労働者派遣事業の許可審査に係る監査証明と合意された手続(AUP)業務の実施

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はじめに(労働者派遣事業の新規許可・更新の申請)

労働者派遣事業の新規許可を申請する場合、又はその許可の有効期間の更新を申請する場合に、申請が許可される条件の一つとして「資産要件」があります。

この資産要件は、最近の年度決算書において以下の3つの要件を満たすこととされています。

満たさなければならない3つの資産要件

・基準資産要件…(a).資産(繰延資産及び営業権を除く。)の総額から負債の総額を控除した額(以下「基準資産額」が2,000万円に当該事業主が労働者派遣事業を行う(事を予定する)事業所の数を乗じた額以上であること

・負債比率要件…(b).(a)の基準資産額が、負債の総額の7分の1以上であること

・現金預金要件…(c).事業資金として自己名義の現金・預金の額が1,500万円に当該事業主が労働派遣事業を行う(事を予定する)事業所の数を乗じた額以上であること

<小規模派遣元事業主への暫定的な配慮措置>

改正法附則第6条第1項の規定により引き続き行うことができることとされた労働者派遣事業を行っている者からの申請に限る。

1つの事業所(労働者派遣事業を実施する事業所のみではなく、当該事業主の労働者の勤務する場所又は施設を含む。)のみを有し常時雇用している派遣労働者が10人以下である中小企業事業主の財産的基礎(当分の間の措置)の判断については、以下のとおりとされています。

・基準資産要件…(a).資産(繰延資産及び営業権を除く。)の総額から負債の総額を控除した額(以下「基準資産額」という。)について1,000万円いじょうであることとする

・負債比率要件…(b).(a)の基準資産額が、負債の総額の7分の1以上であること

・現金預金要件…(c).事業資金として自己名義の現金・預金の額が800万円以上であることとする

公認会計士による監査・AUPが必要となるのは?

上記の要件のうち、一つでも満たされない場合には、基準資産額及び現金預金額を増額して、許可要件を満たした中間又は月次決算書に公認会計士等による監査証明を添付して厚生労働省の所管労働局に提出して審査を受けるという事後申立てを行うことが認められています。

当面の間、許可の有効期間の更新に係る事後申立てに限り、合意された手続(AUP)実施結果報告書による取扱いも可とすることとされています。

合意された手続(AUP:Agreed Upon Procedures)

合意された手続業務(AUP)とは、公認会計士が行う業務の一つで、公認会計士と依頼者の間で確認する具体的な事項及びその方法について合意し、その結果得られた事実についてのみ報告を行うものです。

監査証明と合意された手続(AUP)の違い

各申請手続において、新規許可申請の場合には「監査証明」、更新許可申請の場合には「監査証明」又は「合意された手続」のいずれか、を実施する事とされております。
「監査証明」は、決算書全体を対象とし、決算書が適正である事を公認会計士が保証するものとなります。一方「合意された手続」は、依頼者と公認会計士の間で契約書において事前に合意した作業のみを実施し、その実施結果を報告するもので、監査の様に決算書が適正である旨の保証はしません。つまり、合意された手続は、監査証明より簡略化された手続となる反面、決算書が適正か否かについての判断は読み手側(労働局等)が行う事になるのが特徴です。

尚、更新許可申請においては、「原則として」監査証明による監査証明書を提出する事が求められておりますが、「経過措置として」合意された手続による実施報告書の提出でも代替できるとされています。

合意された手続(AUP)実施フロー

①合意された手続(AUP)業務実施にかかる契約の締結

②合意された手続(AUP)の手続内容について書面での合意

③合意された手続(AUP)実施に必要な資料の依頼、質問実施のための日時のセッティング等

④合意した内容にそって合意された手続(AUP)実施

⑤合意された手続(AUP)の結果を「合意した手続実施結果報告書」として作成・提出

合意された手続により適用される監査手続

一般的な合意された手続(AUP)で実際に行う手続は、すべて依頼者と公認会計士との間で合意した内容となり、合意された手続(AUP)の目的によってその内容はさまざまですが、種類としては次のような手続があります。

・質問

・分析的手続

・再計算

・証憑突合、帳簿突合

・棚卸立会

・預金等実査

・残高確認

おわりに

以上より、監査証明と合意された手続の違いは以下の通りとなります。

監査証明と合意された手続の違いは以下の3つ

「監査証明」は新規申請・更新申請において利用可能である一方、「合意された手続(AUP)」は更新申請においてのみ利用可能である。

「監査証明」は決算書の適正性に対する公認会計士からの保証がある一方、「合意された手続(AUP)」には保証はなく決算書の適正性については読み手側が判断する。

「監査証明」は決算書全体をチェックするため一定の工数が掛かるが、「合意された手続(AUP)」は決算書の合意した科目のみをチェックするため監査証明に比べて工数は少なくなる傾向にある。

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