上場会社の監査事務所へのガバナンス・コード適用についての議論の状況

監査現場9 3

はじめに

上場会社の監査事務所へのガバナンス・コード改定に向け、有識者検討会が再開されます。9月の企業会計審議会総会で明らかにされました。

ガバナンス・コードを中小監査法人でも受け入れられるようなものにするのが狙いです。なぜなら、大手・準大手監査法人から中小監査事務所への監査人の異動が過去最高を更新し、上場会社の監査における中小監査事務所の存在感が高まっているからです。

10月下旬ごろから検討を開始し、2022年度中に改定の方向性について結論を下す見通しとなっています。

上場会社の監査事務所は中小でもガバナンス・コードの受け入れが必須に

監査法人のガバナンス・コードは、「会計監査の在り方に関する懇談会」の提言(2016年3月)を踏まえ、2017年3月に策定されたものです。

組織としての監査の品質の管理の確保に向けた5つの原則と、それを適切に履行するための指針からなりますが、「大手上場企業等の監査を担い、多くの構成員からなる大手監査法人における組織的な運営の姿を念頭に策定」されており、中小監査法人の採用は、現時点でわずか9法人にとどまっています(2022年7月1日時点)。

他方、中小監査法人が上場会社を監査するケースは別途当事務所のブログでも何度も記載していますが(参照ブログ)会計監査人の異動!5月は109社!大手・準大手から中小への流れ加速!年々増加しており、公認会計士法等の一部を改正する法律(2022年5月成立)では、会計監査の信頼性を確保する観点から、上場会社の監査事務所に対して登録制度を導入するとともに、適切な体制整備(=監査法人のガバナンス・コードの受け入れや情報開示の充実を想定)を義務付けることとなっています。

すなわち、上場会社を監査するには監査法人(個人の場合は個人事務所)のガバナンス・コードの受け入れが必要になるということとなります。

中小監査法人や個人の公認会計士事務所で受け入れ可能なガバナンス・コードとは

中小監査法人等でも受け入れられるガバナンス・コードとなるよう、有識者検討会において改定に向けた検討を行うこととなっていますが、この点、本年1月の金融審議会・公認会計士制度部会報告では、「準大手監査法人・中小監査法人における上場会社監査の品質確保にも資するコードとなるよう、また、監査法人の規模等に応じた実効性のある規律を求めるコードとなるよう、必要に応じて、その内容に改訂すべき点がないか検討されるべき」としています。当然のことではありますが、総勢10~20名程度の監査法人において、大手監査法人と同じようなガバナンス・コードを求められても適用不可能と言わざるを得ません。

おわりに

会計監査の在り方に関する懇談会の議論整理(2021年11月)では、以下など7点を例示した上で、「監査法人のガバナンス・コード」に取り入れるべき事項が幅広く検討されることが望ましいとしており、これらについても今後検討が行われることになりそうです。

・国際的な動向を踏まえ、非監査業務の提供に伴う利益相反や独立性への懸念に対してどのような姿勢で対応しようとしているか

・グローバルネットワークやグループ法人との関係性・位置づけについて、どのような在り方を念頭に監査法人運営を行っているのか

上記など他5点

特に上記、2点目のグローバルネットワーク~については、監査人の異動において中小監査事務所へ変更している上場会社にとってはほぼ無縁の出来事ではないかと考えますが、今後の議論によっては、中小監査事務所のガバナンス・コードが厳しいものであれば、実質、中小監査事務所は上場会社を監査できなくなり、監査難民が激増するのではないかと危惧しています。

 追記)個人の公認会計士事務所による監査のメリットは以下のブログ参照ください。もうすぐ監査資源的にお受けできる監査数の限界に来ていますので、ご依頼はお早めにお願いします。3月決算等、繁忙期によってはお断りする場合がございますのでご了承ください。

 個人の公認会計士事務所による監査はメリットだらけ(監査報酬見直し、高品質保証)

以上

横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く法定監査・任意監査に特化した監査事務所です。

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