公益法人の監査:公益法人特有の基準としての財務三基準の概要について
はじめに
忘年会シーズンを前に、大阪市と札幌市の繁華街は午後9時まで、東京では午後10時までの時短営業の要請が出ました。これらの地域の飲食店の経営は厳しいですね。
一方で、日経平均株価は今日も上昇を続けています。株価はワクチン開発で実体経済の先を見越して景気が上昇するとみている投資家が多いようです。今、苦しい飲食店の経営者はなんとかこの時期を乗り越えられれば良いのですが。
さて、本題の公益法人特有の基準としての財務三基準の概要の説明をします。
財務三基準の概要
1.財務三基準は、公益法人制度に特有の制度である認定法第5条各号の公益認定基準において、公益社団・財団法人の財務に関連する基準として規定されているものであり、具体的には、次のとおりです。
① 収支相償
公益目的事業に係る収入が適正な費用を超えないと見込まれること(認定法第5条第6号)⇒公益法人は、その公益目的事業を行うに当たり、当該公益目的事業の実施に要する適正な費用を償う額を超える収入を得てはならない(認定法第14条)
② 公益目的事業比率
公益目的事業比率が50%以上となると見込まれること(認定法第5条第8号)
⇒公益法人は、毎事業年度における公益目的事業比率が50%以上となるように公益目的事業を行わなければならない(認定法第15条)。
③ 遊休財産額保有制度
遊休財産額が一年間の公益目的事業費を超えないと見込まれること(認定法第5条第6号第9号、第16条)
2.上記1.①については、公益目的事業が、不特定多数の者の利益の増進に寄与すべきものであり、これに充てるべき財源を最大限に活用して無対価又は低廉な対価を設定し、受益の範囲を可能な限り拡大することが求められていることから、その確保を目的とするものである。
なお、求められているのは単年度ではなく、中・長期的な視点での収支相償です。
3.上記1.②については、公益法人が、公益目的事業を行うことを主たる目的とし、「公益法人」の名の下、国民からの寄附等を受けつつ事業活動を行うものであることから、公益法人が行う全ての活動の規模に占める公益目的事業の規模の割合について、少なくともその半分を占めていることを求めるものです。
4.上記1.③については、寄附等により取得・形成された財産について、速やかに公益目的事業の拡充等に使用されるべきであり、公益目的事業の実施とは何ら無関係に法人内部に過大に蓄積することは適当ではないことから、設けられた規定です。
5.公益社団・財団法人は、公益法人会計の基準に従って作成する財務諸表の数値を基に、毎年度、定期提出書類を作成し、提出する義務がありますが、当該書類の数値に基づき算定された財務三基準の遵守状況を行政庁に報告することとなるため、公益法人会計の基準と財務三基準は密接に関連することとなります。
財務三基準に対する監査上の対応
1.監査人は、公益社団・財団法人が属する制度によって適用される法令、公益社団・財団法人が当該法令をどのように遵守しているかを全般的に理解しなければならない(監基報250第12項(※)、実務指針第34号第24項)。
2.公益社団・財団法人が作成する財務諸表に重要な影響を及ぼすことがあるその他の法令への抵触の識別に資するため、監査人は、財務三基準の趣旨を踏まえ、理事者及び適切な場合には監事等への質問を行う必要がある。また、規制当局とのやり取りを記録した文書がある場合には、それを閲覧する(監基報250第6項(2)及び第14項(1)(2)(※)、実務指針第34号第24項)
3.また、財務三基準への抵触が疑われる場合には、当該事項について理事者及び必要に応じて監事等と協議する必要がある(監基報250第19項(※)、実務指針第34号第24項)。
おわりに
要するに、財務三基準に抵触していないかどうかは監査上、重要な手続きであり、抵触している可能性があれば、その違法性の重要性を考慮して、その違法行為が財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があると監査人が判断した場合、監査人は、法律専門家に助言を求める必要があるかを検討しなければならない(監基報250「財務諸表監査における法令の検討」19)。ということになります。
公益法人の経理に係る方は、財務三基準に抵触していないかどうか常に注意を払ってください。
横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く会計監査に特化した監査事務所です。
上場会社を監査している監査法人と比較し、費用面を抑えて実質的な監査を行うことを基本方針にしています。効率性の高い会計監査を目指しています。
監査のご依頼・ご相談は、問い合わせフォーム(24時間年中無休)、電話にてのご連絡は平日10時~17時、にてご連絡ください。
3月決算の会社等の監査は日程等についてご相談ください。3月決算を除く会社等の監査はまだ日程的にお受けできますので大歓迎です。
医療法人の監査:簡便的な会計処理を採用している場合の留意点
はじめに
11月25日となり、今年も残り1か月余りとなっています。新型コロナウイルス感染症の第3派により、大阪市と札幌市がGo To トラベルの対象から外れることが決まりました。大阪市に事務所がある当事務所でも影響がありそうです。接待を伴う飲食店は午後9時までの営業になるとのこと。今年の忘年会はどうしようか?まだ決めていません。更に追い打ちをかける事態が当事務所では起こっています。当事務所が入居しているテナントビルが空調設備の入替を急きょ行っており、暖房が12月7日(月)まで使えないのです(泣)。先週は暖かくて問題なかったのですが来週からは冷え込みがきつくなりそうで、セーターを着ながら仕事をするか、自宅でできる作業は在宅ワークに切り替えようか気温をみながら考えたいと思っています。
それでは、本題に入ります。
簡便的な会計処理を採用している場合の監査上の留意点
医療法人は簡便的な会計処理を採用できる旨は、前回述べましたが、簡便的な会計処理を採用している場合の監査上の留意点は以下の通りです。
