会社法監査の業種別監査報酬の平均額(同業他社と比較し監査報酬を見直しましょう!)
はじめに
前回のコラムで非上場会社の会社法監査の売上規模別の平均額について検討しました。売上規模別といっても業種によっては建設業のように1件の売上高が大きい業種や卸売り・小売業のように1件の売上高が少額でかつ製造業などと比べて仕入から売上までそれほど手間がかからない業種の場合は粗利率が低いなど、単純に売上規模では会社の監査に掛かる工数が図れないなどの問題があります。
そこで、協会が発表している監査実施状況調査には業種別の平均監査報酬の記載もありますので、業種別の平均監査報酬を見てみましょう。
会社の監査報酬が同業種の平均額と比べてどうなのか?ご参考にしてください。
業種別・売上高別監査報酬
以下、協会が公表している、監査実施状況調査より業種別の監査報酬の平均額を見ていきましょう。売上高では当事務所が対応可能な500億円未満の会社まで記載します。
- 1.は売上高50億円以上100億円未満、2.は売上高100億円以上500億円未満の会社
(会社数) (監査時間÷8=概算日数) (平均監査報酬)
建設業 1. 57社 48日 4,478千円
2. 109社 115日 12,371千円
製造業 1. 152社 82日 7,892千円
- 2. 695社 121日 11,806千円
卸売・小売業 1. 42社 89日 8,273千円
- 2. 258社 109日 10,855千円
不動産業 1. 58社 67日 7,145千円
- 2. 120社 102日 10,804千円
運輸・情報通信業 1. 106社 69日 7,118千円
2. 202社 110日 11,549千円
サービス業 1. 123社 74日 7,270千円
- 2. 222社 110日 10,872千円
以上、このコラムをご覧の方の会社に当てはまる規模の平均監査報酬は実際の監査報酬と比較し高いでしょうか。低いでしょうか。ご自分の会社の監査報酬の目安にしていただければと思います。
上記を見ると100億円未満50億円以上の売上規模の会社の場合大体7百万円から8百万円となっていることがわかります。建設業のみ100億円未満のすべての会社の平均となっていることから平均監査報酬が低くなっていると考えられます。
また、500億円未満100億円以上の売上規模の会社は10百万円から12百万円と業種により少し開きがあります。建設業が12百万円を超えているのは、工事進行基準など見積の要素が強く、監査に判断の余地が多く含まれ複雑化していることが考えられます。
おわりに
前回と今回のコラムでは、会社法監査に焦点をあて業種別・売上規模別の監査報酬の平均額と会計監査人(個人事務所~大手監査法人まで)の態様の違いによる報酬の決め方について、個人的な考え方を述べました。
当公認会計士事務所の監査報酬ははっきり言って上記平均額よりは低くなります。被監査会社とのコミュニケーションを密にして、ベテランの会計士でチームを組み、効率的で双方満足感が得られる監査を目指しております。
会計監査人の変更や新規にお探しの方は、問い合わせフォーム(24時間年中無休)または電話(平日10時~17時)にての問い合わせをお待ちしております。
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会計監査:監査報酬の相場を教えて?!各社の現状と報酬の見積について
●はじめに
公認会計士または監査法人による会計監査の監査報酬について、「他社はどの程度払っているのか?」また、「当社の規模での適正な監査報酬はどのくらいなのか」今後新規に会計監査の対象となるが「監査報酬はいくらくらいなのか?」など監査報酬の金額について興味のある方もいらっしゃるのではないかと思います。
上場会社の場合は有価証券報告書にて個別に監査報酬が開示されているため、興味のある方は各社の有価証券報告書を見ればお分かりになるかと思います。
今回は、非上場会社の会社法監査の相場や報酬の見積について検討したいと思います。
●会社法監査の監査報酬の状況
公認会計士または監査法人は監査報告書提出後、公認会計士協会に監査実施報告書を提出することになっています。
この監査実施報告書を公認会計士協会(以下協会)は、毎年集計し規模別(売上規模)に監査報酬の最高額・平均額・最低額を公表しています。
現在(2020年10月2日)の最新版は2018年度(~2019年3月期)の状況が公表されています。
毎年、11月に最新の情報が公表されますので、来月には2019年度(~2020年3月期)が公表される予定です。
監査報酬は、数々の粉飾決算を受けて監査の工数が毎年増加する傾向にありますので、最新の監査報酬がこのブログの金額未満となることは、まずは考えられません。
それでは、会社法監査実施状況(売上高別)の会社数が多く、当事務所が対応可能な規模の3区分の監査時関数・監査報酬についてみていきましょう。
(売上高区分) (会社数) (監査時関数)(監査報酬平均額(千円))
① 10億円以上50億円未満 1,037社 501時間 6,193千円
② 50億円以降100億円未満 589社 632時間 7,776千円
③ 100億円以上500億円未満 1,801社 965時間 11,942千円
以上の通りです。貴方の会社は平均額以上でしょうか?以下でしょうか?
わかりやすいように監査時間を8時間/1日(業界平均)として日数と単価/1日で見てみましょう。
① の区分では、日数約62日、1日当たりの単価約10万円
② の区分では、日数79日、1日当たりの単価9万8千4百円
③ の区分では、日数約120日、1日当たりの単価9万9千5百円
御社の監査報酬金額と比較して、如何でしょうか?
また、監査報酬の見積を今後お考えの会社のご担当者の方のご参考になれば幸いです。
ところで、①の10億円以上50億円未満の比較的規模の小さい会社の単価が一番高いのはなぜでしょう?
答えは、小さくても必要最低限のやるべきこと(契約・審査・調書の整理等)、すなわち固定費が一定割合発生するためです。電気代やガス代を想像ください。基本料が発生しますよね。例えば、月2,000円としますそこから使用量応じて発生する変動費が上乗せされます。一人当たり同じ電気量を使ったとして、単身世帯の場合変動費が3,000円なら固定費2,000円との合計5,000円となります。二人世帯の場合は同様に3,000円×2+2,000円=8,000円となります。一人当たり電気代は、二人世帯の場合は4,000円となり一人世帯より安くなる。そう言う理屈です。
2023年2月公表)公認会計士等の会計監査報酬の相場を知りたい!2021年度監査実施状況調査より
●監査報酬の見積方法
上記にて、現状の各社が支払っている監査報酬の平均的な相場観をみてきました。
それでは、公認会計士または監査法人は監査報酬をどのように見積もっているのでしょうか?
