学校法人会計における「継続企業の前提」

東証②

はじめに

沖縄を除き、まん延防止等重点措置へ移行した都道府県が多くなりました。酒類の提供は7時まで、二人一組まで入店可能などまだまだ従来の生活様式からは程遠いという実感を持っている方がほとんどでしょう。

今週から職域でのワクチン接種が本格化し、1日100万人のワクチン接種が現実味を帯びてきました。ワクチン接種率の高まりに期待しましょう。

ところで、私個人でも今日にも接種券が届く予定です。副作用の心配はありますが、すぐにワクチン接種の予約をし、7月末までには2回目接種を目指しています。

学校法人会計における「継続企業の前提」について

学校法人においても、企業等と同様に学校法人が予測し得る将来にわたって存続し、教育事業を継続することを前提に計算書類が作成されており、いわゆる「継続企業の前提」は学校法人会計においても前提とされています。

継続法人の前提に関連する理事者の責任

学校法人会計基準においては、継続法人の前提に関する注記は義務付けられておらず、理事者に対して継続法人の前提に関する一定の評価を行うことを要求する明示的な規定は存在しません。しかしながら、学校法人会計基準第34 条8項では、「その他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項」の注記が求められており、近年の学校法人を取り巻く環境を鑑みれば、学校法人は継続法人の前提に関する事項を記載する必要があるか否かを検討する必要があり(実務指針第36 号第23 項参照)、理事者は計算書類の作成において継続法人の前提を評価することが求められると考えられます(監基報570 第4項参照)。

継続法人を前提として計算書類を作成することが適切でない場合

次のような一定の事実が存在する場合

・再生手続開始決定の取消し、再生計画の不認可など

・破産手続開始の申立て

・法令の規定による整理手続によらない関係者の協議等による事業継続の中止に関する決定

・私立学校法第62 条第1項による所轄庁の解散命令(同法第50 条第1項第6号)

「継続法人の前提」に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況

<財務指標関係>

・教育活動収入の著しい減少

・継続的なマイナスの教育活動資金収支差額の計上

・重要なマイナスの教育活動資金収支差額の計上

・継続的なマイナスの経常収支差額の計上

・重要なマイナスの経常収支差額の計上

・翌年度繰越支払資金の継続的な減少

・翌年度繰越支払資金の重要な減少

<財務活動関係>

・事業に関連する債務の返済の困難性

・借入金の返済条項の不履行又は履行の困難性

・新たな資金調達の困難性

・債務免除の要請

・支払不能すなわち資金ショートに陥るリスクがあること。

・債務超過又は債務超過に陥るリスクがあること。

<事業活動関係>

・重要な設置校、学部等の募集停止

・重大な災害による損害の発生

・継続的な学生生徒数の著しい減少

・重要な補助金の減額又は不交付の決定

・事業活動に不可欠な重要な権利の失効

・事業活動に不可欠な人材の流出

・事業活動に不可欠な重要な資産の毀損、喪失又は処分

・法令又は所轄庁の規制に基づく重要な事業の制約

<その他>

・巨額な損害賠償金又はデリバティブ取引の解約に伴う損失の負担の可能性

・不祥事などによるブランド・イメージの著しい悪化

おわりに

研究報告第34号では貸借対照表日において、単独で、又は複合して継続法人の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況として、前項のような項目が考えられるとしています。ただし、次の点に留意が必要です。

・単独の事象又は状況により、破産の原因となる事実が生じるおそれや、事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができなくなることも考えられ、より慎重に検討を行うことが適切

・通常これらの項目は、複数の事象又は状況が密接に関連して発生又は発現することが多いと考えられる。このため、理事者は継続法人の前提の評価の過程において、上記に例示するような項目が継続法人の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に該当するかどうかについて、総合的に判断することが適切

・各項目は例示であり、その学校法人の規模等によっては金額的重要性や質的重要性を加味して判断すべき事項もある。また、学校法人の特殊性等を考慮し、これらの項目と異なる財務指標を用いることが適切な場合や、これらの項目とは異なる事象又は状況が継続法人の前提に重要な疑義を生じさせるような場合もある

・例示のうちの一つ以上が存在する場合に、必ずしも重要な不確実性が存在していることを意味するわけではないことに留意する。

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