1.医療法人が簡便的な会計処理を採用しているかどうかは、計算書類の利用者が計算書類を理解する基礎として重要な項目であると考えられる(実務指針第39号第19項)。
2.このため、医療法人が簡便的な会計処理を採用している場合、計算書類の重要な会計方針等において当該簡便的な会計処理方法が明瞭に注記されていなければならず、注記が不十分な場合には、監査人は適切な指導を行う必要があることに留意しなければならない。また、理事者確認書においても当該簡便的な会計処理を採用している旨の記載を求めることを検討する必要がある(実務指針第39号第19項)。
3.さらに、計算書類の利用者に特に注意を喚起しておく必要があると認められる場合には、監査人は監査報告書に「強調事項」区分を設け、簡便的な会計処理が採用されている旨を記載する必要があるかを検討することとなる(実務指針第39号第19項)。
4.なお、医療法人会計基準において容認されている簡便的な取扱いを採用せず、原則法のみによって計算書類が作成された場合であっても、医療法人会計基準という財務報告の枠組み自体が準拠性の枠組みとして取り扱われることから、適正表示の枠組みとして取り扱うことはできないことに留意する(実務指針第39号第20項)。
おわりに
簡便的な会計処理を採用→注記→監査報告書に「強調事項」の区分を設けてその旨記載するか検討→どちらにしても準拠性の枠組みとして取り扱われるということです。
適正表示の枠組みか、準拠性の枠組みか、その区分にどれほど意味があるのかについて医療法人の計算書類を利用する方にはそれほど興味がないのではないでしょうか。
恐らく、その区分の違いに関心があるのは、監査報告書にサインをする公認会計士くらいかもしれません。準拠性の枠組みであれば、適正表示の枠組みと比べて監査責任者の責任の度合いが低いと言えます。
横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く会計監査に特化した監査事務所です。
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医療法人の会計監査:準拠性の枠組みについて
はじめに
本日もこの話題でニュースサイトがもちきりです。新型コロナウイルス感染症の第3派について、連日、全国の感染者数が過去最高の人数を更新しています。Go To トラベル、Go TO イートは今のところ継続の方向です。Go To を継続しながらマスクを着けたままの静かな会食をと菅総理他、専門家らが推奨していますが、マスクを着けたままの会食のやり方には不謹慎かもしれませんが笑ってしまいます。本当に現実にそんなことをする国民がいるのでしょうか。
それでは、本題に入ります。通常の会社法等、公認会計士の会計監査では監査意見については計算書類等が適正(適法)に表示されているかどうかについて意見を述べます。これを適正表示の枠組みといいます。これに対して医療法人の計算書類に対する公認会計士等の監査については、準拠性の枠組みが適用されます。
この理由について考えて説明したいと思います。
医療法人の会計基準が準拠性の枠組みとして取り扱われる理由
1.医療法人会計基準及びその運用指針においては、公益法人、社会福祉法人等において適用されている会計の基準とは異なり、以下のような簡便的な会計処理の採用が容認されています(実務指針第39号第13項
① リース取引開始日が、前々会計年度末日の負債総額が200億円未満である会計年度である、所有権移転外ファイナンス・リース取引について、賃貸借処理を行うことができること(医療法人運用 指針9)。
② 前々会計年度末の負債総額が200億円未満の医療法人においては、法人(昭和40年法律第34号)における貸倒引当金の繰入限度相当額が取立不能見込額を明らかに下回っている場合を除き、その繰入限度額相当額を貸倒引当金に計上することができること(医療法人運用指針12)。
③ 退職給付引当金の計上は、「退職給付に関する会計基準」に基づいて行うものであるが、前々会計年度末日の負債総額が200億円未満の医療法人については、簡便法を適用することができること (医療法人運用指針12、医療法人Q&A Q11)。
2.上記1.の簡便的な会計処理が採用された場合、本来の原則的な方法を採用した場合と比較して、場合によっては計算書類に重要な影響を与え、原則的な方法を採用した場合との差異の金額が計算書類の利用者に誤解を与える程度に生じる可能性も考えられます(実務指針第39 号第14項
3.このため、医療法人会計基準は、適正表示の枠組みとして取り扱うことは適切でなく、準拠性の枠組みとして取り扱うことが妥当と考えられています(実務指針第39号第15項
おわりに
上記のように、医療法人会計基準が企業会計の会計基準のように原則的な会計基準ではなく、簡便的な会計基準を容認していることから監査意見も適正(適法)意見ではなく、慰労法人会計基準に準拠して作成されているという準拠性意見となるのです。ご理解いただけましたでしょうか。
私も2020年3月期決算監査において、医療法人の監査を行いましたが、監査の実施時期が5月ということもあり、現場には監査に行けず、完全リモートにて実施しました。慣れない、突然のリモート監査であった事からかなりの混乱がありましたがなんとか終了しました。
やはり、監査においてある程度の日数は現場の空気感を感じながら質問等の手続きを実施し、その回答を得る作業は必須であると考えています。今の新型コロナウイルス感染症第3派がいつおさまるのかはわかりませんが、来年の5月には全国民がワクチンを接種して、監査現場に行って監査をできることを祈っています。
横田公認会計士事務所は、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査など上場会社を除く会計監査に特化した監査事務所です。