最終的には以下の算式です
監査工数×一日当たりの単価
監査工数とは、会社を1年間監査し、監査意見を表明するまでに何人日(日数×人員)要するかの日数です。意見の表明後も監査調書の整理等に要する日数も含まれます。
監査工数や単価/日については、大手監査法人、準大手監査法人、中小規模監査法人、個人の公認会計士事務所により当然異なってきます。監査法人や個人事務所の中でもそれぞれ異なってきますが、一般的には上記の区分により大体の相場観があります。
私は個人的に大手監査法人に入社後、中小規模監査法人に勤務し、独立後準大手監査法人や中小規模監査法人の補助者の経験と、個人の公認会計士事務所として上場会社の監査責任者を経験していますので、私見ではありますが、大体の相場観を以下記載します。
【大手監査法人】
特徴:監査工数は多く、単価も一番高い(12万円~15万円/日)
皆さん、単価が高いのは当然だと思われるでしょうが、単価が高いのは以下の理由からです。
・一等地に事務所を構えており、監査スタッフ以外の間接人員が多いため家賃等共通費が多くかかる
・海外の大手のネットワークファームと提携しており毎年の提携料(上納金)が高い
・監査責任者の給料が高いのに監査実務はほとんどしない(共通費化している)
監査工数が多くなるのは以下の理由です。
・監査法人に対して、協会のレビューは毎年、金融庁の検査も頻繁に行われるためそれぞれに対応する書類を作成するための間接時間が膨大な時間となる。
・人員は多いが、退職者も多く、現場責任者や重要な科目の担当者以外は新人等不慣れな試験合格者を監査スタッフとして使うため仕事が遅い
【準大手監査法人(中堅監査法人を含む)】
特徴:監査工数、単価とも大手より若干少ない(10万円~12万円前後/日)
準大手の場合、海外に広く展開している大企業が少ないため、大手監査法人より緩い海外のネットワークファームと提携しています。その分提携料(上納金)は安く済みます。
また、大手監査法人ほど監査責任者の給料は高くはありません。
更に、協会レビューは一部準大手を除き、毎年ではなく3年に1度、金融庁の検査も大手ほど頻繁にはありません。
そのため、協会や金融庁向け資料の分量も平均すれば大手より少なく済み間接業務が大手監査法人より少なくなる傾向があります。
【中小規模監査法人及び個人の公認会計士事務所】
中小規模監査法人と個人の公認会計士事務所についての特徴ですが、大きく二つに分かれます。
① 上場会社を監査している監査事務所
② 上場会社を監査していない監査事務所
上記に分ける理由は、協会のレビューや金融庁の検査が入るかどうかによって監査工数に差が出てくるからです。
上場会社監査登録事務所である①の場合は、上記で述べた「中堅監査法人」(=スタッフの人員が30名以上100名未満)とほぼ同様ですが、すべてのスタッフの人員が10名以下の監査法人が多く、単価は10万円/日、監査工数は1割ほど少なくなります。なぜなら、新人合格者を採用せず、3年に一度の協会レビューのためだけにレビューのための書類作りの時間を費やすからです。
上場会社を監査していない監査事務所である②の場合は、単価は10万円/日で同様となりますが、値引きを行い実質的な単価は10万円/日を割り込むことが多いのが実情です。
監査工数も形式的な書類作りは最低限にして、監査を実施する場合が多いので監査工数も一番少なくなります。
ただし、監査法人の形態をとっていても実質的には個人事務所の集まりであり、監査責任者の能力により監査の品質にかなりの差が出てくるといえるでしょう。
参照ブログ)横田公認会計士事務所が実施する会計監査のメリット
●まとめ
会社法監査実施状況で記載した中で一番社数が1,801社と多い③の売上高100億円以上500億円未満の会社を例に、私見により監査事務所別の平均単価を算出してみます。(私見でありますので、あくまで平均的な参考情報としてご活用ください)
前提条件として、製造業・売上300億円・従業員数300名を想定とします。
監査事務所別監査報酬見積金額の想定額
1. 大手監査法人………………140日×130,000円=18,200千円
2. 準大手監査法人……………125日×120,000円=15,000千円
3. 中堅監査法人………………120日×100,000円=12,000千円
4. 中小監査事務所(上場有)110日×100,000円=11,000千円
5. 中小監査事務所(上場無)100日×100,000円=10,000千円
ところで、複数の公認会計士または監査法人に相見積をすると、監査の品質を無視して監査意見の形成をどのようにやっているのかと疑う監査事務所も中には存在するのも事実です。
そのような特殊は監査事務所の場合は 50日×100,000円=5,000千円以下で見積をし、監査意見を形成するための監査作業を実施せず、監査契約を行う事務所も実際には存在します。
上記のような、監査の品質を無視した監査事務所の場合は、協会が監査実施報告書からピックアップし、個別にレビューを行うような場合もあることを付け加えておきます。そして当該監査事務所は最終的には金融庁から業務停止命令を受け、解散となる場合も多々あります。そう言う事務所に監査を依頼すると結局は監査難民となり他の監査事務所を探すこととなりますのでご注意を!
参照ブログ)監査報酬は安くても満足度の高い会計監査をご提供!
●おわりに
当事務所では、上場会社監査登録事務所の経験も活かして監査事務所としての品質も保ちつつ監査を実施します。
また、監査メンバーは大手監査法人での勤務経験のあるベテランの独立した個人事務所を経営しているメンバーを常時8名前後確保しています。税務にも精通しているメンバーがほとんどです。
参照ブログ)横田公認会計士事務所による監査はメリットだらけ!
前章のまとめの見積金額の想定で見積れば5の監査報酬を基本に個別の会社の実情に合わせてご相談に応じます。※ただし、監査意見を形成するための一定レベルの品質は必ず確保します。
会社法監査や他の監査のご依頼もまだ受け付けております。また、監査報酬やその他監査に関するご相談は無料にて承っておりますので、問い合わせフォームまたはお電話(10時~17時)にてお気軽にご連絡ください。
最新ブログ)公認会計士等による会計監査は横田公認会計士事務所による「柔軟な会計監査」をご提案!
以上
横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の監査など上場会社を除く会計監査に特化した監査事務所です。
上場会社を監査している監査法人等と比較し、「費用面を抑えてクライアント毎の立場を理解した”柔軟の会計監査”を行う」ことを基本方針としています。また「効率性を重視した監査」を行います。
ご参考ブログ)柔軟な会計監査のご提案!厳格(形式的)な会計監査は必要なし!更に報酬も見直し!
監査等のご依頼・ご相談は問い合わせフォームまたは問い合わせ専用メールアドレスに、「お名前」、「所属組織」、「連絡先」、「問い合わせ内容」を記載して送信ください。お電話の場合も同様の項目をご連絡ください。その際、予算があれば予算について記入ください。
2023年度の会計監査はコロナ後となり、クライアントの現場にて実施できる状況となっていることでしょう。
”まずは、気軽に監査報酬について問い合わせください。予算を教えてもらえれば、予算内で収まるかどうかサクッとお答えします。”
問い合わせ専用メールアドレス:このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。
公認会計士は監査と会計の専門家:では専門家とは?
