態の中にいます。
この経験を通じて、私たちに日常生活や働き方、中央政府と地方政府の役割など、改めて考えさせられることが多かったと皆さん思われているでしょう。今回は、その中で専門家の役割について考えてみたいと思います。
専門家会議
新型コロナウイルスへの対応をめぐる政府の方針の決定とそれに関する専門家の関与に関して、3月中旬以降、新型コロナウィルス感染症対策専門家会議(以下「専門家会議」)の終了後、そのメンバーが政府とは別に記者会見を行い、それが大きく報じられたことなどを通じて、「専門家会議が感染症対策を決めている」との印象を与えたのではないでしょうか。専門家会議のメンバー自身もこの点を振り返ったうえで、「次の感染拡大に備えた専門家助言組織のあり方」について提言を行っています。
会計監査の専門家としての公認会計士
公認会計士は、「監査と会計の専門家」であり、それ自身が専門家としての役割を担っています。公認会計士が行う様々なアドバイザリー業務は、組織の経営者に愛する助言であり、経営者に代わって意思決定するわけではありません。
また、高度な独立性が求められる会計監査業務においては、自己監査のリスクを避けるために、会計処理について、経営者が自らの責任において最終的に決定することが前提とされています。
しかし、経営危機等の非常時において、監査人の判断が被監査会社の経営者や利害関係者の意思決定に重要な影響を与えることが、監査人が経営破たんを決定付けたといったような印象を与えることも過去にはありました。
公認会計士が、専門家として、社会に対して自らの役割と判断をどのようにわかりやすく伝えるかは、依然として大きな課題といえるのではないでしょうか。
他の専門家の利用
会計監査業務では、会計や監査以外の分野の「専門家の業務の利用」を行うことが多々あります。その場合、一転して公認会計士は、他の専門家を利用する立場になります。
見積の要素が強くなった現在の会計制度で、会計監査業務では、保険数理、金融工学、情報工学などの様々な専門家が関与することが多くなっています。現在の会計監査制度の下では、監査人は表明した監査意見に単独で責任を負うこととなっています。他の専門家を利用するか否か、利用する専門家の能力や客観性などについて評価する責任を負っているのです。
おわりに
様々な専門家を利用する大規模な会社の会計監査の場合、様々な専門家の業務内容を理解し、活用できるだけの能力を公認会計士自身が身に着ける必要があります。専門家を適切に使うために公認会計士が直面する課題は大きいといえます。
当事務所では、比較的中小規模の会計監査を行っていますが、公認会計士として他の業務の専門家の意見を伺うことは大いにあります。例えば訴訟に関しては弁護士に、複雑な労務の事象については社労士になど、他の専門家の業務内容については日々理解するよう努めております。
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