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監査のご依頼・ご相談は、問い合わせフォーム(24時間年中無休)、電話にてのご連絡は平日10時~17時、にてご連絡ください。
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公認会計士監査における「監査役等とのコミュニケーション」の改正の概要
はじめに
毎日新型コロナウイルス感染症のニュースが話題となっています。本日11月19日の東京での陽性者数は、連日の1日当たりの最高人数を更新し、500名を超えました。このままいくと4週間後には1,050人となるようです。マスクの着用、消毒、会食時のできるだけのマスクの着用が叫ばれています。私の実家は和歌山県の南紀の方面ですが、昨日母親より年末年始の帰省は止めるようにといわれてしまいました(^^;。
高校生の娘は、おばあちゃんと伯母(私の姉)とは、1年近く会っておらず、買ってもらうものリストを作っていましたが、年末年始もお預けとなると知って、かなり落ち込んでいます(/_;)。
さて、そろそろ本題に入りたいと思います。
日本公認会計士協会から2020年8月20日付けで「監基報260「監査役等との
コミュニケーション」の改正について」が公表されたましたが、その概要について簡略に記載したいと思います。というのも、監査役等への伝達事項についての記述ですが、その伝達事項は公認会計士協会のレビューに内容や金融庁の検査結果について伝達するものです。
横田公認会計士事務所は、上場会社監査登録事務所の登録を3年前から止めていますので当事務所の会計監査では必要がありません。伝達する内容がないわけですから当該手続きも必要なく、その点日数も抑えることができ監査報酬にも反映できることになります。
概要
1.本改正は、2020年6月5日付けで改正された品質管理レビュー基準等(2020年7月1日から適用)の内容を反映させることを目的としたものです。
2.監査事務所の品質管理のシステムの外部のレビュー(日本公認会計士協会)又は検査(金融庁)の結果については、監査契約の新規締結又は更新に際して、直近の状況に基づき伝達し、監査期間中にレビュー若しくは検査の結果を受領した場合には、個々の状況に応じて適宜伝達することが適切であるとされています(監基報260「監査役等とのコミュニケーション」第A31項)。
3.本改正は、上記2.のうち、日本公認会計士協会の品質管理レビューに関して、次の品質管理レビュー基準等の改正内容を反映するものです。
・品質管理レビュー報告書において、結論の種類(「限定事項のない結論」、「限定事項付き結論」及び「否定的結論」)が廃止され、監査事務所の品質管理のシステムの整備及び運用の状況について「極めて重要な不備事項」又は「重要な不備事項」の有無に関するレビューの実施結果が記載されることになったこと
・従来のフォローアップ・レビューが廃止され、通常レビューを実施した結果、「極めて重要な不備事項」又は「重要な不備事項」のある実施結果となった場合は、原則として、翌年度に通常レビュー又は改善状況の確認を実施して必要な指導を行うこととされたこと
4.改正内容は、2020年7月1日以降新たに開始される品質管理レビューの結果の伝達から適用することとされている。
おわりに
上記のように、上場会社を監査している監査事務所(公認会計士事務所または監査法人)は日本公認会計士協会の通常レビューを最低限3年に一度(大手監査法人及び一部の準大手監査法人は毎年)、その結果、「極めて重要な不備事項」又は「重要な不備事項」があれば翌年度もレビューを受けなければならないということです。
公認会計士協会の通常レビューの日数は監査事務所の規模にもよりますが、横田公認会計士事務所の場合、3年前まで受けておりましたので、個人事務所の場合で通常1週間、監査法人の場合は2週間からほぼ1か月レビューを受ける場合もあります。
このレビューに係る経費(実施した監査調書の内容についてレビューアーからの質問があれば回答しなければならず、意見の相違があれば追加の説明等が必要となり相当な労力が必要でありその期間、レビューアーへの対応者は通常の監査業務ができません)は、その監査事務所の経費として全体のクライアント(被監査会社)の報酬に上乗せされることとなります。
この点からも非上場の会社法監査等の場合は、上場会社監査登録事務所より、横田公認会計士事務所のようにレビューを受けない事務所の方が監査報酬を抑えることができる原因にもなります。
効率的な監査をご希望の、非上場の会社法監査、医療法人の会計監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査は横田公認会計士事務所までお問い合わせください。
問い合わせフォーム(24時間年中無休)、電話にてのご連絡は平日10時~17時、連絡をいただければ迅速に対応致します。
持続化給付金 不正受給の調査の状況と給付金の課税関係~横田公認会計士税理士事務所
はじめに
新型コロナウイルスの第三派が来ています。今日の東京のコロナ感染者数は493人と1日の感染者としては過去最高を更新しました。一方で持続化給付金の不正受給が社会問題となっています。
同給付金の申請受付がスタートした当初は、税務の専門家である税理士に、不正受給に関する相談が持ちかけられるケースも相当あったと聞いています。また、不正受給に関与した税理士もいるようです。同じ税理士として許しがたい行為ですね。
中小企業庁では、今年6月に持続化給付金の不正受給対応の専門チームを発足し、7月から本格的に調査を行っているようです。同給付金の不正受給による逮捕者が増加していることを受けて、自主返還を行う者も多くなっているようです。今年11月上旬の状況では、同給付金の返還件数は752件、返還金額は7億9,400万円、返還申出件数(変換完了分を除く)は7,355件にのぼっているようです。
持続化給付金のコールセンターには多くの情報が提供されている