はじめに
新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う対応で、我々は1年前には想像もできなかった事態の中にいます。
この経験を通じて、私たちに日常生活や働き方、中央政府と地方政府の役割など、改めて考えさせられることが多かったと皆さん思われているでしょう。今回は、その中で専門家の役割について考えてみたいと思います。
専門家会議
新型コロナウイルスへの対応をめぐる政府の方針の決定とそれに関する専門家の関与に関して、3月中旬以降、新型コロナウィルス感染症対策専門家会議(以下「専門家会議」)の終了後、そのメンバーが政府とは別に記者会見を行い、それが大きく報じられたことなどを通じて、「専門家会議が感染症対策を決めている」との印象を与えたのではないでしょうか。専門家会議のメンバー自身もこの点を振り返ったうえで、「次の感染拡大に備えた専門家助言組織のあり方」について提言を行っています。
会計監査の専門家としての公認会計士
公認会計士は、「監査と会計の専門家」であり、それ自身が専門家としての役割を担っています。公認会計士が行う様々なアドバイザリー業務は、組織の経営者に愛する助言であり、経営者に代わって意思決定するわけではありません。
また、高度な独立性が求められる会計監査業務においては、自己監査のリスクを避けるために、会計処理について、経営者が自らの責任において最終的に決定することが前提とされています。
しかし、経営危機等の非常時において、監査人の判断が被監査会社の経営者や利害関係者の意思決定に重要な影響を与えることが、監査人が経営破たんを決定付けたといったような印象を与えることも過去にはありました。
公認会計士が、専門家として、社会に対して自らの役割と判断をどのようにわかりやすく伝えるかは、依然として大きな課題といえるのではないでしょうか。
他の専門家の利用
会計監査業務では、会計や監査以外の分野の「専門家の業務の利用」を行うことが多々あります。その場合、一転して公認会計士は、他の専門家を利用する立場になります。
見積の要素が強くなった現在の会計制度で、会計監査業務では、保険数理、金融工学、情報工学などの様々な専門家が関与することが多くなっています。現在の会計監査制度の下では、監査人は表明した監査意見に単独で責任を負うこととなっています。他の専門家を利用するか否か、利用する専門家の能力や客観性などについて評価する責任を負っているのです。
おわりに
様々な専門家を利用する大規模な会社の会計監査の場合、様々な専門家の業務内容を理解し、活用できるだけの能力を公認会計士自身が身に着ける必要があります。専門家を適切に使うために公認会計士が直面する課題は大きいといえます。
当事務所では、比較的中小規模の会計監査を行っていますが、公認会計士として他の業務の専門家の意見を伺うことは大いにあります。例えば訴訟に関しては弁護士に、複雑な労務の事象については社労士になど、他の専門家の業務内容については日々理解するよう努めております。
中小規模の組織で公認会計士の会計監査人をお探しの方は幣事務所までご相談・ご連絡ください。
まずは、問い合わせフォームにて貴組織の情報とご連絡先を入力して送信いただければこちらからご連絡いたします。
公認会計士・税理士から視た現状の税務調査及び会計監査についても一言
はじめに
現状のコロナ禍においての税務調査は、当面、納税者の状況を個々に考慮した上で実施する方針であったようですが、実態として、真に必要な事案を除いて新規の税務調査には抑制的になっていた面があったようです。
ただし、7月から国税庁の新たな事務年度が始まって3か月が経過する現状、新型コロナウイルスの感染拡大防止策を徹底した上で、10月以降には徐々に新規の税務調査を進めていく方向で検討されているようです。感染拡大防止策をとりながら、社会活動のレベルが引き上げられていく中、税務調査も次の段階へと進んでいくようです。
例年の税務調査の連絡が来ていない現状
国税庁では、毎年7月に新たな事務年度が始まります。人事異動があり新体制となり、全国一斉的に納税者に新規調査の連絡が来る時期でもあるのです。
しかし、今年は税務署から新規調査の連絡がないという会計監査先や税務の顧問先からの声をよく聞きます。新型コロナウイルス感染症の影響で、特別に必要な事案を除いて、新事務年度を迎えた以降も、当面は様子見として新規調査を先送りしているとのことです。
税務調査に対応困難なら調査日時を調整
ただし、新事務年度が始まって3か月が過ぎる中、漸く法人税、消費税、所得税、想像税等の税目を問わず、調査を進めていくことになるようです。
今年の事務年度においては、消費税還付事案や富裕層事案など、これまでも特に力を入れてきた重点事案などに、より的確に調査を行っていくことになるでしょう。
実地の調査だけでなく、電話等による非対面の簡易な接触や、机上調査にも力を入れていくことでしょう。
一方で、例えば広範囲の地域に及び調査案件などについては、新型コロナウィルス感染症の感染拡大防止の観点からも、着手しにくい面も大いに考えられます。
あくまで、企業のテレワークの状況なども含めて納税者の個々の状況を勘案しながら調査に着手するスタンスは変わらないでしょう。
このため、新型コロナウィルス感染症の影響でやむなく納税者の調査対応が困難となる場合には、調査日時を調整して先送りすることも十分考えられます。
おわりに
税務調査を行う上で、特に重要と考えられるのが、マスクの着用等の感染拡大防止策でしょう。この点は、当個人公認会計士事務所の会計監査においても同様となっています。
納税者や監査先・顧問先に安心して税務調査や会計監査・税務代理に協力してもらえるように、感染拡大防止策の徹底、及びその周知にも積極的に取り組んでいくことは政務調査のみならず、横田公認会計士事務所にも共通の課題です。
また、税務調査に向かう人員についても必要最小限に抑えることになるでしょう。
この点も会計監査においては特に共通しています。必要最小限のベテラン監査人で監査先での監査を行い、必要書類は遠隔で事務所において、メールでやり取りするようにしています。
安心して当横田公認会計士事務所へ会計監査のご依頼やご相談をください。
監査法人のように、大人数が入れ代わり立ち代わり監査に来るような状況とは違い当事務所では、ベテラン会計士5名ほどのメンバーの中から必要最低限のメンバーで監査を行います。
デジタル時代の公認会計士会計監査の監査証拠
はじめに
近年、ビジネスの複雑化がさらに増す一方で、テクノロジーの進化も日進月歩で、AI、ロボティクス、ブロックチェーン等、新技術には枚挙に暇がありません。
会計監査人の監査証拠
このような現状、会計監査人が集める監査証拠はどのようにアップデートしていくのでしょうか。この点、国際監査・保証審議会(IAASB)では、国際監査基準(ISA)500「監査証拠」の改定を計画しているようです。
9月3日に、IAASB内の監査証拠ワーキンググループがISA500に関する「プロジェクト・アップデート」を公表し、改定の方向性やスケジュール案を示しました。IAASBでは、2016年末から2020年初頭にかけて関係者から意見聴取などを行ってきたようです。6月の会議での議論を経て、一通りの下準備が完了しました。12月の会議での承認を経て、本格的な改定作業に着手する予定を示しています。
現時点では示されている改定の方向性は
