上場会社監査に関する登録制の導入など:公認会計士法等の改正

法改正

はじめに

公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律2022 年5月11 日付けで通常国会で可決・成立、公認会計士法が改正されましたが、もう一度ここでその概要について解説しましょう。

本改正は、上場会社監査の担い手の裾野の拡大や、ダイバーシティの進展・働き方の多様化といった、会計監査を取り巻く経済社会情勢の変化を踏まえ、金融庁「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)」から公表された論点整理「会計監査の更なる信頼性確保に 向けて」において示された論点のうち、会計監査の信頼性確保や公認会計士の一層の能力発揮・能力向上に資する制度を実現するために行われたもので、主な改正は次のとおりです。

会計監査の信頼性確保 上場会社監査に関する登録制の導入

公認会計士・監査審査会によるモニタリングの見直し

公認会計士の能力発揮・能力向上 監査法人の社員の配偶関係に基づく業務制限の見直し

その他の事項

上場会社監査に関する登録制の導入

本改正では、これまで日本公認会計士協会の 自主規制の枠組みにおいて運用されていた上場会社監査事務所登録制度について、法律の下で運用する枠組みに変更されています(公認会計士法第34条の34の2等)。

なお、制度の詳細設計と運用は引き続き日本公認会計士協会(JICPA)で実施することとされています(公認会計士法第34条の 34の6)。

また、登録を受けた監査事務所に対しては、適切な業務管理体制の整備等について、より高い規律付けが行われています(公認会計士法第34条の34の14)。

すべての監査事務所に共通の規律 上場会社等の監査へのより高い規律
・特定の利害関係を有する場合の業務制限

・一定の非監査証明業務との同時提供の禁止

・登録制による適格性の確認

・適切な業務管理体制の整備

(監査法人のガバナンス・コードに基づく組織運営や、情報開示の充実)

公認会計士・監査審査会によるモニタリングの見直し

本改正では、公認会計士・監査審査会の立入検査等において、監査法人等の業務運営に加え、虚偽証明等の検証も行えることとされています(公認会計士法第49条の4第2項)。

現状の金融庁による監査法人への行政処分勧告等は、監査法人等の業務運営に対してのみでした。例えば、2022年5月31日の仁智監査法人に対する行政処分の処分理由の一部に以下の指摘があります。

『法人代表者及び品質管理担当責任者を含む各社員においては、各人の個人事務所等における非監査業務への従事割合が高く、当監査法人における監査の品質の維持・向上に向けた意識が希薄なものとなっていることから、上記の改善勧告等を法人の業務運営の根幹に関わる問題として認識していない。』

監査法人の処分について:金融庁 (fsa.go.jp)

今後は、虚偽証明等の検証も行えることから虚偽証明があった場合についても直接行政処分の理由とされることが想定されます。

監査法人の社員の配偶関係に基づく業務制限の見直し

現行法では、監査法人の独立性確保のため、 監査法人の社員の配偶者が役員等を務める会社等に対して、その社員が当該会社の監査に関与するか否かを問わず、監査法人による監査業務の提供を制限していましたが、本改正では、監査に直接関与する社員等に限定した制限に見直しが行われています(公認会計士法第34条の11第1項)。

簡単に言うと、監査法人の社員の配偶者が役員等を務める会社に対しては、直接その会社の監査チームの一員として監査を行っていなくても監査法人として監査することができなかったわけですが、直接チームの一員(業務執行社員)としてかかわらなければ監査法人としては監査することができるということです。

これは、共働き世帯の増加・女性活躍の進展・監査法人の大規模化が進む中、独立性に及ぼす影響を踏まえ、配偶者である監査法人の社員が直接監査証明業務に関与するケースに業務制限の対象を限定することで、監査法人としてはより業務の幅が広がる点に注意してください。

その他の事項

その他の事項としては次の改正が行われています。

・企業等に勤務している公認会計士の登録事項に「勤務先」を追加(公認会計士法第17条)

・資格要件である実務経験期間の見直し(2年以上→3年以上)(公認会計士法第3条)

・継続的専門研修の受講状況が不適当な者等の登録抹消規定の整備(公認会計士法第21条)

・日本公認会計士協会による会計教育活動の推進(公認会計士法第44条第1項)

おわりに

施行は、公布(2022年5月18日)の日から起算して1年を超えない 範囲内において政令で定める日からとされています(附則第1条)。

会長声明「公認会計士法の改正について」 | 日本公認会計士協会 (jicpa.or.jp)

以上

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