持続化給付金は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、売り上げが大幅に減少した中小企業や個人事業者、フリーランスなどが給付対象となります。
申請時には、確定申告書や売上台帳等を提出する必要があるところ、これらの申請書類が原因で不正受給が発覚するケースも少なくないようです。
ただし、最も多いのは、いわゆる「タレコミ」が発端となるケースです。
持続化給付金事業コールセンター等には、不正受給を行っていると疑われる者に関する通報・情報提供が多く寄せられているようです。
ここでいう「不正受給」とは、中小企業庁が調査を行い、内部で不正受給認定を行った場合を指します。持続化給付金を受給したものの、自主的に返還したのであれば、不正受給には該当しないとのことです。そのため、不正受給については、罰則として、氏名等の公表や「持続化給付金と延滞金の合計額にその2割相当額を加えた金額」の支払い義務が生じます。ただし、自主返還した者については、これら2割加算等の罰則は化されません。
新型コロナによる売上減少でなければ調査で指摘される
持続化給付金の不正受給について、中小企業庁(以下中企庁)は、今年6月に不正受給対応の専門チームを発足させ、7月から本格的に調査を行っています。
同チームの具体的な人数等は明らかにされていませんが、現在も粛々と調査を行っているとのことです。
また、「持続化給付金給付規程」の解釈では、同チームに限らず、外部に調査を委託することも可能なようです。今後も、関係省庁等と情報共有を行って、調査に注力するようです。
この点、実務家の間で疑問に上がっていることが、同給付金の受給要件の一つである「新型コロナの影響で売上が減少していること」について、中企庁がどこまで詳細に審査・調査しているのかということです。
受給要件の一つであるため、本来、審査の段階で確認が行われるべきですが、中企庁によれば、基本的に、審査の段階で、新型コロナの影響で売上が減少したか否かの確認は行われていないとのことです。
ただし、受給要件の一つである以上、同給付金の支給後に疑義が生じた場合には、調査を行っており、罰則の対象になる可能性もあるとのことです。
持続化給付金の課税関係について
持続化給付金の課税関係については、国税庁が「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱に関するFAQ」で明らかにされています。
持続化給付金は課税対象であるため、同給付金を受けた個人は、令和2年分の確定申告で、総収入金額に含めて申告することが基本となります。
申告義務があるにもかかわらず、無申告となっている場合には、国税当局からの指摘があることになります。
事業所得者・・・・・事業所得
給与所得者・・・・・一時所得
雑所得者・・・・・・雑所得
持続化給付金の所得区分は上記となります。
おわりに
持続化給付金の調査は、中企庁が行っていますが、世間一般の方は調査といえば税務調査の印象が強いようで、当事務所でも「税務調査が入るのですが、持続化給付金ですか?」という質問を受けることがあります。
持続化給付金は経済産業省の中所企業庁が管轄であるため、税務署が調査を行うことはありません。
中企庁の専門チームなどが、申請書類や外部からの情報提供に基づいて調査を行っています。
ただし、持続化給付金の受給後に決算を迎えて税務申告を行った法人などでは、持続化給付金が収入(益金)に計上されているかの調査は行われることになります。その点、持続化給付金の受給があったかどうかについて、国税庁(税務署)と中企庁での情報共有が行われるかどうかについては今のところ不明ですが、税務調査の調査員も持続化給付金の計上の有無については目を光らせるでしょうから、何らかの情報共有は行われると考えて間違いないのではないでしょうか。
横田公認会計士事務所は、主として非上場の会社法監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査、医療法人の会計監査等の依頼も受け付けておりますので、問い合わせフォーム(24時間年中無休)、電話にてのご連絡は平日10時~17時まで受け付けております。
横田公認会計士事務所は横田税理士事務所でもありますので、税務に関するご相談・ご依頼も受け付けております。気軽にご依頼・ご連絡ください。
2021年3月期末の企業決算・監査等への対応(金融庁などの動向)
はじめに
新型コロナウイルスのワクチンの開発ニュースがありました。米のモデルナ社がワクチンを開発し94.5%の有効性を確認したとのこと。
このニュースを受けてアメリカの株式市場ダウ平均は史上最高値を更新、日本の日経平均も一時26,000円を超えました。株式市場だけを見ればコロナ前の水準を上回っています。一方、現状の経済指標は上向きではありますが、コロナ前には届いていない状況です。株式市場は先を見越して動きますので今後の動向はどうなることでしょう。
ワクチンの開発が進んでも2021年3月期の決算や監査にはまだコロナの影響があると考えられます。金融庁・企業会計審議会が11月6日、「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会」の活動や「企業会計基準委員会(ASBJ)の活動」等についての報告を行っています。
日本公認会計士協会はリモート留意事項等公表へ
事務局は「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査への対応に係る連絡協議会」の活動の成果と、3月期決算会社の動向について報告を行いました。7月に公表した「骨子」に記載の通り、「感染拡大のピーク時を含め、クラスターの発生等の大きな混乱はなく、企業決算・監査業務等を進めることができたことを評価」し、「今後、基準日変更を検討する企業があれば、後押しすることや、企業決算・監査等に係るデジタル化の推進など、実務上の中長期的な課題への対応は、引き続き関係者と議論」することなどを報告しています。