① 情報の性質や情報源について等、監査人が用いる情報の変化に対応する
② テクノロジーの進化を反映させて、原則に基づいた基準の現代化や支援をする
③ 監査証拠として用いる情報について判断し、十分に適用可能な監査証拠が入手できたかを評価する際の職業的懐疑心の維持を促進する
上記3点が確認されているようです。
これらについて議論し、2021年12月に公開草案を公表したあと、2022年6月から2023年2月にかけて寄せられたコメントを検討し、2023年3月に改定を終了させる見込みのようです。
おわりに
デジタル時代の監査証拠がどのようなものになるのか?改定まで2年半あります。個人の公認会計士事務所として今後の会計監査に対応できるようデジタル化に対応していきたいと感じている今日この頃です。
会計監査制度の歴史を振り返る③~リーマンショック以降の公認会計士監査制度の変遷~
はじめに
最後は、リーマンショックが生じた2008 年以降現在までの出来事について記載します。2008 年以降、我が国に大きな影響を及ぼした事象等を確認しておきます。
<年表>
2008年(平成20年):リーマンショック
2009年(平成21年):監査基準の改訂(継続企業の前提に関する監査手続の改訂)
2010年(平成22年):監査基準の改訂(監査報告基準の改訂等)、エフオーアイの粉飾発覚
2011年(平成23年):東日本大震災、オリンパス事件発覚
2013年(平成25年):不正リスク対応基準の設定、監査基準の改訂(監査役等との連携等)
2014年(平成26年):監査基準の改訂(特別目的や一部の財務表の監査目的並び
に準拠性に関する意見の表明)
2015年(平成27年):東芝の不適切な会計発覚
2016年(平成28年):会長通牒「公認会計士監査の信頼回復に向けた監査業務への取組」公表、「会計監査の在り方に関する懇談会」提言公表
2017年(平成29年):「監査法人の組織的運営に関する原則(監査法人のガバナンスコード)」公表
2018年(平成30年):監査基準の改訂(監査上の主要な検討事項の記載)
2019年(平成31年):「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」報告書公表
株式会社東芝事案について
過去の不正会計事案を踏まえ、内部統制監査の導入や不正リスク対応基準の整備等が行われていました。
しかしながら、2015年7月に会社ぐるみで巨額の不適切な会計を行っていた東芝の事案が明らかになりました。
→税引前損益に与える影響(2008年度~2014年度第3四半期
累計)は、1,500億円以上
(不正会計の内容)
A.工事進行基準を利用した不適切な会計処理
→「合理的に見積もられた工事原価総額」を意図的に過少にする。
B.経費計上に係る不適切な会計処理
→発生主義で計上すべき経費を現金主義で計上する等
C.部品取引を利用した不適切な会計処理
→有償支給の未実現利益を控除しない。
D.半導体在庫の評価減に係る不適切な会計処理
→必要な評価減計上を見送る。
(不正会計の発生原因について)
→第三者委員会調査報告書によれば、
・経営トップらの関与を含めた組織的な関与
・当期利益至上主義と目標必達のプレッシャー
・組織風土
・内部統制が十分に機能しなかった
こと等が挙げられています。
監査制度への影響について
東芝の不正会計事案の手法は、工事進行基準の操作、経費の遅延計上等、オーソドックスで古典的な手法と考えられます。
にもかかわらず、なぜ既存の監査制度の枠組みにおいて十分な対応ができなかったのでしょうか。
2015年10月公表の公認会計士制度委員会研究資料第2号
「会社法監査に関する実態調査-不正リスク対応基準の導入を受けて-」をもとにした検討を行います。
「会社法監査に関する実態調査-不正リスク対応基準の導入を受けて-」では、アンケートを行っています。
アンケート結果は、要求事項の増加等が監査時間に影響を与えている一方、監査報告書予定日はほとんど変更がないとの回答でした。
適正な監査原資の確保に向けて適切な対応を行うべきではないか。
「会計監査の在り方に関する懇談会」に基づく考察
2015年10月より金融庁では「在り方懇」が開催されました。
懇談会では次のような発言がありました。
・もう法律や基準の上での規制は飽和状態になっているのではないか
・何か事故があると要求事項がどんどん積み上げられ、手続的に増えているのが実態
問題の解決には会計士の能力等、従来より設定されている基準を如何に実行していくか、という観点での議論が行われました。
2016年「在り方懇」の提言として以下の5つの目的と13の施策が掲げられています。
・監査法人のマネジメントの強化
・会計監査に関する情報の株主等への提供の充実
・企業不正を見抜く力の向上
・「第三者の眼」による会計監査の品質のチェック
・高品質な会計監査を実施するための環境の整備
会長通牒「公認会計士監査の信頼回復に向けた監査業務への取組」に基づく考察
2016年1月公表されています。
以下の点について特に留意し、監査業務に取り組むことを強く要請しています。
①リスク・アプローチに基づく監査
②職業的専門家としての懐疑心
③経営者による内部統制を無効化するリスク
④会計上の見積りの監査
⑤監査チーム内の情報共有
⑥ 審査
⑦ 監査時間・期間の確保
監査法人のガバナンス・コードに基づく考察
金融庁は 2017 年 3 月に「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)を公表しています。
監査法人のガバナンス・コードにおける 5つの原則は以下の通りです。
①会計監査の品質を組織として持続的に向上させるべき
②組織的な運営を実現するため、実効的に経営機能を発揮すべき
③経営から独立した立場で経営機能の実効性を監督・評価する機能
④ 組織的な運営を実効的に行うための業務体制を整備すべき
⑤十分な透明性を確保すべき
おわりに
「在り方懇」の提言を受け、2018年11月より「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」が開催され、2019年1月に提言が公表されました。
「充実懇」の提言
・無限定適正意見以外の意見の場合の根拠
・「守秘義務」が過度に強調されているのではないか
(最後に)「在り方懇」の提言のうち特に「企業不正を見抜く力の向上」に努めていくことが求められています。
以上、コラム3回にわたり公認会計士監査制度の歴史を振り返りました。
監査制度の歴史は、上場会社を中心とした粉飾決算とそれに対応して公認会計士の監査制度の充実・強化が行われてきました。
では、当事務所のような個人の公認会計士事務所に何の関係があるのか?と思われる方もいらっしゃるかと思います。大いに関係があるのです。
公認会計士の監査制度の変更は、大手監査法人のみならず、当事務所のように「会社法(単独)の監査」「学校法人の監査」「医療法人の監査」等すべての監査の手法に影響を与えています。
ただし、上場会社の監査を行う監査事務所は、公認会計士協会の品質管理レビューや金融庁の検査を定期的に受けることが義務付けられています。
そのため、レビューや検査に対応するための形式的な見せる書類作りに監査時間の多くを費やしてしまいます。
