学校法人の会計監査

東証②

1.学校法人監査とは

補助金を受ける各種学校や幼稚園については、私立学校振興助成法第14条第3項により、貸借対照表、収支計算書等の財務計算に関する書類を作成し、公認会計士又は監査法人の監査を受けることが義務付けられています。

ただし、補助金の額が1,000万円未満である学校法人については、公認会計士等による監査が免除されています。

また、大学等を新設する際には、文部省告示第117号(平成6年7月20日)に基づく財産目録の監査が必要となります。

 

学校青空と校舎

2.学校法人監査の対象

学校法人監査の監査対象は次の計算書類です。
(計算書類)

  • 資金収支計算書(人件費支出内訳表を含む。)
  • 事業活動収支計算書
  • 貸借対照表(固定資産明細表、借入金明細表及び基本金明細表を含む。)
  • 重要な会計方針及びその他の注記

3.学校法人に適用される会計基準

学校法人は、「学校法人会計基準」(昭和46年文部省令第18号)に準拠して、計算書類を作成する必要があります。
したがって、公認会計士等による監査も、理事者の作成した計算書類が、学校法人会計基準(昭和46年文部省令第18号)に準拠して、学校法人の経営の状況及び財政状態を適正に表示しているかどうかについて監査意見を表明することとなります。

4.学校法人会計の特徴

予算制度

 学校法人会計は、「予算制度」が採用されており会計年度毎に作成された予算どおりに学校を運営していきます。学校法人会計で予算制度が重視されるのは、以下の理由からです。
学校法人の資金源の公共性の高さ
 学校法人の資金源は、学納金・補助金・寄付金等、公共性の高い資金で運営されています。
支出・収入要因が固定的
 学校法人の支出の大半は、人件費、教材費、施設設備費と固定的であり、企業のように原材料費の急騰に伴う急激な支出増加は発生しにくい環境です。また、収入についても、学納金が大半を占めるため、学生定員の厳格な管理が求められていることもあり、学生数の大幅増による増収は見込めません。あわせて、入学後、修業年限の期間においては授業料等の学納金が大幅に変動することもないため、収入の増加の可能性は極めて低いといえます。
教育環境の維持・発展が目的
 学校法人の財産は、寄付行為に基づく創設者の財産であり、その資産の維持発展を目的としており、営利目的ではなく、ある程度決まっている収入の枠組みの中で、最大限の教育研究の充実を図る必要があるためです。

基本金制度

 学校法人の目的が学校の維持・発展を目指すところからそれらに係る経費を保有すべく「基本金」という概念が学校会計では採用されており、企業のように利益を追求するための資本金とは考え方が異なります。公共性の高い教育という事業を担う学校法人において教育研究活動を永続的に保つための資産に相当する金額を維持した上で、収支均衡を安定させるという、学校法人の財政基盤を確立するために必要な制度となっています。

5.終わりに「株式会社等の会計監査との相違点」

学校法人が準拠しなければならない「学校法人会計基準」が文部科学省令、いわゆる法令であるという点で、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」への準拠性を問う一般的な企業の監査と大きく違うところです。

また、企業の財務諸表監査では、財政状態、経営成績やキャッシュフローの状況を適正に示しているかどうかを問いますが、学校法人の監査はそれだけでは不十分です。

なぜならば、企業の財務諸表が外部の利害関係者に企業の財政状態や経営成績を伝えることを目的に作成されているのに対し、学校法人の計算書類が学校法人の所轄庁である文部科学省や都道府県に対する報告書としての役割を重視し作成されているからです。

そのため、学校法人会計基準では一般的な非営利会計の会計基準に比し、特殊でかつ詳細な計算書類体系、勘定科目体系が設定されています。また、どの勘定科目、どの部門で処理するかは補助金の金額にも影響するため、これらの区分処理を正しく行わなければならない要請が企業会計で要請されるレベルよりも格段に高くなっています。