日本公認会計士協会(JICPA)は、新型コロナの拡大を契機として監査現場がリモートでの環境を前提とした実務に変化していることから、今後の予定としてリモートワークでの環境下における決算・監査上の対応を検討しており、リモート棚卸立会における留意事項や、電子媒体または電子経路による残高確認に関する監査上の留意事項を随時公表していく予定を報告しています。
残高確認は電子での対応が可能かと思われますが、棚卸立会をリモートで行えるのかについては少々疑問です。
事務局は、連絡協議会については状況の変化があれば差異会を考えるとし、JICPAより報告のあった決算・監査に関するリモート環境のアップデートについて関係者と連絡を取り合いながら共有していきたいとしています。
2021年3月期決算を考える上では海外の12月決算(海外は12月決算が主流)の対応が参考になるとして、動向を注視したいとしています。
急場の対応を迫られた今年とは異なり、翌年についてはある程度先を見通した準備が可能である旨の見解もあります。
株主総会の分散化といった引き続きの課題についても質問が出たようですが、「会社法上の障害はない」ため、総会開催をずらす等の対応を検討する会社があれば、関係省庁や関係団体と状況を共有しながら、引き続き後押しをしていきたい考えが示されています。
追加情報開示が見積開示基準の布石になる
企業会計基準委員会(ASBJ)の活動については、委員長より報告がありました。ASBJは今年4月以降、連絡協議会における要請を踏まえて新型コロナの収束時期や見積りに用いた家庭の記載を追加情報として求める「議事概要」を公表しました。その結果、3月期の有価証券報告書においては7割程度の企業が開示していた旨が報告されました。
委員会の委員からは当該追加情報開示を求めたASBJの取り組みについて、2021年3月期から早期適用が可能となる「会計上の見積りの開示に関する会計基準」の布石として有効に機能したと評価する意見があったようです。
会計基準の開発については収益認識の検針日基準や、リース会計の検討状況などが報告されています。
おわりに
以上最近の企業会計・監査の状況について、主として上場会社を対象とした動向を見てきましたが、当事務所の対象とする非上場の会社法監査やその他の監査の決算・監査においても、上記の議論の動向によって影響を受けますので、最新の会計・監査の状況については注意が必要です。
早期のワクチン接種によるコロナ後の状況が訪れることを期待しながら、コロナ禍の決算・監査への対応は怠らないように気を付けたいと考えています。
横田公認会計士事務所は、主として非上場の会社法監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査、医療法人の会計監査等の依頼も受け付けておりますので、問い合わせフォーム(24時間年中無休)、電話にてのご連絡は平日10時~17時まで受け付けておりますので、気軽にご依頼・ご連絡ください。
監査基準の改定に関する意見書(公開草案)の概要について~公認会計士の会見監査
はじめに
11月中旬になりましたが、新型コロナウイルスの第三派が確実に来ているようです。大阪や北海道では週末の1日の感染者が、過去最多を更新する日が続いています。北海道ではGo To トラベルから除外するかや札幌市への移動を自粛するような動きも出てきています。大阪では、Go To イートの対象利用人数を4人以内にするよう吉村知事が西村経済再生担当大臣に要望しました。
一方で、株価は高値を更新しています。16日の日経平均終値は25,906.93円と全営業日比プラス521.06円です。前週末の米国株高を受け、取引開始前発表の7-9月期GDPが前期比年率21.4%増と市場予想平均を上回る急回復を示したことも支援材料となったようです。
そろそろ本題に入りたいと思います。今回の監査基準改定作業は、監査報告書や監査のやり方に関するものであり、監査を受ける企業等にはそれほど影響がありませんが我々、会計監査を実施する公認会計士にとって影響があるものです。
それ故、興味の無い方は項目だけ読んでいただき、横田公認会計士事務所に会計監査をご依頼くださる方のご連絡をお待ちしております。
公開草案の概要
企業会計審議会から2020年3月23日付で「監査基準の改訂について(公開
草案)」(以下「監査基準改訂案」という。)が公表されました。
1.本監査基準改訂案では、①「その他の記載内容」及び②リスク・アプローチの強化について、提案が成されています。
2.①の「その他の記載内容」(=監査した財務諸表を含む開示書類のうち当該財務諸表と監査報告書とを除いた部分の記載内容)に関しては、経営者による財務諸表以外の情報の開示の充実が進み、今後も更なる充実が期待される中、当該情報に対する監査人の役割の明確化や監査報告書における情報提供の充実を図ることの必要性が高まったことを受けて、下記3.~5.の提案が成されています。
3.監査人は、「その他の記載内容」を通読し、「その他の記載内容」と財務諸表又は監査人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうかについて検討する(従来の取扱いの明確化)。
4.上記3.の検討の結果、重要な相違に気付いた場合や、財務諸表や監査の過程で得た知識に関連しない「その他の記載内容」についての重要な誤りに気付いた場合には、経営者や監査役等と協議を行うなど、追加の手続を実施することが求められます。追加の手続を実施しても当該重要な誤りが解消されない場合には、監査報告書にその旨及びその内容を記載するなどの適切な対応が求められます。
5.監査報告書上は、従来と同様、「その他の記載内容」に対して意見を表明するものではないが、監査意見とは明確に区別された情報の提供として「その他記載内容」の区分を設け、次の事項を記載することが求められます。
・「その他の記載内容」の範囲
・「その他の記載内容」に対する経営者及び監査役等の責任
・「その他の記載内容」に対して監査人は意見を表明するものではない旨
・「その他の記載内容」に対する監査人の責任