当事務所も個人の公認会計士事務所として、数年前まで、上場会社監査登録事務所でしたので、レビューや検査を受けてきました。その時の経験は、とにかく見せるための調書を作ることでした。因みに、当事務所は上場会社を行う監査事務所として特に問題となる指摘は受けておりません。
現在は?上場会社監査登録事務所ではないため、見せるための調書作りのような時間は必要ありません。そのため、上場会社監査登録事務所と同じ監査を行っても監査時間をより効率的に行うことが可能です(自分にわかる調書を作ればよい)。
これはすなわち、品質は落とさずに監査を効率的に行い、監査費用を抑えることが可能となったということです。
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中規模以下の判断は、売上では業種により規模感が異なりますので、従業員300人未満の会社と思ってください。
会計監査制度の歴史を振り返る②~バブル経済の崩壊と公認会計士監査制度の変革~
はじめに
今回は、会計監査制度の改革期である1989年~2007年を振り返ります。
この時代は、バブル崩壊後の急激な景気後退、世界的な景況悪化などの要因で不況が長期化しました。
多数の企業倒産や金融機関を筆頭とした企業の統廃合などが相次ぎます。
証取法上のディスクロージャーをめぐり、不適切な事例が相次ぎ、その結果監査基準等の改訂を大幅に行った時代です。
<年表>
1989年(平成元年):監査実施準則改訂(相対的に危険性の高い財務諸表項目に係る監査手続を充実強化)
1991年(平成3年):監査基準、監査実施準則、監査報告準則改訂(リスクアプローチ導入)
1997年(平成9年):ヤオハン倒産、北海道拓殖銀行経営破綻、山一證券自主廃業
1998年(平成10年):中間監査基準設定、三田工業倒産、日本長期信用銀行経営破綻、日本債券信用銀行経営破綻
2000年(平成12年):そごう経営破綻
2002年(平成14年):監査基準改訂(監査の目的を明確化)
2003年(平成15年):公認会計士法改正、足利銀行経営破綻
2004年(平成16年):カネボウ事件発生、西武鉄道事件
2005年(平成17年):会社法成立、監査基準及び中間監査基準改訂、監査に関する品質管理基準設定、カネボウ2,000億円の粉飾公表
2006年(平成18年):金融商品取引法成立、中央青山監査法人業務停止処分、ライブドア事件、ミサワホーム九州事件
2007年(平成19年):公認会計士法改正(監査法人の品質管理強化等)
1989年から2003年までの概要
監査第一委員会報告第50号「相対的に危険性の高い財務諸表項目に係る監査手続の充実強化について」(1988年10月)
→公認会計士監査は不正の摘発を第一の目的とするものではないとしつつも、「役職者による財産上の不正行為が内部統制組織の枠外で行われる可能性が高いことや、証憑そのものが改ざんされる場合が多いこと等を照らし・・・次に掲げる項目について、原則として確認等を実施する・・・」
→預金、手形債権(他所保管分)、貸付金、有価証券(他所保管分)、
棚卸資産(倉庫業者等保管分について確認または立会を行う)、借入金、偶発債務
監査実施準則の改訂(1989年5月)
→相対的に危険性の高い財務諸表項目に係る監査手続を強化
監査基準、監査実施準則及び監査報告準則の大幅改訂(1991年)
→リスク・アプローチの考え方を採用
→新たな内部統制概念の導入
→特記事項の記載
→経営者確認書の入手義務付け
→個別具体的な監査手続の削除
→2002年に再び監査基準は大改訂されます。
2004年から2007年までに改訂された制度とその概要
(1)2005年監査基準の改訂
・事業上のリスク等を重視したリスク・アプローチの導入
→経営者関与の虚偽表示リスクが増加しつつある。
→企業及び企業環境の理解から重要な虚偽表示をもたらすリスクを検討する。
・重要な虚偽表示リスクの評価
→固有リスクと統制リスクを結合し、「重要な虚偽表示リスク」として評価
・財務諸表全体及び財務諸表項目の2つのレベルでの評価
→財務諸表全体レベルに重要な虚偽表示リスクが認められた場合、補助者の増加等の適切な対応を行う。
おわりに
平成前半では、巨額の粉飾決算が公表されるとともに監査責任者の逮捕や監査法人の事実上の解体が行われるなど、財務諸表監査の社会的信頼に大きな影響を与える事象が発生し、信頼性回復のため、監査人の独立性、監査法人の品質管理、監査法人等に対する監督・責任の在り方といった点について見直しが行われました。
以降、監査報告書における意見表明が正しかったかどうかといった点に加えて、意見形成のための適切なプロセスの実施、及びそのための組織体制等が客観的に確保されているかどうかといった点がより重視されることになりました。
今から振り返ると、我々公認会計士にとっては、激動の時代でした。
会社法監査(中規模以下の会社)、学校法人の監査、労働組合の監査など上場会社のように必ずしも監査法人の監査が必要ではない規模だと思われる組織の会計監査人選任担当の方へ!
→柔軟性や費用対効果を重視して、是非、当事務所まで会計監査のお問い合わせをお待ちしております。
公認会計士の仕事内容(会計監査等)と税理士との違い
はじめに
公認会計士と税理士は、それぞれ会計や税務に関する業務を行うため、同じような業務を行っている(混同している)方が多いかもしれません。
しかし、それぞれに独占業務があり、その仕事内容は大きく違っています。
公認会計業務と税理士業務の相違点
税理士と公認会計士は、それぞれに該当の資格を取得していないと行うことができない独占業務があります。
公認会計士の独占業務は、組織の「監査」です。
企業等が作成した財務諸表等に重大な誤りがないかどうか、公認会計士が第三者の立場から監査し、評価します。
会計監査業務は公認会計士か監査法人のみ行うことができる独占業務です。
当初は、公認会計士が大企業も含めてすべての企業等を監査していましたが、大企業になると、業務も複雑になり、また、過去に上場企業で粉飾決算が多発し、社会問題となったことも有り、個人の公認会計士の監査ではなく、組織的にチームを組んで監査を行うことが求められるようになりました。
その結果として、会計監査業務を専門に行う組織を「監査法人」と呼びます。
少なくとも5人以上の公認会計士が所属し、チームを組んで大企業の監査に取り組みます。現在では、上場企業の監査の70%はBig4と呼ばれる大手の4大監査法人が監査を行っています。
税理士の独占業務は、「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」の3つです。
税務に関する相談を受け、クライアント(納税義務者)からの依頼を受けて税務申告書の作成や提出の代行などが主な業務となっています。
税理士が所属している事務所は、「税理士事務所」「会計事務所」と名乗ることが多いです。
公認会計士は税理士登録することもできますが、税理士が公認会計士として登録することはできません。
ですので、公認会計士・税理士として「会計事務所」を名乗る公認会計士もたくさんいます。
公認会計士は税理士の「上位資格」と思われる方もいらっしゃいますが、公認会計士試験は「租税法」の科目として数問が問われるのみです。
そのため大手監査法人を含めて、監査法人で監査業務のみしか経験していない公認会計士の税務の知識は一般の方より少し上といった程度でしょう。
ですので、税理士登録して税理士業務を行う公認会計士は「会計事務所」や「税理士事務所」に所属して、税務に関する実務を何年か経験する人が多いのが現状です。
