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公認会計士の会計監査制度の歴史を振り返る① - 大阪で会計士の監査は横田公認会計士事務所

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公認会計士の会計監査制度の歴史を振り返る①

カテゴリ: 監査 最終更新日:2020年09月11日(金) 公開日:2020年09月11日(金)

はじめに

日本の公認会計士制度は 2018 年に 70 周年を迎えた。この 70 年間で公認会計士制度は 大きな変化を遂げていますが、その背景には企業における不適切な会計も制度変更に影響を 与えているものと考えられます。 コラムでは過去の粉飾事案を紐解き俯瞰するとともに、その時代ごとに行われた制度改正を振り返ります。個別の粉飾事案と制度改正をすべて関連付けることは困難でありますが、70 年間の変遷 をたどることは、己の資格業務の社会的期待役割を知るうえで有用と考えています。

今回の①では、昭和の時代(1945 年~1988 年)を、次回の②では平成の前半(1989 年~2007 年)を、その後の③では平成の後半である 2008 年以降の粉飾事案、制度改正を取り上げるよていです。

公認会計士監査制度の誕生と成長

この時代は、日本の戦後復興から高度成長期、バブル景気を経て、日本の経済活動が拡大した時代です。そして、日本の経済活動の拡大に呼応して、公認会計士監査制度が整備され、成長を遂げた時代でもあります。この時代の会計・監査制度の主な出来事、経済事象等 は以下の通りです。

・1948年(昭和23年)・・・公認会計士法成立、証券取引法の全面改正

・1049年(昭和24年)・・・日本公認会計士協会成立、「企業会計原則・財務諸表準則」発表

・1950年(昭和25年)・・・上場会社に対する公認会計士監査の義務付け、「監査基準・準則」設定、財務諸表規則の制定

・1951年(昭和26年)・・・公認会計士監査制度の実施

・1963年(昭和38年)・・・計算書類規則制定

・1966年(昭和41年)・・・監査法人制度の創設

・1974年(昭和49年)・・・商法特例法による監査の導入(現会社法監査:会計監査人制度の導入

・1977年(昭和52年)・・・連結財務諸表の制度化、中間財務諸表の制度化

・1982年(昭和57年)・・・商法改正(監査制度強化)、計算書類規則改正

・1988年(昭和63年)・・・計算書類規則改正

日本の公認会計士監査制度は、「公認会計士法」が成立したことに端を発っしています。この法律 が成立する前までは「計理士法」に基づいて計理士が、検査証明業務も行っていましたが、1948 年の証券取引法の全面改正及び 1949 年の証券取引所開設に当たり、証券市場における財務諸表の信頼性確保を担う新たな役割として、1948 年成立の「公認会計士法」のもと、公認会計士が生まれました。 法制度、制度設計が進む一方で、1950 年には「監査基準」及び「監査実施準則」が制定 され、翌 1951 年に初の証券取引法に基づく会計監査(証券取引法監査)が行われました。その後、1957 年 1 月 1 日より開始される事業年度より、証券取引法監査が義務化され、正規の監査として実施されることとなりました。 正規の監査が開始されたころ、日本経済は神武景気( 1954 年~ 1957 年)、岩戸景気( 1958 年~1961 年)、そしてオリンピック景気(1962 年~1964 年)と長い拡大局面と短い後退局 面を繰り返し、段階的な成長を遂げました。しかし、このオリンピック景気後の後退局面において、「日本特殊鋼」、「サンウエーブ工業」、「富士車輛」、「山陽特殊製鋼」など多くの上場企業の倒産や破綻が相次ぎました 。この倒産等を通じてその内情が白日の下に晒された結果、これらの会社の中には、単純な業績不振の会社ではなく、粉飾を繰り返していた会社が多くあったことが判明しました。これは、この景気後退局面に露呈はしたものの、それ以前の好況とされていた局面から繰り返し実施されていたものだったのです。

山陽特殊製鋼事案

粉飾の手口としては、架空売上や各種費用の圧縮、在庫の水増しなどで、詳細な手口の内容までは不明ではあるものの、監査基準で求められる手続を実施すれば見つけられた不正も多くあったものと推察されています。本当に監査人は不正に気づいていなかったのでしょうか。 ここに、この事件が粉飾決算史上 1、2 を争う著名な事件として扱われる理由があります。 同社の監査人たる公認会計士は、大蔵省、東京証券取引所に呼ばれた際に次のように答えたとされています。 「7 年前から粉飾を知っていた。しかし、荻野社長から『明るみに出せば会社が困難な事態に直面するので書かないでほしい』といわれたので押さえた」 つまり、監査人は粉飾の事実に気づいていたが、監査報告書上なんら表現することも無く、適正意見を表明し続けたのです。 これを受け、同社の関与公認会計士については、1958 年 3 月から 1964 年 9 月を虚偽証明期間として、1965 年 9 月 4 日付けで、公認会計士法上に基づく懲戒処分として、登録抹消の処分が行われています。この公認会計士は上述の粉飾の黙認に加え、監査補助者を使用していなかったにもかかわらず、使用していたものとして監査概要書に虚偽の記載を行っていた とのことであり、単独の監査で独立性が保持しにくい状況にあったものと推察されます。