・「その他の記載内容」について監査人が報告すべき事項の有無、報告すべき事項がある場合はその内容
6.②のリスク・アプローチの強化に関しては、近年の公認会計士・監査審査会の検査結果における指摘事項への対応や、国際的な監査基準との整合性を確保するため、現行基準におけるリスク・アプローチの概念や考え方を踏襲しつつ、下記7.~9.の提案が成されています。
7.財務諸表項目レベルにおいては、固有リスクと統制リスクを分けて評価する。固有リスクについては、重要な虚偽の表示がもたらされる要因を勘案し、虚偽の表示が生じる可能性と当該虚偽の表示が生じた場合の影響を組み合わせて評価する。
8.特別な検討を必要とするリスクについては、固有リスクに着目し、監査人が、虚偽の表示が生じる可能性と当該虚偽の表示が生じた場合の影響の双方を考慮して、固有リスクが最も高い領域に存在すると評価したリスクと定義する。
9.会計上の見積りについては、リスクに対応する監査手続として、原則として、経営者が採用した見積りの方法の評価並びにそれに用いられた仮定及びデータを評価する手続が必要である(従来の取扱いの明確化)。
10.実施時期等は、以下とすることが提案されています。
・①は、2022年3月決算に係る財務諸表の監査から実施する(ただし、2021年3月決算に係る財務諸表の監査からの実施も可)。
・②は、2023年3月決算に係る財務諸表の監査から実施する(ただし、それ以前の決算に係る財務諸表の監査からの実施も可)
おわりに
以上のように早くても、2022年3月期(3月決算会社は来期)からの強制適用であるため、今後詳細な報告書等や記載例などの実務上の指針が公表されるということになるでしょう。
今後、新型コロナウイルスの第三派が早急に収まり、忘年会シーズンに飲食店の時短営業の要請などが出ないことを祈りつつ、手洗い、マスクの着用、消毒液の使用などで当面新型コロナウイルスの感染状況にアンテナを張って、3密を避けつつ過ごしていきましょう。
横田公認会計士事務所は、主として非上場の会社法監査、学校法人の会計監査、労働組合の会計監査、医療法人の会計監査等の依頼も受け付けておりますので、問い合わせフォーム(24時間年中無休)、電話にてのご連絡は平日10時~17時、急ぎの方で直接メールにて連絡されたい方はメールアドレス(直前のブログに記載)までご依頼・ご連絡ください。
会計上の見積りの開示に関する会計基準の概要(株式会社の会計監査)
はじめに
連日、新型コロナウイルス感染者が増加傾向にあり第3派の到来が確実視されてきています。大阪では昨日11月11日は過去最高の感染者を記録しました。これから本格的な冬を迎えるシーズンですが心配ですね。早くワクチンが摂取できることを期待します。
2020 年3月 31 日に企業会計基準委員会より企業会計基準第 31 号「会計上 の見積りの開示に関する会計基準」(以下「見積開示会計基準」という。)が 公表されました。
それでは、今週の最後のブログは会計上の見積りの開示に関する会計基準の概要です。当該会計基準は、上場会社のみならず会社法の会社にも適用されるようです。
見積会計基準の概要
1.国際会計基準(IAS)第1号「財務諸表の表示」(以下「IAS第1号」 という。)第125項において開示が求められている「見積りの不確実性 の発生要因」について、財務諸表利用者にとって有用性が高い情報として、日本基準においても注記情報として開示を求めることが検討されたものです(見積開示会計基準第13項)。
2.見積開示会計基準では、次のように開示目的を設け、開示目的に基づき項目を識別し注記を行うこと、すなわち、具体的な項目及びその 注記内容は開示目的に照らして判断することとされています(見積開示 会計基準第4項~第9項、第16項、第18項、第29項、第30項)。
<開示目的>
当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスク(有利となる場合及び不利となる場合の双方が含まれる。以下同じ。)がある項目における会計上の見積りの内容について、財務諸表利用者の理解に資する情報を開示すること
<項目の識別>
当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目を識別する。
(留意点)
・通常、当年度の財務諸表に計上した資産及び負債である。
・翌年度の財務諸表に与える影響を検討するに当たっては、影響の金額的大きさ及びその発生可能性を総合的に勘案して判断する。
・直近の市場価格により時価評価する資産及び負債の市場価格の変動は、項目を識別する際に考慮しない。
<注記事項>
(項目名)
・会計上の見積りの内容を表す項目名とする。
・会計上の見積りの開示は独立の注記項目とし、識別した項目が複数ある場合には、それらの項目名は単一の注記として記載する。
(項目名に加えて注記する事項)
識別した項目それぞれにつき次の事項を注記する。
① 当年度の財務諸表に計上した金額
② 会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報(※1)(※2)
<例>
・当年度の財務諸表に計上した金額の算出方法
・当年度の財務諸表に計上した金額の算出に用いた主要な仮定
・翌年度の財務諸表に与える影響
※具体的な内容や記載方法(定量的情報若しくは定性的情報又はこれらの組み合わせ)については、開示目的に照らして判断する。
※上記②の情報は、単に会計基準等における取扱いを記載するのではなく、企業の置かれている状況が理解できるような情報とする必要がある。
※会計上の見積りの開示以外の注記に含めて財務諸表に記載している場合には、会計上の見積りに関する注記を記載するに当たり、当該他の注記事項を参照することにより当該事項の記載に代えることができる。
適用時期