公認会計士の仕事内容
税理士の仕事内容については、自営業の方や確定申告を経験した方ならある程度わかっているのではないでしょうか。
ここでは、公認会計士の仕事内容について詳しく記述します。(興味のある方は読み進めてください)
【監査】
企業から学校法人、公益法人など幅広い対象について、独立した立場から監査意見を表明し、財務情報の信頼性を担保します。監査業務には、法定監査と法定監査以外の監査があります。
(法定監査)
法令等の規定によって義務付けられているものです。主なものは、次のとおりです。
- 金融商品取引法に基づく監査特定の有価証券発行者等が提出する有価証券報告書等に含まれる財務計算に関する書類(貸借対照表や損益計算書等)には、公認会計士又は監査法人の監査証明を受けなければならないとされています(金融商品取引法第193条の2第1項、同第2項)。
- 会社法に基づく監査大会社及び委員会設置会社は、会計監査人を置くことが義務付けられています(会社法第327条、同第328条)。また、会計監査人を置く旨を定款に定めれば、すべての株式会社は会計監査人を置くことができます。会計監査人の資格は、公認会計士又は監査法人でなければいけません。
- 保険相互会社の監査
- 特定目的会社の監査
- 投資法人の監査
- 投資事業有限責任組合の監査
- 受益証券発行限定責任信託の監査
- 国や地方公共団体から補助金を受けている学校法人の監査
- 寄付行為等の認可申請を行う学校法人の監査
- 信用金庫の監査
- 信用組合の監査
- 労働金庫の監査
- 独立行政法人の監査
- 地方独立行政法人の監査
- 国立大学法人・大学共同利用機関法人の監査
- 公益社団・財団法人の監査
- 一般社団・財団法人の監査
- 消費生活協同組合の監査
- 放送大学学園の監査
- 農業信用基金協会の監査
- 農林中央金庫の監査
- 政党助成法に基づく政党交付金による支出などの報告書の監査
- 社会福祉法人の監査
- 医療法人の監査
など
(任意監査)
- 法定監査以外の会社等の財務諸表の監査(※)
- 特別目的の財務諸表の監査
※法定監査以外の組織のおいても、その組織の財務情報の透明性・信頼性の保証を受けたい組織は、公認会計士の監査をいつでも受けることは可能です。例えば、マンション管理組合など
【税務】
公認会計士は税理士登録をすることにより、税務業務を行うことができます。
税務業務の事例としては、次のようなものがあります(税理士の仕事内容)。
- 税務代理(申告、不服申立て、税務官庁との交渉など)
- 各種税務書類の作成
- 企業再編に伴う税務処理及び財務調査
- グループ法人税制、連結納税制度などの相談・助言
- 移転価格税制、タックスヘイブン税制についての相談・助言
- 海外現地法人、合弁会社設立を含む国際税務支援
- その他税務相談・助言
【コンサルティング】
独占業務ではありませんが、監査業務を行って得た経験を活かして、経営戦略の立案から組織再編、システムコンサルティングなど、経営全般にわたる相談・助言を行うことも可能です。
コンサルティング業務の事例としては、次のようなものがあります。
- 相談業務(会社の経営戦略、長期経営計画を通じたトップ・マネジメント・コンサルティング)
- 実行支援業務(情報システム・生産管理システム等の開発と導入)
- 組織再編などに関する相談・助言・財務デューデリジェンス
- IFRSに関するコンサルティングや業務支援
- 企業再生計画の策定・検証
- 統合報告の実施支援
- 環境・CSR情報の相談・助言
- 株価、知的財産等の評価
- Trustサービス(WebTrust、SysTrustの原則及び基準に基づく検証・助言)
- システム監査、システムリスク監査(システム及び内部統制の信頼性・安全性・効率性等の評価・検証)
- システムコンサルティング(情報システムの開発・保守・導入・運用・リスク管理等に関するコンサルティング)
- 不正や誤謬を防止するための管理システム(内部統制組織)の立案・相談・助言
- 資金管理、在庫管理、固定資産管理などの管理会計の立案・相談・助言
- コンプライアンス成熟度評価
- コーポレート・ガバナンスの支援
【組織内会計士】
公認会計士は多くの一般企業等でも活躍しています。
- 経理業務(財務諸表の作成、M&A、国際税務、連結納税など)
- 財務業務(財務方針・財務戦略の策定、経営分析結果の経営計画への反映など)
- IR業務(経営情報の管理・分析・発信など)
- プロジェクト業務(内部統制の構築、IFRSの導入など)
おわりに
以上、公認会計士仕事内容と税理士の違いについてお分かりになりましたでしょうか。上記の通り、公認会計士の仕事内容は、経営者・経理・財務部門を主に対象として仕事をしており、その他の営業職や技術職の方と多く接する仕事ではありません。そのため、公認会計士の仕事内容につて社会一般的に認知度が低いといえるのではないでしょうか。
因みに監査業務の中に緑色で記載した監査がなにか?不思議に思われた方はおられるでしょうか?当事務所が得意とする監査業務です!学校法人の監査、労総組合の監査も順次受け付けております。
監査法人ではできない、柔軟な対応と費用対効果の高い監査を行っていますので、監査法人からの変更等や新規の会計監査人のご検討を考えておられる中堅・小規模な組織の方からのお問い合わせをお待ちしております!
公認会計士の会計監査制度の歴史を振り返る①
はじめに
日本の公認会計士制度は 2018 年に 70 周年を迎えた。この 70 年間で公認会計士制度は 大きな変化を遂げていますが、その背景には企業における不適切な会計も制度変更に影響を 与えているものと考えられます。 コラムでは過去の粉飾事案を紐解き俯瞰するとともに、その時代ごとに行われた制度改正を振り返ります。個別の粉飾事案と制度改正をすべて関連付けることは困難でありますが、70 年間の変遷 をたどることは、己の資格業務の社会的期待役割を知るうえで有用と考えています。
今回の①では、昭和の時代(1945 年~1988 年)を、次回の②では平成の前半(1989 年~2007 年)を、その後の③では平成の後半である 2008 年以降の粉飾事案、制度改正を取り上げるよていです。
公認会計士監査制度の誕生と成長
この時代は、日本の戦後復興から高度成長期、バブル景気を経て、日本の経済活動が拡大した時代です。そして、日本の経済活動の拡大に呼応して、公認会計士監査制度が整備され、成長を遂げた時代でもあります。この時代の会計・監査制度の主な出来事、経済事象等 は以下の通りです。
・1948年(昭和23年)・・・公認会計士法成立、証券取引法の全面改正
・1049年(昭和24年)・・・日本公認会計士協会成立、「企業会計原則・財務諸表準則」発表
・1950年(昭和25年)・・・上場会社に対する公認会計士監査の義務付け、「監査基準・準則」設定、財務諸表規則の制定
・1951年(昭和26年)・・・公認会計士監査制度の実施
・1963年(昭和38年)・・・計算書類規則制定
・1966年(昭和41年)・・・監査法人制度の創設
・1974年(昭和49年)・・・商法特例法による監査の導入(現会社法監査:会計監査人制度の導入
・1977年(昭和52年)・・・連結財務諸表の制度化、中間財務諸表の制度化
・1982年(昭和57年)・・・商法改正(監査制度強化)、計算書類規則改正
・1988年(昭和63年)・・・計算書類規則改正
