労働組合の会計監査_公認会計士による外部監査が必要

監査現場②

外部の会計監査は必要か?

労働組合は、会計報告について会計監査人、すなわち、公認会計士又は監査法人による監査を受けることが義務付けられています。

根拠となる労働組合法第5条第2項第7号においては、以下のように定められています。

(労働組合法第5条第2項第7号)

すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況を示す会計報告は、組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年 1 回組合員に公表されること。

なお、特定独立行政法人等及び地方公営企業の職員で構成する労働組合に対しては、労働組合法の外部監査の規定が適用されます(労働組合監査における監査上の取扱い)。

さらに、国家公務員及び地方公務員の職業団体については、労働組合法が適用除外とされていますが、その職員団体が法人格を取得する場合は、公認会計士等、または信託会社の監査証明を受けることが必要とされています(同監査上の取扱い)。

監査現場②

監査を受けないとどうなる?

上記のように、労働組合法では、公認会計士による監査を受けることが義務付けられています。

税理士による監査証明は組合法が定める職業的に資格がある会計監査人による証明書ではありません。

では、公認会計士による監査を受けないと罰則はあるのでしょうか?
公認会計士による監査を受けなくとも、罰則規定は設けられていないものの、労働組合法上の手続きに参与し、救済を求める資格がないものとされています。(労働組合法5条1項)
​具体的には、下記の手続きが出来なくなります。

  • ・労働協約の地域的拡張適用の申立(法18条)
  • ・労働者委員の推薦(法19条の3第2項)
  • ・不当行為に対する救済申立(法5条1項)
  • ・法人格を取得するための資格証明取得(法11条)

これらの手続きが必要にもかかわらず、公認会計士による監査を受けていない場合には、その手続きができずに最悪の場合は労働組合の存在意義が無くなってしまう可能性があります。

では、【上記の手続きは、うちの労働組合では必要ないので、罰則がないなら公認会計士による会計監査を受ける必要がないのでは?】

と考え、公認会計士による監査を受けていない労働組合が多数存在するのも事実です!

しかし、『公認会計士による監査を受けていないと発生するリスク』

①労働組合法違反という法令違反を犯している状況であり、罰則がなくても執行委員等執行部はコンプライアンス違反の状況にある。

②執行委員には、様々な諸手当が支給されているのが実情ですが、お手盛りが発生する可能性が高く、また、親睦等の目的で様々な会合や飲み会等を行っている執行委員の活動において、第三者の公認会計士による監査を受けていないと、私的な飲み代等を組合の経費として処理し、組合員の財産を私的に流用している可能性がある。

以上、2点のリスクが発生しています。

組合員等、組合費を支払っている方は、大会議案書の収支計算書や貸借対照表の後ろに、公認会計士の監査報告書(監事等内部の監査報告書ではなく)が添付されているかご確認ください。

もし、公認会計士の監査報告書がないなら、上記2点のリスクを抱えている労働組合であることを認識し、執行部に対し上記2点のリスクに対する見解を求める事が、組合の財産を守るために当然必要な行動であると認識ください。

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労働組合の会計基準

労働組合会計に関する会計基準である「労働組合会計基準」は、昭和60年10月に制定されました。
この基準は、公表後30年以上が経過しており、多くの労働組合において採用されています。
つまり、「一般に公正妥当と認められる労働組合会計の基準」として定着しているものです。

「労働組合会計基準」は、以下のような特徴があります。

  1. ガイドラインとしての役割
    「労働組合会計基準」は、労働組合会計に携わるもののガイドラインとしての役割を期待されて制定されたものです。
    つまり、企業会計の基準のように適用が強制されるような性質のものではなく、適用にあたっては個々の労働組合にその判断がゆだねられる性質のものです。
  2. 予算が重視される会計(予算準拠主義)
    労働組合における組合費の使途については、あらかじめ大会等で承認される必要があります。
    この承認プロセスにより、労働組合の執行部の組合費の使途について一定の制約がかけられることになります(内部牽制機能)。
    したがって、労働組合会計においては、一期間に係る損益計算よりも、当初の活動計画に基づいた業務を行ったかどうかのほうが重視されています。
  3. 特別会計の設定
    特別の目的を定めて徴収した資金を財源として組合活動を行う場合には、その状況を明らかにするため特別会計を設ける必要があります。
    例えば、組合費とは別に、闘争資金等を徴収している場合、共済資金を徴収している場合などです。
    また、将来の特定の支出に備えるため、又は、特定の資金を区分して管理するために特別会計を設けることもできます。
    例えば、役職員退職給与積立特別会計、会館維持特別会計などです。

労働組合の会計監査はどのように行われる?

労働組合の会計監査は監査基準に準拠して行われます。

監査基準では、リスクアプローチに基づく監査の実施が求められています。
リスクアプローチに基づく監査では、財務書類に虚偽の表示が含まれるリスクの度合いやそれが生じる箇所等を特定し、それぞれのリスクに応じた手続を実施することで、効果的、かつ効率的に監査を実施するものとされています。
主な監査手続としては、以下のようなものを挙げることができますが、実際に行う手続きやその範囲は、上記のリスクに応じて会計監査人が判断することになります。

1.実査

労働組合が保有する現金や預金通帳、出資金等の現物を会計監査人自らが直接手にとって検証する手続きです。

2.確認

預金残高や未収入金等について、会計監査人自らが労働組合の取引金融機関や取引先等に金額について文書で照会を行い、直接回答を得る手続きです。

3.分析的手続

資産・負債の残高や収入・支出の発生高について、予算比較や期間比較、比率分析等を行い、異常値の有無を把握する手続きです。

4.証憑突合

監査人が重要と判断した個々の取引について、請求書や領収書、稟議書(決裁書)、預金の入出金記録等の証憑と会計記録とを照合する手続きです。

会計監査人の変更について

外部監査人の変更を検討する時期としては決算を行うタイミングというのが実務的には多いのではないでしょうか。外部監査人の変更理由としては、外部監査人の対応力の低さ、高齢化、監査報酬の見直しということが挙げられます。近年、労働組合は組合加入率の低下などによる長期的な収入減少傾向に悩まされており、監査人への支出も含めて検討しなければならないケースが出てきていると思います。

一方で、ここ数年(2021年以降)公認会計士の業界は人員不足に陥っており、上場会社を筆頭に公認会計士等による監査報酬の値上げラッシュが続いています。

当事務所への監査のご依頼も多くなり、日程調整が難しくなっているため監査報酬については値上げせざるを得ない状況になっていることはご理解ください。

労働組合 公認会計士等による会計監査を受けていない組合は法律違反!?

報酬の目安

監査報酬は、監査に要する日数を見積り、その積み上げを基礎として計算しています。
したがって、労働組合の規模(収入・支出や資産の規模、支部の数等)によって監査報酬は異なってきます。
当事務所では、最小規模の労働組合(概ね組合員100人未満)であれば、監査報酬は150,000円(税別)~

その他概ね、1,000人以下の労働組合の場合200,000円~400,000円(税別)で、監査日数により変動します。

1,000人以上の労働組合の場合は、400,000円(税別)~で監査日数により変動します。

ただし、初年度の監査については、組合の予算についても考慮して柔軟に対応しますが、2年目以降は通常の見積り日数にて監査報酬が発生します。

監査報酬のお見積りは監査契約前提の場合、無料で行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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