2021年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用する(公表日以後終了する連結会計年度及び事業年度における年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表からの適用も可)(見積開示会計基準第10項)。
適用初年度の取扱
適用初年度において、本会計基準の適用は表示方法の変更として取り扱い、上記2.の比較情報(適用初年度の連結財務諸表及び個別財務諸表に併せて表示される前連結会計年度における連結財務諸表に関する注記及び前事業年度における個別財務諸表に関する注記)は記載しないことができる(見積開示会計基準第11項)。
非上場の会社法監査対象会社への適用
法務省からは、見積開示会計基準の公表を受けて、2020年8 月12日に「会社計算規則の一部を改正する省令」が公布され、注記表の項目に「会計上の見積りに関する注記」が新設されている。
会社法第444条第3項に規定する株式会社(大会社であって金商法第24条第1項の規定に基づき有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない会社)以外の株式会社について、省略規定は設けられていない。
おわりに
以上のように見積会計基準は有価証券報告書を提出しなければならない会社以外の会社法監査対象会社(非上場会社法監査対象会社)について、省略できないこととなっています。
経理担当の方は、見積会計基準について3月決算会社の場合は来期より上記の注記が必要となりますのでご勉強ください。
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学校法人の会計監査:高等教育の修学支援制度の概要と会計処理
はじめに
大阪では、新型コロナウイルスの感染者が第三派を迎えていると吉村知事から発表がありました。全国的にも増加傾向にあります。昨日の大阪の感染者は226人です。8月6日以来の200人越だそうです。一方でファイザー社のワクチン開発が話題になり、株価は連日高値を更新しているのとは対照的ですね。コロナの第三派は、これからの忘年会シーズンや年末年始の移動を考えている方は気になっていると思います。
コロナにより家計に影響が出ている方も多いでしょうが、今回の高等教育の修学支援制度はコロナ対策ではなく、昨年の消費税増税による財源で実現した制度です。
1.概要
本制度は、我が国における急速な少子化の進行及び大学等における修学の重要性に鑑み、総合的な少子化対策を推進する一環として、真に支援が必要な低所得者世帯の者に対し、社会で自立し、活躍することができる豊かな人間性を備えた創造的な人材を育成するために必要な質の高い教育を実施する大学等における修学に係る経済的負担の軽減を図るため、次の支援措置が講じられたものです。
2.支援対象となる学校種等は次の通りです
支援対象となる学校種 | 大学・短期大学・高等専門学校・専門学校 |
支援内容 |
① 授業料等減免制度の創設 ② 給付型奨学金の支給の拡充 |
支援対象となる学生 |
住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯の学生 (2020年度の在学生(既入学者も含む。)から対 象) |
財源 |
少子化に対処するための施策として、消費税率引 上げによる財源を活用 国負担分は社会保障関係費として内閣府に予算計 上、文科省で執行 |
3.上記2.①の授業料等減免に関しては、各大学等が、次の上限額まで
授業料等の減免を実施するとされている。減免に要する費用は公費か
ら支出される。
国公立 | 私立 | |||
入学金 | 授業料 | 入学金 | 授業料 | |
大学 | 約28万円 | 約54万円 | 約26万円 | 約70万円 |
短期大学 | 約17万円 | 約39万円 | 約25万円 | 約62万円 |
高等専門学校 | 約8万円 | 約23万円 | 約13万円 | 約70万円 |
専門学校 | 約7万円 | 約17万円 | 約16万円 | 約59万円 |
会計処理
1.2019年11月25日付で文科省より以下のように示されています。
・国から私立大学等を設置する学校法人に対する「授業料等減免に要する費用に充てるための資金の交付」(注)は、「(大科目)補助金(収入)」、「(小科目)国庫補助金(収入)」に計上し、減免額を「(大科目)教育研究経費(支出)」、「(小科目)奨学費(支出)」に計上していただくものと考えます。
(注)国においては、「授業料等減免費交付金」(仮称)を予定(※)
・なお、都道府県から私立専門学校を設置する学校法人に対する「授業料等減免に要する費用に充てるための資金の交付」は、「(大科目)補助金(収入)」、「(小科目)地方公共団体補助金(収入)」に計上し、減免額を「(大科目)教育研究経費(支出)」、「(小科目)奨学費(支出)」に計上していただくものと考えますが、都道府県において、別途指導・助言がある場合には、それに従い計上してください。
(※)国が資金を交付する際に使用する費用の正式名称については、私立の大学・短大・高専に対する減免に要する費用に充てるための資金は「授業料等減免費交付金」、私立の専門学校に対する減免に要する費用に充てるための資金は「授業料等減免費負担金」に決定している。
2.なお、計算書類の作成に当たっては、学校法人会計基準第2条第3号において「財政及び経営の状況を正確に判断することができるように必要な会計事実を明りょうに表示すること。」が求められ、また、小科目に関しては、学校法人会計基準別表第一 資金収支計算書記載項目(第10条関係)(注)1において、「適当な科目を追加し、又は細分することができる。」とされています。
3.上記2.を踏まえると、上記1.の「(小科目)奨学費(支出)」については、他の奨学費(支出)とは区分して、高等教育の修学支援新制度に基づく減免額であることが分かるような小科目名を付して計上することも考えられます。
おわりに
高等教育の修学支援制度には、給付型奨学金もあります。また支援対象者の要件もありますので詳細は以下文科省のホームページを参照ください。