日本の公認会計士監査制度は、「公認会計士法」が成立したことに端を発っしています。この法律 が成立する前までは「計理士法」に基づいて計理士が、検査証明業務も行っていましたが、1948 年の証券取引法の全面改正及び 1949 年の証券取引所開設に当たり、証券市場における財務諸表の信頼性確保を担う新たな役割として、1948 年成立の「公認会計士法」のもと、公認会計士が生まれました。 法制度、制度設計が進む一方で、1950 年には「監査基準」及び「監査実施準則」が制定 され、翌 1951 年に初の証券取引法に基づく会計監査(証券取引法監査)が行われました。その後、1957 年 1 月 1 日より開始される事業年度より、証券取引法監査が義務化され、正規の監査として実施されることとなりました。 正規の監査が開始されたころ、日本経済は神武景気( 1954 年~ 1957 年)、岩戸景気( 1958 年~1961 年)、そしてオリンピック景気(1962 年~1964 年)と長い拡大局面と短い後退局 面を繰り返し、段階的な成長を遂げました。しかし、このオリンピック景気後の後退局面において、「日本特殊鋼」、「サンウエーブ工業」、「富士車輛」、「山陽特殊製鋼」など多くの上場企業の倒産や破綻が相次ぎました 。この倒産等を通じてその内情が白日の下に晒された結果、これらの会社の中には、単純な業績不振の会社ではなく、粉飾を繰り返していた会社が多くあったことが判明しました。これは、この景気後退局面に露呈はしたものの、それ以前の好況とされていた局面から繰り返し実施されていたものだったのです。
山陽特殊製鋼事案
粉飾の手口としては、架空売上や各種費用の圧縮、在庫の水増しなどで、詳細な手口の内容までは不明ではあるものの、監査基準で求められる手続を実施すれば見つけられた不正も多くあったものと推察されています。本当に監査人は不正に気づいていなかったのでしょうか。 ここに、この事件が粉飾決算史上 1、2 を争う著名な事件として扱われる理由があります。 同社の監査人たる公認会計士は、大蔵省、東京証券取引所に呼ばれた際に次のように答えたとされています。 「7 年前から粉飾を知っていた。しかし、荻野社長から『明るみに出せば会社が困難な事態に直面するので書かないでほしい』といわれたので押さえた」 つまり、監査人は粉飾の事実に気づいていたが、監査報告書上なんら表現することも無く、適正意見を表明し続けたのです。 これを受け、同社の関与公認会計士については、1958 年 3 月から 1964 年 9 月を虚偽証明期間として、1965 年 9 月 4 日付けで、公認会計士法上に基づく懲戒処分として、登録抹消の処分が行われています。この公認会計士は上述の粉飾の黙認に加え、監査補助者を使用していなかったにもかかわらず、使用していたものとして監査概要書に虚偽の記載を行っていた とのことであり、単独の監査で独立性が保持しにくい状況にあったものと推察されます。
事案を受けての制度変更
当該事案を含む、この公認会計士監査成長期の各種粉飾事案を経て、監査の実効性に大きな疑念が生じたのは言うまでもありません。この監査の実効性への疑念を払拭するために、大蔵省は 1965 年 8 月に「当面の審査方針」を決定し、重点審査を実施しました。その結果、多くの粉飾決算会社が発見され、公認会計士監査制度の制度としての脆弱性が露見することとなりました。そこで、公認会計士法の改正等各種措置が講じられることとなったのです。代表的な制度変更として以下の4つがあります。
・監査法人制度の導入
・監査基準等の改訂
・商法監査(現会社法監査)の導入
・日本公認会計士協会の特殊法人化
組織的監査の発展
山陽特殊製鋼の事案をきっかけとして、( 1)監査法人制度の導入、(2) 監査基準の改訂、( 3)商法監査の導入、( 4)日本公認会計士協会の特殊法人化と大きく公 認会計士監査制度が変わっていきました。 昭和期においては、もう一つ公認会計士制度に大きな影響を与える事件が起きました。それ が不二サッシ事件です。不二サッシ事件は、山陽特殊製鋼の事案と同様に公認会計士が粉飾決算を知りながら、監査報告書にサインをしたとされています。特に問題視されていたのが、公認会計士1人で、監査を実施し、監査報告書にサインをしたことです。 この事件を通じて、1978年9月に大蔵省は、「公認会計士監査における組織的監査の徹底と独立性の保持について」を日本公認会計士協会に通達しています。上記を受けて、日本公認会計士協会は、1979年6月に「組織的監査要綱」を公表しています。このことにより公認会計士監査は、組織的監査へと大きく舵を切ることになったのです。
監査制度の改訂
不二サッシの事案で、公認会計士が故意による虚偽証明を行った要因として単独監査を行っていたことが指摘されました。前述した山陽特殊製鋼の事案をきっかけとして監査法人制度が導入されました。しかし、不二サッシの事案を通じて、個人の公認会計士による単独監査の実施が、監査人の独立性を害した要因として、改めて浮き彫りになり、これに応じて1978年9月に大蔵省は、「公認会計士監査における組織的監査の徹底と独立性の保持について」を日本公認会計士協会に通達しています。また、東京、大阪等の証券取引所は、1978 年9月に「財務内容の適正開示について」を公表し、単独監査をやめ、少なくとも2人以上 の監査責任者を置くように監査体制を整えるように要請しました。 上記を受けて、日本公認会計士協会は、1979年6月に「組織的監査要綱」を公表しています。 「組織的監査要綱」の狙いは、「監査に適する組織を整えるとともに、その運用の妙を発揮し、もって監査の目的を完全に遂行するにある。」とされ、「監査は、一定の方針のもとに指揮命令の系統と職務権限の分担とを明らかにした組織によって遂行されなければならない」としています。 上記は、①指揮命令系統と②職務分担の明確化を定めたものであるとされています。
上記の①指揮命令系統と②職務分担の明確化により、単に複数人による独立性の担保というだけでなく、「組織的監査要綱」の狙いとする監査に適する組織を整え、運用の妙を発揮し、もって監査の目的を完全に遂行することを目指しています。 そして、その後公認会計士監査は、監査法人による監査が中心となっていくこととなります。
おわりに
近年では監査を組織として行うことが一般的になっていますが、監査法人制度導入の狙いは下記の3つであるといわれています。 「①ある程度の規模の人的組織によって、監査を担うことで、組織的監査が可能になる ②ある程度の人数の人間が出資をすることで、財務的基盤を強化し、独立性を高める。 ③組織として監査することで、相互牽制が可能になり、かつ、品質管理システムの維持・運用が可能となる」。監査法人は、この後、合併を繰り返し大規模化して、企業のグローバル化に対応し、IT化に対処していくことになります。しかし、大規模化していく中でガバナンスの問題等が生じることとなるのです。組織的監査が有効に機能するためには、常にその組織の課題を把握し、 改善していく不断の取組みが必要とされると考えられます。
以上は大規模な被監査会社の監査には監査法人の監査が適しているということであり、中・小規模被監査会社の場合は、当事務所のように個人事務所による組織的監査(ベテラン監査人のチームによる監査)が適していると自負しています。
税理士事務所を例に働き方改革!コロナ禍でテレワークが必須?!