事案を受けての制度変更

当該事案を含む、この公認会計士監査成長期の各種粉飾事案を経て、監査の実効性に大きな疑念が生じたのは言うまでもありません。この監査の実効性への疑念を払拭するために、大蔵省は 1965 年 8 月に「当面の審査方針」を決定し、重点審査を実施しました。その結果、多くの粉飾決算会社が発見され、公認会計士監査制度の制度としての脆弱性が露見することとなりました。そこで、公認会計士法の改正等各種措置が講じられることとなったのです。代表的な制度変更として以下の4つがあります。

・監査法人制度の導入

・監査基準等の改訂

・商法監査(現会社法監査)の導入

・日本公認会計士協会の特殊法人化

組織的監査の発展

山陽特殊製鋼の事案をきっかけとして、( 1)監査法人制度の導入、(2) 監査基準の改訂、( 3)商法監査の導入、( 4)日本公認会計士協会の特殊法人化と大きく公 認会計士監査制度が変わっていきました。 昭和期においては、もう一つ公認会計士制度に大きな影響を与える事件が起きました。それ が不二サッシ事件です。不二サッシ事件は、山陽特殊製鋼の事案と同様に公認会計士が粉飾決算を知りながら、監査報告書にサインをしたとされています。特に問題視されていたのが、公認会計士1人で、監査を実施し、監査報告書にサインをしたことです。 この事件を通じて、1978年9月に大蔵省は、「公認会計士監査における組織的監査の徹底と独立性の保持について」を日本公認会計士協会に通達しています。上記を受けて、日本公認会計士協会は、1979年6月に「組織的監査要綱」を公表しています。このことにより公認会計士監査は、組織的監査へと大きく舵を切ることになったのです。

監査制度の改訂

不二サッシの事案で、公認会計士が故意による虚偽証明を行った要因として単独監査を行っていたことが指摘されました。前述した山陽特殊製鋼の事案をきっかけとして監査法人制度が導入されました。しかし、不二サッシの事案を通じて、個人の公認会計士による単独監査の実施が、監査人の独立性を害した要因として、改めて浮き彫りになり、これに応じて1978年9月に大蔵省は、「公認会計士監査における組織的監査の徹底と独立性の保持について」を日本公認会計士協会に通達しています。また、東京、大阪等の証券取引所は、1978 年9月に「財務内容の適正開示について」を公表し、単独監査をやめ、少なくとも2人以上 の監査責任者を置くように監査体制を整えるように要請しました。 上記を受けて、日本公認会計士協会は、1979年6月に「組織的監査要綱」を公表しています。 「組織的監査要綱」の狙いは、「監査に適する組織を整えるとともに、その運用の妙を発揮し、もって監査の目的を完全に遂行するにある。」とされ、「監査は、一定の方針のもとに指揮命令の系統と職務権限の分担とを明らかにした組織によって遂行されなければならない」としています。 上記は、①指揮命令系統と②職務分担の明確化を定めたものであるとされています。

上記の①指揮命令系統と②職務分担の明確化により、単に複数人による独立性の担保というだけでなく、「組織的監査要綱」の狙いとする監査に適する組織を整え、運用の妙を発揮し、もって監査の目的を完全に遂行することを目指しています。 そして、その後公認会計士監査は、監査法人による監査が中心となっていくこととなります。

おわりに

近年では監査を組織として行うことが一般的になっていますが、監査法人制度導入の狙いは下記の3つであるといわれています。 「①ある程度の規模の人的組織によって、監査を担うことで、組織的監査が可能になる ②ある程度の人数の人間が出資をすることで、財務的基盤を強化し、独立性を高める。 ③組織として監査することで、相互牽制が可能になり、かつ、品質管理システムの維持・運用が可能となる」。監査法人は、この後、合併を繰り返し大規模化して、企業のグローバル化に対応し、IT化に対処していくことになります。しかし、大規模化していく中でガバナンスの問題等が生じることとなるのです。組織的監査が有効に機能するためには、常にその組織の課題を把握し、 改善していく不断の取組みが必要とされると考えられます。

以上は大規模な被監査会社の監査には監査法人の監査が適しているということであり、中・小規模被監査会社の場合は、当事務所のように個人事務所による組織的監査(ベテラン監査人のチームによる監査)が適していると自負しています。