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最近の学校法人会計・公認会計士の会計監査の動向
はじめに
11月第2週の火曜日、コロナの感染状況については、北海道が200名を超える感染者が毎日のように発表され、GoToトラベルの対象から外れるという議論まで出てきています。一方でアメリカの次期大統領がほぼバイデン氏に決まり、アメリカが国際協調へ転換する方向性や新型コロナのワクチンの開発をファイザー社が進めているという前向きなニュースで日米の株式市場は大幅に上昇しています。日経平均株価は一時2万5千円を超え、バブル後の高値を更新しています。
このような中、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
今回は、昨年の監査基準の改定を踏まえて公認会計士の監査報告書の文例が大幅に変更となっておりますので、どのように変更になっているのかを中心に説明したいと思います。
監査報告書の新様式の文例
2018 年7月監査基準の改訂及び2019 年9月監査基準の改訂に伴い、学校法人等の計算書類に対する監査報告書の文例はどう変更されたのでしょうか。
■2018年7月5日付け及び2019年9月3日付けで企業会計審議会から 「監査基準の改訂に関する意見書」が公表され、関連する監査基準委員会報告書が改正されたことを踏まえ、日本公認会計士協会(学校法人委員会)は、次の表のとおり実務指針等の改正を実施又は予定しています。
(実務指針等の名称) (改正状況)
・学校法人委員会実務指針第36号 2019/9/17
「私立学校振興助成法 第14条第3項の 2020/4/9
規定に基づく監査の取扱い」
(以下 「実務指針第36号」という。)
・学校法人委員会研究報告第32号 2019/9/17
「施設型給付費を受ける幼稚園のみを
設置する学校法人等の監査上の留意事項及び
監査報告書の文例」(以下「研究報告第32号」 という。)
学校法人委員会報告第43号 今後改正予定
「有価証券発行学校法人監査における
監査報告書及び理事者確認書について」
■監査報告書について、次のとおり記載順序の変更や区分の新設等が行われています。
【監査報告書の記載順序と新区分】
独立監査人の監査報告書
利用者にとって関心の高い情報から記載
監査意見 ●監査意見を監査報告書の冒頭に記載
監査意見の根拠 ●監査意見の根拠区分の新設
・我が国において一般に公正妥当と
継続法人の前提に関する重要な不確実性 認められる監査の基準に準拠して
(該当する場合) 監査を実施した旨
・我が国における職業倫理に関する
追記情報(強調事項又はその他の事項) 規程に従って、会社から独立して
(該当事項がある場合) おり、またその他の倫理上の責任を
果たしている旨
計算書類に対する理事者及び監事の責任 ・意見表明の基礎となる十分かつ適切
な監査証拠を入手した旨
計算書類の監査における監査人の責任 ●継続法人の前提に関する重要な不確実
性区分の新設
■「計算書類に対する理事者の責任」の区分が、「計算書類に対する理事者及び監事の責任」の区分に変更され、理事者の責任に、継続法人の前提に関する評価責任が追加されています。監事は、財務報告プロセスの整備及び運用における理事の業務執行の状況を監視する責任を有している旨、記載するとされています。
■計算書類の監査における監査人の責任の区分において、記載内容の拡充が図られています。
・重要性の概念の説明
・監査の過程を通じて職業的専門家としての判断を行い、職業的懐疑心を保持すること
・不正又は誤謬による財務諸表の重要な虚偽表示リスクを識別・評価し、対応 した監査手続を立案・実施すること
・継続法人の前提の評価
・計算書類の表示及び注記事項の検討
・監事に対して、監査計画や監査上の重要な発見事項等の報告を行うこと
■継続法人の前提について、学校法人会計基準では明文の規定はないが、本改正では以下の点が明確化されています。これに関しては別途研究報告を公表しています。
・継続法人の前提に関する事項を記載する必要があると学校法人が判断した場合には、学校法人会計基準第34条第8項の規定に従い、 「その他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項」として注記する。
・学校法人が計算書類に注記を記載している場合には、監査人は、監査報告書の「監査意見の根拠」の次に「継続法人の前提に関する重 要な不確実性」という見出しを付した区分を設け、継続法人に関する事項を記載する。
■監査上の主要な検討事項(KAM)は、法令によって求められていない。 ただし、任意で報告することを契約条件によって合意して記載することは可能とされています。
■なお、2019年9月監査基準の改訂により、除外事項を付した限定付適正意見を表明する場合に、限定付適正意見とした理由についても記載が必要であることが明確化されたことを受けて、除外事項付意見の文例の見直し等がなされたほか、一部の記載の見直しが行われています。
■本改正は、2020年3月31日をもって終了する会計年度に係る監査から適用とされています。
おわりに
当該改正は、前期の監査報告書(今年5月又は6月発行)から行われています。今までのような監査報告書が一枚から2枚へと記載事項が増えています。
学校法人で監査報告書を受領した方々はすでに受領していると思われますが、要は利用者にとって関心の高い情報から記載するようになり、冒頭の監査意見を見れば監査結果が一目瞭然となるようになっています。
学校法人を含め、会計監査人の変更を考えておられる法人等の担当者の方、または新規に会計監査人をお探しの方は、横田公認会計士事務所までご依頼・ご相談ください。
問い合わせフォーム(24時間年中無休)、電話にてのご連絡は平日10時~17時、直接メールにても相談を受け付けております。
メールアドレスはホームページの10月12日のお知らせにて記載しておりますのでご連絡ください。