はじめに
新型コロナウイルスの感染が広がる中、2020年8月、日本感染症学会が「今、日本は第2波のまっただ中にいる」との見解を示したことが報じられました。さらに感染症シーズンの冬場には、第3波が来るとの見通しもあります。
新型コロナウイルスの感染拡大は、税理士事務所の働き方にも大きな影響を与えています。今後を見据え、テレワークや在宅勤務を導入しようと考えている税理士等士業の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、そのような方へ向けて「コロナ禍でどう対応すべき?税理士事務所の働き方改革!」と題し、お役立ち情報をお届けします。
オンライン会議の上座は?話題になった議論とその顛末
コロナ禍の今、離れた場所でもコミュニケーションがとれるオンライン会議は身近になりつつあります。そうした動きに比例して、オンライン会議にまつわる議論も活発になりました。
たとえば「オンライン会議では何分前に集合したらいいのか?」「服装はどこまで気を付ければいいのか?」など、マナーに関する議論もその一つです。その中でも最近話題を集めたのは、「オンライン会議の上座はどこか?」という議論だそうです。
この議論、当初は新時代到来の足をひっぱる古いマナー意識だとネットニュースで話題になっていたようです。ところが2020年9月、オンライン会議システムの「Zoom」が上座機能を追加したことで状況が一変しました。会議の度に上座の設定で時間をとられていたユーザーのストレスが解消されるとともに、使い勝手がよさそうな機能だとの評判が広まっています。
働き方改革の切り札としてのテレワーク
2017年から、総務省、厚生労働省、経済産業省など複数の中央省庁の連携によって行われている「テレワーク・デイズ」という取り組み。この中でテレワークは働き方改革の切り札として位置づけられています。では、政府の取り組みとして具体的にどのようなことが発表されているのでしょうか。
「テレワーク・デイズ」の発表資料によると、近年のテレワークには2つの変化が見られます。
変化の一つは、制度のあり方です。従来のテレワークは福利厚生的な使われ方であったのに対し、最近では経営戦略として認識されるようになりました。すなわちテレワークは、あればいい制度から、なくてはならない制度へと変化しているのです。
もう一つの変化は、テレワーク制度の対象者です。従来は育児・介護者など一部に限定されていましたが、最近では全社員が対象となりました。テレワーク制度の対象者について、もはや垣根がなくなっています。
また、「テレワーク・デイズ」の発表資料では、テレワークにより生産性が1.6倍向上した事例なども取り上げられています。テレワークは、新型コロナウイルス感染症対策としてはもちろんのこと、生産性向上の面からも導入効果が期待できるのです。
このように働き方改革の切り札として、テレワークは日本全国で大きく推進されています。
コロナ禍で働き方改革が急進!税理士がおさえるべき3つのポイント
では令和の時代、税理士事務所がテレワークや在宅勤務を取り入れる際には、どういった目線が必要なのでしょうか。おさえるべき3つのポイントを順にご紹介いたします。
1:テレワークは、withコロナとafterコロナで考える
withコロナ(ウィズコロナ)とは、ワクチンがまだない中で、3密回避などの手段で感染拡大を防ぐ、現在の状況です。それに対しafterコロナ(アフターコロナ)とは、ワクチンなどである程度コロナ禍をコントロールできるようになった状況を指します。
テレワークを考える際は、withコロナとafterコロナの2つの視点が必要です。つまり、目下の対策と中長期の対策、その両方を検討する必要があります。
たとえば、オンライン会議の導入を検討する際は、顧問先と会うことが制限されているwithコロナの視点から、どのように運用していくかを検討することになるでしょう。加えて、afterコロナの視点から、オンライン会議の運用開始が、長期的に見て顧問先との面会にどのような影響をもたらすかも同時に検討しなければなりません。
2:在宅勤務は、顧問先、事務所、スタッフの三方良しで考える
在宅勤務を導入するかどうか、導入するとしたらどの程度とするか、税理士事務所だけでなく、おそらく日本中の企業が考えていることでしょう。考える際のポイントは、顧問先、事務所、スタッフの三方良しです。
例えば顧問先からオンライン会議ではなく、実際会いたいと要望があったとします。お客様の要望ですから応えないわけにはいきません。しかし同時に、事務所としてのリスクやスタッフの健康面を思うと、戸惑いを感じることもあるのではないでしょうか。
このような場合、顧問先との取引関係を見直し、ときには断る勇気が求められるのかもしれません。コロナ禍においては、お客様ファーストを掲げていればよかった従来と異なり、顧問先、事務所、スタッフの三方良しで考えなければならないのです。
3:基本業務は真っ先にクラウド化を図る
オンライン会議のみならず、インターネットを使って情報をやり取りできるクラウドサービスは、コロナ禍により急速に普及しています。そしてこのようなクラウド化の動きは、働き方改革にも大きな影響を与えています。コロナ禍とクラウド化、この2点は働き方改革が急進している要因となっているのです。
税理士事務所のテレワークや在宅勤務を考えるとき、最大のポイントとなるのは、会計や給与、税務などの基本業務のクラウド化を図るということではないでしょうか。
従来、税理士事務所においては事務所にサーバーを設置するオンプレミスの会計専用機しか選択肢がありませんでした。しかし近年では、安心して利用できるクラウドサービスが登場してきています。その中には、会計、給与、税務など税理士事務所で必要となる業務一式がオールインワンで揃ったクラウドサービスもあります。
顧問先に会うことが制限されている今、オンライン会議のシステムのようなクラウドサービスの活用を検討することも急務ではあります。しかしそれと同時に、税理士事務所においてテレワークや在宅勤務を導入するのであれば、基本業務である会計、給与、税務のクラウド化もそれ以上に大切なのです。
税理士事務所におけるテレワークの実態調査からわかること
実際のところ、テレワークや在宅勤務について税理士事務所ではどのような取り組みがなされているのでしょうか。
いい税理士が集まるメディア「Lanchor(ランカー)」の運営元であるMikatus株式会社では、2020年5~6月にかけて全国の税理士事務所のみなさん177名(うち税理士146名)を対象に、新型コロナウイルス感染拡大の影響とテレワーク導入に関する実態調査を実施しました。
【調査結果のポイント】
●影響を感じている税理士事務所は69%
●過半の税理士事務所がテレワークを導入済み
●85%の税理士事務所は課題があってもテレワークを運用できていると回答
この調査では、過半の税理士事務所がテレワークを導入済みであることが明らかになりました。日本税理士会連合会(日税連)が4月上旬、テレワーク導入を推進する方向性を示したことも、少なからず影響しているものと思われます。
「テレワークを始めるために、どんなクラウドサービスを導入したのか?」「運用している税理士事務所ではどんな課題を抱えているのか?」
おわりに
多くの税理士事務所にとって、働き方改革とは未知なる領域へのチャレンジともいえるのではないでしょうか。大変な状況ではありますが、苦難に負けず知恵を合わせ工夫してがんばっていきましょう。