1年余りで5監査法人!!!赤坂有限責任監査法人に対して行政処分勧告!

金融庁

はじめに

令和5年3月17日、公認会計士・監査審査会(CPAAOB)は赤坂有限責任監査法人を検査した結果、当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたので、金融庁長官に対して、公認会計士法第41条の2の規定に基づき、行政処分その他の措置を講ずるよう勧告しました。

公認会計士・監査審査会/品質管理レビューの審査・検査 (fsa.go.jp)

●業務管理体制

当監査法人は、アドバイザリー業務を行う関係会社及び税務業務を行う関係法人と共にグループを構成し、当該グループを一体的に運営することで、当監査法人の社員及び職員が、監査・税務・アドバイザリー業務をバランスよく実施して、働き甲斐のある人間らしい仕事を行い、社会の持続可能な経済成長に役立っていくことを目指すとしていたようです。

しかし、法人代表兼品質管理担当責任者を含む各社員は、内部規程等の整備・運用を含め、適正な監査品質の確保に向けた実効的かつ組織的な業務管理態勢を構築できていない。

また、法人代表兼品質管理担当責任者を含む各社員は、監査調書の査閲、監査業務に係る審査、定期的な検証、品質管理レビューでの指摘事項に対する改善施策等の実施に際し、法人全体の監査品質の改善・向上に向けた社員としての職責・役割を十分に果たしていない。

さらに、各社員は、主体的に監査業務に関与する姿勢が不足しているほか、自らを含む監査実施者において、監査の基準や現行の監査の基準が求める手続の水準に対する理解が不足していることを認識できていない。

上記から、関係会社等との取引、品質管理レビューでの指摘事項の改善状況、監査業務に係る審査など、品質管理態勢において、重要な不備を含む広範かつ多数の不備が認められている。

また、今回の審査会検査で検証対象とした全ての個別監査業務において、業務執行社員及び監査補助者に監査の基準に対する理解が不足している状況 及び職業的懐疑心が不足している状況が確認され、それらに起因する重要な不備を含む広 範かつ多数の不備が認められている

(品質管理レビューでの指摘事項の改善状況)

当監査法人は、日本公認会計士協会が実施した令和3年度品質管理レビューにおいて、 品質管理態勢及び個別監査業務に関する複数の不備を指摘されている。当監査法人は、当該品質管理レビューでの指摘事項に対し、根本原因分析を行い、これを踏まえた改善措置を講じたとしている。 しかしながら、当監査法人においては、当該指摘事項についての再発防止に向けた改善措置が実効性のあるものとして講じられていない。そのため、今回の審査会検査においても、当該指摘事項と同様の不備が複数検出されている。

CPAAOBの勧告でよくあるJICPAでの指摘と同様の不備が発見されたようです。

●個別監査業務

業務執行社員及び監査補助者は、被監査会社の特性に応じたリスク評価を適切に実施していないほか、被監査会社の主張を批判的に検討していないなど、監査の実施に当たり、職業的専門家としての懐疑心を十分に発揮していない。

さらに、業務執行社員は、監査業務を担当できる社員の数が少数にとどまっている状況の下、非監査業務にも多くの時間を割く中で、担当する監査業務に十分な時間を確保し得ないため、担当する監査業務の実施に当たり、監査補助者からの説明と自らの理解とが合致しているかを確認するにとどまるなど、担当する監査業務への主体的な関与が不足して いる。

監査業務の担当社員が少ないのに、非監査業務に多くの時間を割いていたということでしょうか。

結果、検証した個別監査業務において、重要な不備を含む広範かつ多数の不備が認められており、当監査法人の個別監査業務の実施は著しく不適切かつ不十分なものとなっている。

とのことです。

●赤坂有限責任監査法人の上場会社クライアント

2023年3月時点で10社とのことです。

赤坂有限責任監査法人の監査クライアント一覧 | 上場企業サーチ (xn--vckya7nx51ik9ay55a3l3a.com)

おわりに

2022年は公認会計士等の異動は約250社、そのうち赤坂有限責任監査法人へ変更した会社は当事務所の集計では4社です。

2020年までの公認会計士等の異動は150社前後だったのが2021年に200社を超え、2022年は250社程度まで増加しています。

その受け皿となっているのが今回の監査法人のような中小監査法人です。

その中小監査法人に対するCPAAOBの行政処分等の勧告は、2021年までは年に1法人あるかないかという状況でしたが、昨年2022年より状況は一変しました。

・2022年1月:仁智監査法人

・2022年4月:UHY東京監査法人

・2022年6月:監査法人ハイビスカス

・2023年1月:ひびき監査法人

・2023年3月:赤坂有限責任監査法人

以上、1年余りで5法人と激増です。

このままでは、監査の受け皿が不足し、更に監査報酬の増加と増加に伴う公認会計士等の異動(大手から中小への交代)、そして中小監査法人等への金融庁の行政処分の増加という流れが止まらない可能性すら感じます。

以上

金融庁